その2.
案の定マスターはこう言ってきた「あんたよそ者だね?」「ええそうよ」とミリアはうそぶくが、心臓は早鐘を打ち鳴らしていた、だがマスターはここでミリアの予想しなかった提案をしてくる「なら、この国の情報を買わないか?」これこそミリアが心から欲しかったもの!情報があればなにをしてよくて、なにができないかがすぐ解かる、何より安心感を得られる。
すぐにでも飛びつきたいが待て待てと、自分を落ち着かせる、ミリアはニコリと微笑み財布の中から数枚の金貨を握りだす、カウンターのテーブルにまず一枚金貨を置く、だがマスターの顔に変化はない、更に一枚ずつ金貨を置いていき、六枚目の金貨がテーブルに乗った時、マスターの眉毛がピクリと動く、それを見逃さないミリアが「これはチップ」と七枚目の金貨を置いてニッコリと微笑む、「参ったなー」とマスターは頭を掻くと「よし、先ずはこの国のことだ」と言ってあれこれと話し出す。
この国の内情は、アーシュ国とそれ程大差はない、一つの首都と二つの都市、四つの町にそしてそれらを囲むように存在する複数の村々とが、数本の道でつながっていた。
そして国の兵士は、都市や町の物見の塔から見える範囲と、都市と都市、都市と町、町と町の順位で道を守っていた、道を、である、けっして道の外は守らない、村なんて放置状態だ。
助けが欲しけりゃ納税しろって感じで国を守っている、ひどい話だが、国だってそうしなければならない事情がある、慢性的に兵が足りないのだ、放置したくてしているわけでもない、道の外がどれだけ危険かわかっている、だが、そこに兵を使えば、例えば山にワイバーンが住み着いたとする、それを退治するのにどれほどの兵と兵糧を吐き出さなければならないかを国のトップは考えてしまう。
兵力をかき集めれば、ワイバーンは倒せるだろうだが、それで出てくる死人とけが人はどうすればいい?それに、使った兵糧は戻らない。
そんな時に、隣の国が領土の拡張、言い換えれば侵略を始めたらと考えてしまう、小さい犠牲者を切捨てて国を守る、改めて言うがひどい話だが、そんな中で活躍するのが冒険者だ。
冒険者は戦力としては強いが、兵としては落第者がほとんどだ、少数で、無謀で、宵越しの金はもたない、明日の食費のことは考えないで今のぜいたくな生活を送る、金がなくなれば明日考える、そんな生活破綻者がほとんどだ。
村としてはそんな奴らと、関わりたくない、が、一時的に用心棒にするのには目をつむる、冒険者は強い、何故なら弱い冒険者はすぐ死ぬからだ、おのずと冒険者は強いやつらが集まる。
そしてまた国も冒険者には目をつむる、成功した冒険者が酒場や、カジノや、うかれ宿で使う金は莫大だからだ。
「まあこんなところかな」とマスターは自分にワインを注いで口にする「勉強になったわ、ありがとう」と言ってミリアは部屋を借りようとして「あ!」っという、肝心なところをまだマスターに聞いていない「マスターここの冒険者ギルドってどこにあるの?」
そうミリアは聞くと、キャハハハっと笑い声が聞こえて来た。
その1.の続きです。読めば解りますよね…。その3.にご期待ください。