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ラストワン~刻印がもたらす神話~  作者: Pー
第二章 第二部【二大同盟戦線】
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30. 『影の存在』

 〈リングトラヌス世界線〉シルドヴィッセン大教会、地下。


 洞窟が蛇行し、洞窟を一直線に進むと時偶に広い空間に出ることがある。


 一度目の広い空間には血飛沫(ちしぶき)が至る所にあり、尋常でない光景になっている。


 二度目の広い空間には地面が燃え上がった跡や、奇妙な柱が二本立っていた。


 そして、三度目の広い空間には『神殺し』を成した英雄たちが集まっていた。


「……………つまり、貴様は『神殺し』をその目で見て、元主の看病をしていた。と言うことで良いのだな? シャーシス・ディアス」


「えぇ。その通りよ」


「まったく頭の痛くなる話だ。貴様が侵犯の域を出た上で元主の傍に居るなど」


 三度目の広い空間では『女神』ウルズとの死闘(私闘)が元主の『神殺し』と言う形で幕を閉じた。


 そして、元主が左腕から出した謎の黒いモヤが収束した後、倒れたのでシャーシスは己の服(元主に侵犯して純白のドレスに変えてもらった)を破り包帯として、元主の看病を行っていた。


 もちろん、元主はシャーシスの膝枕でぐっすり眠っているが。


 ちょうどその時に同じく『神殺し』の剣聖と『神殺し』千花たちがやってきたのだ。


 そして、状況を瞬時に飲み込んだ剣聖がシャーシスへの詰問を始めたのだ。


「貴女、よくもぬけぬけとミアの前に出れるわね……!」


 剣聖とシャーシス以外にはこの場に時雨とキャンベラの二人が残っている。


 ミリソラシアはこの場の全員の中で唯一回復魔法を使えるので、二度目の広い空間では剣聖の治癒、この空間では元主の治癒を担当した。


 そして、千花たちの心意気でミリソラシアは三度目の広い空間ではなく、二度目の空間と三度目の空間を繋ぐ洞窟で待機している。


「そんなこと言われたって、あの状況じゃあ私に出来ることなんて逃げることしかなかったし」


「貴女……!」


「よせ、時雨。今は責任の是非を説いている場合ではない」


 シャーシスの無責任な発言に時雨が怒りのあまり噛みつきそうになるが、傍にいたキャンベラが時雨を止める。


 キャンベラはミリソラシア本人の口から姉のシャーシスとのいざこざを聞いている。


 危険な実験の対象とされるのが嫌で逃げ出したシャーシスのこと、父親に抵抗していた時に千花たちに出会ったこと、その時にシャーシスが何をしていたかは分からないこと。


 全て聞いた上でキャンベラは今シャーシスに問いかけることを止めた。


愚図(ぐず)騎士の言う通りだ。華彩の気持ちはよく分かるが、今は抑えろ」


「………………はい。お見苦しい所をお見せしました」


 キャンベラと剣聖の二人に言われ、時雨は渋々ながらも納得する。


「それで、これからどうするかが問題だ」


 剣聖からの提案は『神殺し』の団体がどう動くかを決める議題であった。


 剣聖がそう問い掛けるのも、三度目の空間を出て少し洞窟を進むと大きな扉に差し掛かるのだ。


「あの扉を潜り未知なる地を進むか、それともここで回復に専念しつつ人類の護り手(ラスト・ワン)の方々の救援を待つか。どちらかを選ばねばなるまい」


「元はと言えば『影の存在』に地下に落とされたので、一度大教会の方に戻らなければならないわね」


「そんなことがあったのか! 不甲斐ないことにその時私は眠っていたからな…………」


 時雨の言う通り、原因は『影の存在』による妨害工作によって千花たちはシルドヴィッセン大教会の地下へと放り投げられたのだ。


 ならば、地下からの脱出は道理である。


「だが、もし扉の向こうに新手の敵がいるのであれば中々に厳しい戦闘になるだろう」


 剣聖の懸念はそれだけであった。


 扉を潜った先に上に登る手段があるのならばまだしも、『影の存在』がそう簡単に上へと登らせてくれるかどうかは迷う余地もない。


「こちらの戦力は華彩、栖本千百合、愚図騎士、水無月、戦力に入れて良いものか迷うが一応シャーシス・ディアスの五人だ。元主は意識不明。栖本千花は『女神』の攻撃の後遺症が残っている。オレとしても戦闘に制限が出るほどには疲弊している」


