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ラストワン~刻印がもたらす神話~  作者: Pー
第一章【我らの守護者たち】
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2. 全面戦争の予兆

「それは刻印(しるし)。ただの人間が(ゆがみ)に対抗できる唯一のものだ」


「………………………これが何かは分かりました。ですがなぜ刻印(しるし)が出たのでしょうか?」


「時雨は確かにすごいんですけど、私はそんなに大した人じゃないですよ? 神楽坂(かぐらざか)さんたちみたいなすごい人じゃないんです」


「何を言っているの? 千花は私よりずっと強いわ」


「やめろやめろ。互いに言い合ってもこっちががむず痒いだけだ」


 彼方(かなた)がこれは永遠に続くと思い、千花と時雨の言葉を強制的に止めた。


刻印(しるし)ができた理由は明確には分かってはいない。だが、(ゆがみ)の前から生還したものが授かるのだとしたら、道理は通る。何せ全ての世界線が総出で研究している最重要事項なのだからな」


「……………………私たちはこれからどうすれば良いのですか?」


「なに。大したことは無い。その刻印(しるし)は我ら人類の護り手(ラスト・ワン)つまり、真の強者か、本人以外には見れない。(ゆがみ)がよってくることも無い。ただ問題が一つあるとすれば………………」


「……? 問題が一つあるとすれば…………?」


「………………………………」


 千花と時雨は言葉の続きが聞きたいのだがアンフェアは口を濁す。


「その刻印(しるし)(ゆがみ)に対抗することが出来る。世界線の守護者でもない一般人がだ。もし刻印(しるし)の力がどういうものかわかるならば、それが(ゆがみ)との泥仕合に劇的な変化をもたらす。これがどういう意味か、わかるよね?」


 と、ギールがアンフェアの言葉の続きを口にした。


「事実、ワタシも刻印(しるし)がどのような力を持っているを知りたい。謙虚なワタシですらそうなんだ。世界線の全責任者は喉から手が欲しいんじゃない? どうなの? アンフェア?」


 ギールの口から出た言葉に千花と時雨はアンフェアがなぜ口を濁したのかが分かった。


 そこに那由多が声をかけた。


「アンフェアよ。もし彼女たちを刻印(しるし)の研究に使うと触れてみよ、その時はこの(オレ)が相手をする」


 たった一言で彼女たちは安堵した。

 この人なら自分たちを守ってくれるそう確信したのだ。


「神楽坂よ。(オレ)がこの小娘どもを研究に使うと思うのなら笑止! この(オレ)がそのような無様を晒すわけがなかろう!! (オレ)の言いたいことは…………刻印(しるし)を狙う組織は生易しいものではない、ということだ。例えば〈アザークラウン世界線〉の外、とかな」






 ________________________








「『アザークラウン』の外………………」


「つまり今外に来てる〈イントロウクル世界線〉のこと…………?」


 千花と時雨が納得する。

 全ての事情を理解した時、これまでとは比べ物にならないほどの轟音が空中庭園(エンジェルガーデン)に響いた。


「不味い! アンフェア! たった今楽園(エデン)内の警戒をしている灰峰(はいみね)千石(せんごく)から連絡が入った!」


 ギールの初めて聞くような切羽の詰まった言葉を紡ぐ


「我が楽園(エデン)内に〈イントロウクル世界線〉の連中が侵犯している!」


「……!? そりゃあやべぇぞ俺らはいいが、こいつらの守りはどうする?」


「ならば今こそ我々騎士の出番だろう!! 敵の殲滅は任せてもらおう!!」


 と、彼方の焦燥に満ちた声の後に前衛騎士であるワールが声をあげた、その時だった。


 ――バキャャャァァァァァァ!!!!!!!!――


 と、玉座の間の大扉が砕かれた。







 _______________________







 砕かれた扉の残骸を足で蹴りながら玉座の間に入ってきたのは約五十人程の人間だった。

 全員が機関銃、戦闘スーツらしきものに身を包み、あろうじて男女がわかるぐらいだ。


 敵の隊長格のような人間が声を発した。


「降参をしろ。さすれば皆殺しですまそう。こちらもただの雑魚にかける時間も銃弾も価値もないからな。それと刻印(しるし)もちは誰だ手を挙げろ」


 千花と時雨が渋々ながらも手を挙げる。

 その後、副隊長らしき敵兵が声をあげる。


「聞け!! 我らは〈イントロウクル世界線〉の刑雄(けいゆう)騎士団。そしてこの御方は騎士団長エング・ディアス様。〈イントロウクル世界線〉の王バラゼン・ディアス様の実の弟君であらせられる!! 抵抗は無駄と知れ!!」


刻印(しるし)持ちは女か……………………。女ども!! 光栄に思え!! 貴様らは今この時より我ら〈刑雄騎士団〉の奴隷となる!!」


 その一言に、千花と時雨は自分たちの末路を想像し諦めかけた。


 だが人類の護り手(ラスト・ワン)の面々は誰一人として、諦めてはいなかった。


「ワール、ジェラール。申し訳ないのぅ、この愚者ども(オレ)に任せてもらってもよいだろうか? どうにも我慢ならんのでな」


 那由多が自ら刑雄騎士団の掃討に志願した。


「神楽坂さん…………! ダメですよ!! この人たち銃を持ってるですよ!!」


「ええ、私たちなら大丈夫です。…………ですから、お願いします。戦わないでください…………!」


 千花と時雨の叫びを聞きそれでも尚、那由多はひこうとしない。


 否、先よりも受け入れようとしない。


「なに。案ずることは無い。奴ら程度圧倒せねば人類の護り手(ラスト・ワン)の恥であろう」


「最後の言葉はそれでいいな? 命知らずが。我ら刑雄騎士団に勝てると思っている時点で貴様に命はない」


 エングの言葉が千花と時雨の胸をさらに締め上げる。


「貴様らこそよいのか? (オレ)が敵とみなした時点で貴様らに明日はないぞ」


 ここに人類の護り手(ラスト・ワン)と〈刑雄騎士団〉の戦闘が始まった。

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