10.手伝うフリして
希世子が中庭を歩いていると、腕まくりをしてダンボール箱を運んでいる倫行を見つけた。
「ふ〜」
倫行がダンボール箱を置いて一息入れる。
ずいぶんと重そうだ。
「佐藤君、手伝うわ」
いいところを見せようと、希世子がやってきた。
「せっかくだが、気持ちだけで十分だ。ありがとう」
「遠慮しないで」
希世子が二つあるダンボール箱のうち、一つを持ち上げた。
ズッシリときた。
「こ、これ、な、何が、は、入ってるのかしら?」
「ダンベルだ。一箱三十キロある」
「さ、さんじゅ……」
「俺が運ぶから置いといてくれ」
希世子が考える。
置くべきか置かざるべきか。
「こ、このくらい、だ、大丈夫よ」
持つことにした。
『重くて持てない華奢な少女』をアピールするよりも、『大丈夫なフリをしてがんばる少女』をアピールすることにした。
「そうか? 正直助かるが、本当に大丈夫か?」
「え、ええ。い、行きましょう」
「おう」
二人が歩き出す。
「こんなに重い物を持ってくれるなんて、三上はがんばり屋さんだな」
「(よし!)」
さっそくきた褒め言葉に心の中でガッツポーズした。
しかし、あまりの重さにいつものすまし顔が歪む。
「三上、無理するなよ」
「(優しい言葉もいただきました)え、ええ、あ、ありがとう」
希世子は、無理に作った笑顔を倫行へ向けた。
倫行は、それほど表情を変えることなくダンボール箱を持っている。
「(男の子って、すごいわね)」
箱を持つ倫行の腕に目を向けた。
「(き、筋肉のスジすごい出てるーーー! 血管も浮いててたくましーーーーー!)」
見惚れた。
「フフ、フフフ」
笑みがこぼれた。
「三上、休憩するか?」
「(筋肉カッコイイーーーーー!)ウフ、ウフフフフフ、い、行けるわ」
希世子が目を血走らせて笑う。
「……本当に、無理なら言ってくれな?」
倫行は、ちょっと怖かった。