 剣聖の分析通り、時雨と千百合、キャンベラ、ミリソラシアは【水の刻印魔法(こくいんまほう)】による回復で何とかなったが、千花は『女神』フレイヤの調教(?)による指の欠如と【黒魔術のセイズ】による擬似陣痛の痛みが少し残っている。、


 擬似陣痛の痛みは緩和されているが、波のように不定期な痛みが襲ってくることもあり、ここまで来るのに千花がその場に(うずくま)り痛みに耐えていたこともある。


 もちろん見るまでもなく元主は意識不明、さらに左腕の欠損。


 剣聖も酷いもので右目の欠如、右手首の損失、右脚の不調、そして大量出血による意識の混濁。


 ミリソラシアの【水の刻印魔法(こくいんまほう)】も大きな欠損については治療することが出来ず、元主と剣聖の怪我は止血でしか補えない。


 万全な状態で戦えるのはたったの五人。

 無理をすれば千花と剣聖も戦えるが、二人とも動けること自体が奇跡のような状況なので極力戦闘は避けたい。


「しかし、無理をしてでも人類の護り手(ラスト・ワン)の方々との合流はしたいな」


 ここでキャンベラが自分の意見を発する。


「えぇ、私もキャンベラに賛成するわ。ここに留まって『影の存在』に居場所を嗅ぎつけられる方が危険だわ」


 キャンベラと時雨は動くことに賛同する。


「オレはどちらでも構わん。斬るのであれば斬るまでだ」


「どっちでもいいって答えが一番迷惑なんだよね」


「…………ならば貴様はどうするのだ?」


 シャーシスと言う予想外の発言元から剣聖の反応が一拍遅れる。


「私は意見を言える立場じゃないもん」


「文句を言うだけ言うとは貴様こそ迷惑極まりないが」


 肩透かしを食らった剣聖はシャーシスを睨みながら、恨み言を吐く。


 と、四人で議論しているところにバタバタッとした音が聞こえる。


「今の音ってなに?」


「音源は栖本たちのいる所からか?」


 剣聖の推測を聞き、時雨たちは二度目の空間へと通じる洞窟を見る。


「みんな〜〜! 逃げて〜〜!」


 すると、黒い翼を広げて空を飛んで来た千百合に、千百合に抱えられたミリソラシア、千百合に同じく純白の翼を広げた千花が飛んで来た。


「……!? 何をやっているのだアイツらは!」


 剣聖の叫びも至極真っ当で、千花たちは大量の魔獣(まじゅう)を引き連れて来たのだ。


 その数、約三百。


 魔獣は星霊に強く、(ゆがみ)に弱い世界線の生物である。


「とりあえず全員走れ! ここに固まっていても魔獣(奴ら)の餌食になるだけだ!」


 剣聖の号令を合図に時雨とキャンベラは走り出す。

 元主を抱えて走ろうとしたシャーシスだが、元主の重さに苦戦している。

 それを尻目に見た剣聖が無言でシャーシスから元主を奪い、背負いながら走り出す。


 全員が向かう場所はただ一つ。


 謎の扉の元だ。








 _______________________








 時は遡り剣聖や時雨たち、元主が『神殺し』を魂に刻まれる少し前。


 シルドヴィッセン大教会の礼拝堂では『影』が蠢いていた。


「【影の進撃こそ(ムェジェ)闇の審判なり(ムェジェ)】、!」


 礼拝堂の『影』を使い、影の濁流を作り襲わせる『影の存在』。


無限狂宴流むげんきょうえんりゅう屍乱舞(しかばねらんぶ)】!」


 筋肉に囲まれた巨漢、『悪鬼羅刹(あっきらせつ)修羅(しゅら)の男』獅子極(ししごく)(えん)だ。


 両手に持つ壊円刀(かいえんとう)を己の身体ごと回ることにより影の濁流をやり過ごす。


「【瞬突(しゅんとつ)破閃光(はせんこう)】!」


 己の拳のみを使い影の濁流に穴を開ける『人外』神楽坂(かぐらざか)那由多(なゆた)


