100.サンタのフリして
12月25日。
クリスマス。
昼食後、希世子は、倫行の住む地区へ向かっていた。
終業式の日、倫行にぬいぐるみを取ってもらったので、お返しにクリスマスプレゼントを渡すためである。
「喜んでくれるかしら」
楽しみ半分、不安半分な希世子だった。
……
「ここね」
マップを頼りに到着したのは、大きい平屋建て一軒家のような公民館。
倫行の今日の予定は、昨日の「委員長を慰める会」の時にすでに聞いており、ここで自治会のクリスマス会に参加するとのことだった。
中から子供たちの賑やかな声が聞こえてくる。
希世子は、横開きに扉を開けて、
「こんにちは」
と中を覗いた。
広々とした玄関の向こう側、二十畳はある大部屋に二、三十人くらいの子供たちと大人が数人いた。
子供たちは、サンタクロースから順番にプレゼントを受け取っており、そのサンタクロースが、
「え、佐藤君?」
だった。
サンタの赤い服を着て帽子をかぶり、白い髭をつけ、
「プレゼントじゃよ」
喋り方もおじいさんになっていた。
「佐藤君サンタ……いい」
萌えた。
「わーい! ありがとー! やったー!」
倫行サンタからプレゼントを受け取ったちびっ子がお礼を言うと、嬉しさに走り回り、
「あっ、希世子ちゃんだ!」
玄関にいた希世子に気づいた。
「三上?」
素に戻った倫行も気づいた。
「ホントだ!」
「希世子ちゃーん!」
希世子のことを知っているちびっ子が希世子の元へ集まってくる。
「いらっしゃい、希世子ちゃん!」
「姫様もサンタ会いにきたの?」
ちびっ子が希世子に群がる。
「姫様?」
希世子を知らないちびっ子が首を傾げると、
「希世子ちゃんはね、お姫様なんだよー」
と教えた。
希世子が美人なのでそう思っているだけである。
「ほえ〜」
教えられたちびっ子が希世子を見上げた。
「ウフフ」
希世子が微笑む。
「きれ〜……」
ポ〜っとなった。
「姫様、入って入って!」
ちびっ子たちが希世子の手を引っ張って部屋へ引き入れた。
「サンタさん、姫様だよ!」
ちびっ子が希世子を倫行サンタに紹介する。
「やぁ、三上。メリークリスマス」
倫行が迎えると、
「何で名前知ってるの!?」
ちびっ子が驚いた。
「あ、そ、それは……」
倫行が焦る。
「そりゃサンタなんだから、知ってるよ」
「サンタは、みんなの家も知ってるもん」
「サンタすげー」
ちびっ子たちが自分らで勝手に解釈していく。
「そ、そういうことじゃよ」
倫行が合わせた。
「で、希世子ちゃん、今日はどうしたんじゃ?」
倫行がサンタモードで聞いた。
「(希世子ちゃん!? 希世子ちゃんって呼ばれた!? きゃーーーーー!)」
たまらない希世子。
「これを渡そうと思って」
でもすました顔でプレゼントを差し出した。
「これは?」
「この前、ぬいぐるみを取ってくれたでしょう? そのお礼のクリスマスプレゼントよ」
「そんな、いいのに」
「もらってちょうだい。それくらい嬉しかったんだから」
「そうか。うん、ありがとう」
倫行が笑顔で受け取った。
「す、すげ〜……」
そのやり取りを見ていたちびっ子たちが目をまん丸にして驚いていた。
「プレゼントあげるサンタにプレゼントあげた……」
という驚きだった。
「希世子ちゃんって、何者だ?」
「本当にお姫様か?」
「サンタにプレゼントあげるくらいだからそれ以上じゃね?」
「じゃあ……女神様とか?」
「希世子ちゃんは女神様だったんだ……」
ちびっ子たちか勝手に解釈していく。
この日希世子は、神になった。




