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ホラー・ホラー風味

未来でも、まだ……

作者: まい

夏のホラー2022投稿用。


 あまり怖くないですので、怖さは期待なさらないで下さいね。

――――時は西暦2XXX年。


 人類による科学技術の発展により、電気の事情は数段階上がった。



 …………はずだった。





 いくら科学技術を発展させても、先進技術によって発電量を増やしても、結局その分大きな電力を使う電気機械が後から後から出てくるだけだった。


 つまりもっと遠い未来で、無限の大量な電気エネルギーを生み出せる発電機が出来ようが、人類はその分電気を無限に使うだけで電気事情は何一つ変わらないだろう。


 つまりそう言うことである。





 その結論へ至った賢明なる技術者・研究者達は、一気に方向転換。


「どれだけ大量の電力を産み出しても電力に余裕が生まれないなら、使う側の電力を極端に減らしてしまえ」


 暴論になってしまうが、ある意味逆転の発想である。



 その発想の努力の結果は、出た。


 まだ発展途中の技術だが、人間が放出する生体電流や服が(こす)れて生まれる静電気程度の電力で稼働する電子機器が、開発されるようになった。


 ポケット等の服越しでも体に当てれば、生体電流を受けて動いてくれる、電池やアダプタ等の電源いらずの優れもの。


 今はまだ、従来で言う少数の電池で動く電子機器程度までだが、その内その範囲は大きくなるだろう。



〜〜〜〜〜〜



 ところで。


 その最新技術であるソレを使ったラジオを、愛用している人物がいた。


 そう。 ラジオの概念は生きていた。


 電話と言えば脳内投影の動画付き通話が常識となった世界で。


 あえて相手の顔やアバターを見ず、声や音だけで情報を伝えるのが良いと主張する層が一定数居続けている模様。


 携帯端末のアプリとして使えば十分みたいなモノだが。



 そしてアプリがあれば十分であるはずなのに、ネットを含むラジオを受信する機能と無線イヤホンとの通信機能、ラジオを操作するためのタッチパネル式簡易ディスプレイを備えたシンプルなカード型のラジオ。


 そんなラジオ機器そのものを欲しがる者は、相当に変わり者であるとされる。


 なお当の使用者の性別や容姿については、この話に関係ないので明記しない。




 その物好きは、時間があればラジオを聞いていた。


 ラジオ局の番組、ネットラジオ局の番組、個人配信の番組問わず。


 使い続けて(はや)3年以上。



 それだけ使い続けていると、ラジオに不調が出てきた。


 普通のラジオなら使用しているパーツも構造も単純で、保証期間の1年なんて軽く飛び越え、10年使い続けても使える機種もある。


 なのに早くも怪しくなってきた事に疑問を覚えた。


 が、そのラジオは最新技術の塊。


 むしろ保証期間が過ぎても使えている事に感心や感謝すべきかと思い直し、せめて本格的に壊れるまでは使い倒してやろうと、今までより大切に扱い始めた。



 それからしばらく。


 ラジオに雑音が交じるようになった。


 なにやら「あ……ろ……」「……べ……し…………」「は…………ひ…………」など、何か喋っているような、伝えたがっているような。


 とにかく良く分からない言葉の単語? が交じるのだ。


 だが持ち主はむしろ嬉しそう。


 ラジオ全盛期(むかし)はラジオ番組に他からの電波が飛んできて混線し、謎の会話や音楽が混入する事が多々あったと知っていたから。


 今は電波がしっかりと管理されていて、そんな事態は滅多に起きない。


 なのでラジオで混線するってこんな感覚なのか。


 などと、貴重な体験をしていると楽しんでいたので。





 でもそう暢気(のんき)に構えて居られなくなってきた。


 またしばらく()つ頃には、簡易ディスプレイがおかしくなってきた。


 タッチパネルとして操作する時に、時折反応しなくなったり、それでおかしいなと注視していれば画面が乱れたり。


 酷い時には、胸より(バスト)上の(アップ)人物画像にも見えるナニカがチラッと一瞬だけ見えたり。


 まあとにかく酷くなってきた。


 これ以上壊れぬよう、薄いカード型だから何かの拍子(ひょうし)にパキッと2つに折らぬよう、扱いをより丁寧(ていねい)にしようと心に決めた所有者だった。




 が、やはりもうダメになっているのだろう。


 あれから1週間も経ったが、ラジオが急に止まる様になった。



 今もほら。 何も操作してないのに、ラジオからの音がいきなり聞こえなくなった。


 それで買い替えを決意した所有者は、まるで人間の最期(さいご)看取(みと)るようにポケットからカード型ラジオを取り出し、ディスプレイを――――







 ――――ディスプレイには、謎の人物が映っていた。





 今までに無かった事態(じたい)に慌てかけた所有者だが、何かが起きても事態を認識できるようにと見据(みす)えていた画面が全く動かないので、ひとまずは害が無いだろうと落ち着けた。


 その画面を、更に注意深く観察する。



 人物は日本人離れした彫りが深くて、影の陰影がはっきり出ていてヒゲも汚く見えない、整った顔つきの男性だった。


 そこに映った人物だけでなく、どうやら他にも文字が有った。


 それを読むと「俳優」などと紹介されており、会社名とかも有ったので、恐らくこの人物を説明するページなのだろう。




 それはいい。


 それは別にいいのだ。


 所有者に強い疑問が残った。


 ネットラジオにアクセスして受信する程度の通信機能は有るが、こうやってどこかのホームページにアクセスする機能はこのラジオに無かったはずだ。


 なのになぜ、そこへ繋がったのだろうか?





蛇足



某男性俳優のホームページ


 かなり古い技術のホームページ。


 お陰でページがとても軽く、ポンコツな通信速度でもパッと表示される。


 その結果、このページがすぐに表示出来るってのが一種の指標(ベンチマーク)となっていて、通信速度の目安みたいな謎の認識をされている。



カード型のラジオ


 近未来(2XXX年)の最新ラジオ。


 そんな技術が出回る頃には、あの方は恐らく亡くなられていらっしゃる。


 なのになぜ、あのベンチマーク扱いされるホームページへ繋がったのか。


 亡くなられているのなら芸能事務所の所属俳優紹介からは、消されていても不思議じゃないのに。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、今期は怖く無かった~♪
[良い点] 最初は機能優先で大型化、その後は小型化省力化が工業製品の常ですね。 ブラウン管のテレビを知っている世代なのに、田舎の親せきの家の片づけを手伝ったとき出てきた大物の年代物を見て、懐かしさより…
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