『影の存在』が千花たちをシルドヴィッセン大教会の地下へと放り投げた際、那由多は元より落ちていず、炎は壁をよじ登り這い上がって来た。


「無限狂宴流【幻刀(げんとう)】!」


 壊円刀を投擲(とうてき)し『影の存在』の命を狩ろうとする。


「【影の領域こそ審判なり(ジェグァジェグァ)】、!」


 しかし、壊円刀は『影の存在』を斬る一歩手前で影の波に触れ、錆びてしまう。


 錆びきった刃では斬れるものも斬れず、『影の存在』の黒いモヤに覆われた両腕で止められてしまう。


「あァ!? 俺ァの壊円刀がァ!?」


「成程、あの黒い波には腐敗の効力があるのか…………」


 那由多が壊円刀の末路を見て、『影の存在』の使用した黒い波に推測をつける。


お前(てめェ)は絶対ェに許さねェ!」


 しかし、『影の存在』の攻撃手段を予測も立てずに一直線に進んでいく炎。


「愚直、すぎ、る、ね、。【暗黒の変異こそ(ヌィヴァ)審判なり(ヌィヴァ)】、!」


 『影の存在』が纏う黒いモヤが炎に伸びていき串刺しにしていく。


「こんなもん俺ァに効くかよォ!」


 だが、炎の先天的超回復体質せんてんてきちょうかいふくたいしつは影の杭に貫かれた程度でその効果が収まることは無い。


 杭が打ち込まれ穴が開いた炎の肉体の傷が、瞬きする間に治っていく。


「無限狂宴流【裂散斬回(ざんばらざんかい)(けん)】!」


「な、!、?」


 無限狂宴流の体術。

 無限狂宴流が剣術だけだと思っていてはダメなのだ。


 無限狂宴流は炎が己のためだけに創設した、言わば炎だけの武術なのだ。


 炎の大振りの拳が『影の存在』の頬を確実に仕留めた。


「もォ一発ゥ!」


 バコンッ! と凄まじい音を立てながら炎の左拳が『影の存在』を捉える。


「が、ぬ、ば、!、?」


 そして、あまりの威力に耐えきれなくなったのか、『影の存在』は地面に倒れ炎に馬乗りにされる。


「はハッ! こっからは俺ァの番だぜェ!」


 バコンッ! ヌチャッ! メキッ! と立て続けに『影の存在』から音がなる。


 炎の拳の威力は異常なほど強く、炎の拳も己の威力に耐えきれず手の甲から骨が飛び出てくる。

 だが、炎の拳は壊れたら壊れた傍から回復していき、振り上げている間には治っている。


 つまり、無限ループ(エンドレス)


「こ、の、! 【暗黒の衣こそ審判なり(ヌィグァヌィグァ)】、!」


『影の存在』が己の影に入り、炎の馬乗りから脱出する。


「そっち行ったぜェ! ぶちかましたれェ! 神楽坂ァ!」


 そう、『影の存在』が影に潜り逃げた先には闘気を溜めた那由多が待ち構えていたのだ。


「【壊圧(かいあつ)光爆(こうばく)】!」


 シルドヴィッセン大教会が、というより〈リングトラヌス世界線〉そのものが揺れる大技。


『影の存在』は叫ぶ暇すら与えられず、大教会の十字架へと吹き飛んでいった。


「えげつねェ…………。なんつー威力だよォ、クソッタレが」


 那由多の体重は炎よりも少ない。

 上背も、身長も炎の方が高いというのに、炎の拳は那由多の拳の足元にも及ばない。


 拳だけでなく剣術であっても、炎は凶の豪魔流(ごうまりゅう)豪魔神命流(ごうましんめいりゅう)の【覇王】には勝てない。


 幼き頃からの親友二人に置いていかれている炎。


 しかし、炎は諦めなかった。


 那由多が拳で世界一になるのならば自分は二番手で良い。

 凶が剣術で世界一になるのならば自分は二番手で構わない。


 だが、拳と剣術で両方二番手となるのならば、たった一つの世界一位では太刀打ちできない。


 拳と剣術。


 この二つで炎は人類の護り手(ラスト・ワン)で張り合っている。


 炎の強さはその根性と先天的超回復体質も含まれるのだが、本人は否定している。


 閑話休題(それは一度置いといて)


