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102.焼き芋のフリして

 図書館からの帰り道。

 希世子が商店街を歩いていると、道の先から焼き芋の匂いが漂ってきた。


「良い匂い」


 食欲を刺激される。


「いつもの八百屋さんね」


 この時期限定で八百屋が焼き芋を店頭販売しているのだ。


「一本買って帰りましょう」


 ということで、焼き芋を買うべく八百屋へ向かうと、


「佐藤君!」


 倫行がいた。


「いらっしゃいませ! 焼き芋いかがですか!」


 店先で焼き芋を売っていた。


「アルバイトかしら? こんなところで会えるなんてついてるわ」


 希世子は、幸運に顔を綻ばせ、


「佐藤君からお芋を買いましょう」


 財布を握りしめ、


「……佐藤君から?」


 はたと立ち止まった。


「佐藤君から焼き芋を一本買う……」


 希世子が考える。



 〜〜〜



「佐藤君、こんにちは」


「やあ、三上。焼き芋買いに来たのか?」


「ええ。一本くださる?」


「まいど。(三上って焼き芋一本食べるのか……)」


 食べるのか……


 食べるのか……


 食べるのか……(リフレイン)



 〜〜〜



「買えない!」


 無性に恥ずかしいことのように思えた。


「仕方がないわね。佐藤君が休憩するまで待ちましょう」



 ……一時間経過……二時間経過……三時間経過……



「佐藤君の働き者!」


 全然休まなかった。


「でもがんばる佐藤君は素敵!」


 惚れ直した。

 その時、店の中から中年の女性が出てきた。


「倫行君、ちょっと休憩しなさい」


「はい、それじゃあ」


 倫行が店の奥へと入っていった。


「ようやくね。今のうちに」


 希世子が店の前に移動した。


「こんにちは、焼き芋一本ください」


 中年の男性に声をかける。


「はいよ。倫行ー、お客さんだー」


「(何で呼ぶのよ!)」


「はーい」


 店の奥から倫行が出てきた。


「三上じゃないか」


「まぁ、佐藤君。奇遇ね」


 希世子は、腹をくくって倫行から買うことにした。


「お野菜を買いに来たのだけれど焼き芋が美味しそうだったからついでに買おうと思ったの」


 でも一応、本来の目的ではないフリをした。


「そうなのか。何本欲しいんだ?」


「一本くださいな(ああ〜、『三上って焼き芋一本食べるのか』って思われてるわ〜)」


「三百円な」


「はい(ああ〜、『三百円ちょうど持ってる』とか思われてるわ〜)」


 嘆きが止まない希世子だった。

 でも焼き芋はしっかり買った。

 ちなみに倫行は、まったくそんなこと思ってなかった。

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