彼の場合2-2
あの子が変わっていったのはあの日からだった。
乾燥していたけどわりと過ごしやすい気温で、それは秋めく日。
〝やっぱり・・・こうなるのか〟
〝最悪!〟
〝いやだ!!!〟
〝違う・・・違う・・・〟
今までは見ない振りをしてきた、それが出来てた。
それが終わりを迎えた。
あの子ははっきりと言った。
「やり直したい」
そんなことが出来るのはゲームや漫画だけの話だって分かっている、それでも言ってしまうのが人間のさがというものだろうか。
この日からあの子は全てに否定的になった。
「私ってこんなにも嫌いものがあったんだ!面白いな!」
家でも学校でも、嫌いなものがありふれていた。
好きなものより嫌いなものが多すぎた。
それは〝あの子が生きにくかった〟証
否定的になったのと同じ頃、あの子はブログを書き始めた。
閲覧数0のあの子しか読まないブログ。あの子が抱えてる悩みを唯一吐き出せるブログ。
タイトルは『好きなもの嫌いなもの』と、言っても嫌いが圧倒的に多い。
三日に一度くらいのペースで書いていたブログ。
初めのうちは箇条書きで綴られていた嫌いなものも、少ししたら理由もぽつりぽつりと書き始めるようになっていた。
初めて好きなものを書いたのはブログを書き始めてから五回目。
『そういえば本を読むのは好きだな。読んでる間はその世界に入れる。』
続けて
『絶対読まないジャンルはあるけどね。』
昔から変わらない。それが嬉しくもあり悲しくもある。
ブログを初めて十二回目の時も好きなものだった。
『ブログを書くのが好き、ここならなんでも吐き出せるし。でも誰かに読まれる可能性もあるんだよなー・・・他の人が読めないようにする設定あるのか?ブログなんて初めてだから分からない。身バレだけは気を付けよう!』
少し探せば非公開って設定があったのでは?と、思ったけど、あの子はきっと誰かに見つけてほしかったんだ。だからあえて非公開のボタンは探さなかった。