 思いっきり吹き飛ばされた『影の存在』は重力に引っ張られ、地面へと落ちる。


「オイオイ、死んだんじゃねェだろォな」


「そこまで強くは打ち込んではおらんのだがのぅ」


 炎と那由多が『影の存在』へと近ずいて行くと、ブワブワブワッ! と『影の存在』に纏っていた『影』が散っていった。


「……!? お前(てめェ)!」


「何故、そなたが……?」


 二人が『影の存在』の素顔を見て固まる。


 だが、二人が問い詰めるより先に『影の存在』は再び『影』を纏い、『影』の濁流により二人を遠ざける。


「ボク、は、()、とは、違う、。ボク、は、()みた、い、な、失敗、い、は、しな、い、! ボク、は、ボク、だ、!」


 礼拝堂中の『影』が蠢く。

『影の存在』の感情の昂りに応じるかの如く、礼拝堂中の『影』が溢れ出る。


「これは、(いささ)か不味いのではないか?」


「あァ。戦略的撤退と行きてェが、どうにも俺ァにゃ許されねェみてェだ。お前ェも気付いてっだろ?」


「…………あぁ。()()()()()()()()()()()の気配を感じる」


「ははッ! アイツらァ、俺ァですら無視できねェほど成長してやがるッ! 面白ェなァ、〈リングトラヌス世界線(ここ)〉に来るまでは素人(ガキ)だったのによォ、ちっと会わねェだけでここまで強くなるかよ」


 炎と那由多が感じた気配は、地下から追いかけてくる大量の魔獣と、『神殺し』を果たした千花たちである。


 一代で世界有数の極道組を立ち上げ、今も成長を続ける撰王組(せんおうぐみ)の総長と世界最強の非国家専属部隊世界政府直属第四〇六大隊管轄第八〇八中隊総隊長の二人が無視できないと言う。


『女神』との死闘は元より一目置かれていた剣聖や元主だけでなく、ヒヨっ子であった千花たちも大きく成長する出来事となった。


「オイ、神楽坂ァ。こいつァ俺ァもおちおちしてられねェなァ! 人類の護り手(ラスト・ワン)後継者(ディアドコイ)どもが昇ってくる前にケジメィつけねェとなァ!」


「うむ! 我らは人類の護り手(ラスト・ワン)! 先達の意地を見せねばなるまい!」


 炎と那由多が荒ぶる『影の存在』と再び相見える。

 しかし、二人が『影の存在』とぶつかることはなかった。


 なぜなら


「…、…、…、…、揃った、。遂に、揃った、。紛い物と、は、言え、『女神』、の‘’(神核)”。養分、と、なる、大量、の、‘’魔獣”、。そし、て、〈リン、グトラ、ヌ、ス世界、線〉、の、‘’中心核(そのもの)”、」


