イカレル陵墓のネクロマンサー
最近youtubeで地理とか歴史の雑学を分かりやすく解説してくれるチャンネルに嵌ってて、それ見ながら思いついた。
その日、常ならば静謐を保つシロディア王家の陵墓には、ヒステリックに叫ぶ男の怒号が響いていた。
「王は一体何を考えておられるのだっ!」
病的に白い肌は、あまりの怒りに茹で蛸のように真っ赤に染まり、流れるように美しい銀髪も振り乱しながら叫ぶ。男の名はケイネス。歴代のシロディア王家が眠る陵墓の墓守をしているネクロマンサーだ。
普段は理知的で温厚な青年と称される彼が、ここまで取り乱しているのには理由があった。
それは、先日の現シロディアの王が出したある布告が関係していた。
――冥界の王にして死と安息を司る神ヒルクリースを崇めることを禁ずる
歴代最高と呼び声高い帝王アッティノスは、世界征服を目前にしながら老いさばらう自身の肉体に不安を感じ、国中に不死を為す御業を求めた。
そして、ついでとばかりにアッティノスは、縁起が悪いというだけでヒルクリースを邪神と貶め、禁教令を出したのだ。
代々ヒルクリースを崇めるネクロマンサーの一族であり、自身もまた熱烈なヒルクリース信者であるケイネスは、これに対し激怒し、王を悪しざまに罵った。
もしこの場に王やその従士たちが居れば、すぐさまケイネスの首を刎ねられていたことだろう。だが、幸いにもこの場にはケイネスと霊魂の抜けた大量の死体しかいない。
いや、だからこそケイネスの暴走を止められ者もいなかったのだから、この状況を幸いと言ってしまうのは間違っているのかもしれない。
「もう我慢ならん!数々の謂れなき中傷を受けながらも死者の霊魂を導き安息を与えて下さっている優しき御心のヒルクリース様をあ、あ、あ、悪魔などと……あ、挙句、禁教などとふざけるのも大概にしろぉ!神々も神々だ。だいたい――」
まるで押し寄せる溶岩のようにとどまることにないケイネスの怒りは、やがて彼に一つのとんでもない結論を齎した。
「そうだ、王都に行こう……。そして、王に直談判してヒルクリース様の禁教令を解くように私自ら説得しなくては。……あぁ、もうこの際、王だけでなく愚かな民や神々にもヒルクリース様の偉大をさを知らしめてしまうとするか!うん、我ながら素晴らしい案だ。実に理にかなっている。そうと決まれば、さっそく準備に取り掛からねば」
こうしてシロディアどころか周辺諸国も巻き込み、数百年にも及んで多大な影響を与える事になったケイネスの反乱は起きたのである。
たぶんかなり短くなると思う