5. 状況整理2
その言葉を聞き、千花と時雨は息を飲んだ。
「…………他の世界線……」
「………………それはつまり、今私たちのいる世界以外にも世界があるということですか?」
千花が呆然と、アンフェアの言葉を理解しようとしている。時雨はアンフェアが何を言っているのか理解したようで新たに質問をとばした。
「その通りだ。だが、詳しくいえば世界はひとつではない。神楽坂、獅子極、灰峰、九龍、千石、この五人は同じ世界にいる。しかし、余と霊魈はまた別の世界にいる。さらに、ワールとジェラール、ギール。こやつらもまた別の世界に住むものだ。つまりだ、世界が重なり並ぶことによりひとつの世界線ができる。世界線は無数に存在する。故に人類の護り手という守護者が世界線には必要なのだ」
「「…………………………」」
二人は何も言わない。いや、言うことが出来るほど今聞いた話はスケールが大きすぎた。
「………………世界線の事は分かりました。ですが他の世界線が戦争を仕掛けてくるのはなぜなのでしょうか?」
理解はしているが、納得はしていないといった様子で時雨が新たな質問をとばす。
「世界線には四つの世界線が存在する。俺らがいるこの世界線〈アザークラウン世界線〉は自立世界に入る」
「自立世界とは、自分たちの世界線だけで成り立つことができる世界線のこと。これもワタシ達の苦労の賜物。」
時雨の質問に対して答えたのは彼方とギールだった。
「なぜ貴様らが余の話を引き継ぐ!? この件は余が全て話すと言ったではないか!」
アンフェアが彼方とギールに不平を飛ばす。見るからに、玩具をとられた子供のような雰囲気をだすアンフェアさん。この世界線は大丈夫だろうか?
「……………………………じゃあ、〈自立世界〉の他にも世界線ってあるの?」
「あるさ! 他には〈侵略世界〉〈征服世界〉〈共存世界〉。この三つさ」
「〈侵略世界〉と〈征服世界〉の違いは敵を皆殺しにするか、奴隷として飼い殺すかの些細な違いでしかない」
「それにアイツら、下手に慣れてくるとすぐ調子に乗るからな! 片ずけるのが大変なんだよな!」
「分かるよ。それ。ワタシの魔導書を読む時間をことごとく邪魔してきたあのゴミ共、次会った時は永遠にとけない呪いをかけてやる…………………」
アンフェアの叫びを無視し、勝手に説明の続きを話し始めた二人に、無視されたからなのか体を小刻みにプルプルさせ、怒りを抑えているアンフェア、彼方たちの話を理解することで必死な千花たち…………
――この場は混沌っていた。――
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「パァァァァァァァァァン!!!!」
という何かを叩いた音により、混沌っていたものたちの思考が引きずり出された。
「そなたら、少しばかり落ち着くが良い。アンフェア、我慢をしろ。彼方、ギール、話を脱線させるでない。千花、時雨よ今の話理解出来たか?」
と、那由多の指揮能力により場は元の雰囲気に戻ったようだ。
余談だが、何かを叩いた音は那由多が掌同士を打ち合わせた音である。
手のひらをうちあっただけで、あのような大音量が出るのはなぜなのか、この場には誰もツッコむ気力などなかった。…………………………
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「これで大筋の説明はしたか! したのだよ! したのだ! 余がしたといえばしたのだ!!」
と、先程の恥を取り消さんとアンフェアが一気にまくし立てる。
「まだだよ! まだ私の質問に答えてないじゃん!!!! 勝手に終わらせないでよ!」
アンフェアの必死な抵抗も空気を読めなかった千花の発言により無に帰した。
「そういえばそうだったな。いや、すっかり忘れていた! フハハハハハハハハハハハハハハッッッッッ」
「いやいやいやいやいやいやいやいや、笑ってないで早く答えてよ!」
「ほう……この余に早く答えろだと……?図々しいにも程があるぞ貴様ッ!」
「いいから早く答えてよ!」
アンフェアの脅しも必死な千花には届かなかったようだ。
「まぁよい。貴様らを連れてきた理由だが貴様らが歪と会った際にッ!?」
――ドゴォォォォォォォォォン!!!!!!!!――
爆発音が轟いた。
「彼奴らか……………………ッ」
那由多の何かを察したような声に千花達は疑問を抱いた。
「……………彼らって一体誰のことですか!?」
時雨の焦燥に満ちた声が木霊する。
「ふんッ! 奴らは〈侵略世界〉〈イントロウクル世界線〉だ。大方〈アザークラウン世界線〉を滅ぼそうなどと考えているのではないか?」
「〈侵略世界〉…………!!」
爆発音の正体は〈侵略世界〉『イントロウクル』であった。
これで、ラスト・ワン序章が終わりました。これからは第一章です。名乗り遅れました。作者のPーです。ただの自己満足小説ですが末永く読んで貰えると幸いです。これからもよろしくお願い致します。