『影の存在』の周りで蠢いていた『影』がピタッ! とその動きを止めたのだ。


「あァ? 揃っただァ? 『女神』ってなんだァ? 神なんざこの世にャいねェんだよォ」


「‘’(神核)”、‘’魔獣”、‘’中心核”。どれも並大抵な方法では入手困難な代物だ。このような爆弾にしかならんものを集めてどうするつもりだ?」


 那由多の言う通り、‘’(神核)”はそもそも神を形作るものであり、神をこの世に現界させなければ入手は出来ない。

 例え神を現界させたところで神を討ち果たさねば、‘’(神核)”は手に入らない。


 唯一の方法としては『神殺し』しか存在し得ない。


 大量の‘’魔獣”も世界線に群がる‘’魔獣”には絶対数があり、どう抗っても百匹程度しか集まらない。


 世界線の‘’中心核‘’など以ての外だ。

 世界線を維持する上で重要なものは‘’民”、‘’王”、そして‘’中心核‘’。

 その‘’中心核‘’を見ず知らずの『影』に手渡すほど王としては蒙昧ではない。


「けどよォ、もし集められりャどんだけのエネルギーになんだァ?」


 炎と那由多が『影の存在』の野望を模索していると、不意にシルドヴィッセン大教会の扉が開いた。


「着いた……!?」


「やっと戻ってきたわ〜〜!」


「……! 『影』!」


 思い思いの言葉を口にしながら、千花たちがシルドヴィッセン大教会の地下から上がってきた。


 大量の魔獣込だが。


「お前ェら! つか大怪我じゃねェかァ!?」


 炎が千花たちの方を向いたが、彼女たちの怪我(重症なのは千花と剣聖と元主の三人だが)を見て驚く。


「大層疲れていると思うが、千花たち加勢を頼めるか? 背後の魔獣と『影の存在』をこの場で叩く!」


 那由多の号令で地下からの生存の喜びから現実に引き戻され、状況を確認する。


「良かろう。だが、栖本らは休ませろ。オレ一人で充分に(まかな)える」


「待て、鬼人。私も怪我はない。私も戦える!」


「結界だけなら私も張れます!」


「前衛は任せて欲しいわ〜〜!」


「支援だけでも…………!」


「主様は休むべきです! まだ【黒魔術のセイズ】が消えてませんから!」


 剣聖の言葉を筆頭に、キャンベラ、時雨、千百合、千花が声を上げる。

 千花はミリソラシアに止められていたが。


「ったくよォ。休めって言いてェとこだがァ、ガキを戦力として数えなきゃならねェとはなァ。キツくなったら休め。その分周りが補えェ。そんでローテーションだァ。交代で休んでけェ」


 成長したと言ってもまだ高校生の子どもに戦線に立たせたくないが、現状を覆すには力を借りなければならないため不本意ながらも戦力に数える。


「安心、しな、よ、。キミ、たち、が、ボク、と、戦う、こと、な、んて、ない、よ、」


「あァ? お前ェ(てめェ)、舐めてんのかァ?」


『影の存在』の言葉に炎が噛み付くが、皆『影の存在』の言葉の意味が理解出来ていない。


「始ま、る、よ、。紛い、物、の、贋作、では、な、い、真、の、神話、が、!」


 そして、状況は一気に動く。


 なんと〈リングトラヌス世界線〉を凄まじい揺れが襲ったのだ。


「なんだってんだァ!?」


「ステンドグラスが危険だ! 皆大教会の外へ!」


 その揺れは留まることを知らず、どんどん大きくなっていく。


 那由多の号令で大教会の外に外に出た一同はとんでもないものを目にする。


「嘘だろォ?」


「なんだ、アレは」


「……有り得ん。『女神』の存在もそうだが、()()だけは有り得ん」


 ()()は山と見間違うほどの巨体。


「カバラに精通し、天使、や、悪魔、を、召喚、した、古代イスラエル、の、王、魔術王、ソロモン、。ソロモン、の、魔導書、【ラジエルの書】、に、記さ、れた、召喚魔術、と、マグレガー=メイザース、の、著書、【術士アブラメリンの聖なる魔術の書】、の、【聖守護天使の召喚】、の、黄金、そし、て、アレイスター・クロウリー、の、【777の書】の、‘’魔術的アルファベット”、に、置き、換え、て、ようや、く、創り、出し、た【神霊召喚術式】、。と、言って、も、崩れ、た『女神』、の、召喚、に、留ま、って、しまっ、た、けど、ね、。それ、で、も、媒体、と、しては、充分、だっ、た、よ、。キミ、た、ち、が、頑張っ、て、‘’(神核)”、を、還し、て、く、れた、おか、げ、だ、よ、」


『影の存在』の長ったらしい説明に、千花たちは反応出来ない。

 それほどまでに目の前の()()の影響が大きかった。


「どうすれば……いいと思う?」


「…………私には目の前の()()が生き物だとは思いたくないわ」


「それは〜〜、可哀想だと思うけど〜〜。でも〜〜、仕方ないかな〜〜」


「『女神』だけでも頭パンクしそうでしたのに……」


「何なのだ? 本当に…………!」


 ()()はかつて神々すら手を出せなかったモノ。


「大量、の、‘’魔獣”、に、関し、て、は、楽、だった、ね、。ここ、の、王、が、魔獣、を、飼い、慣ら、し、て、くれて、た、か、ら、。王、を、堕と、せ、ば、‘’中心核‘’、も、手、に、入る、し、。やっ、ぱり、難し、かった、の、は、『女神』、だった、ね、」


『影』の中で彼、彼女、いや奴が笑った気がした。


「──────!!!!」


 ()()の声なき咆哮が真夜中の街に木霊する。


「さぁ、ど、うす、る、? 守護者、た、ち、! かつて、生き、る、災害、と、恐れ、ら、れた、()()()、! それ、も、神、に、真っ向、から、挑ん、だ、霜の巨人(ヨトゥン)族、に、どう、抗う、?」


 山の如き巨漢、地を見下ろす目、冷気纏う身体。


 北欧神話(ほくおうしんわ)の重要人、霜の巨人(ヨトゥン)族が現代に降り立つ。

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