26. 王の実力
「少し遅れた。許せ」
その傲慢なセリフを放ったのは、〈アザークラウン世界線〉全責任者『皇王』アンフェアであった。
「アンフェアさん!」
「アン……フェア…………? 誰ですか?」
「私は知ってるけど〜〜、会うのは初めてね〜〜」
三人は各々違った反応をする。
「ぁ………………アンフェア…………さん……」
もはや時雨は立っていることすら不可能であったのか、その場に座り込みアンフェアの名を呼ぶ。
「ラスト・ワンは何をしている? それにうるさい小娘は帰ってきたのか。……まぁよい。積もる話はこの怪物を潰してからでもよいだろう」
さらっととんでもないことを言い出した。
アンフェアの実力は分からないが、巨大な〈眼〉と化したバラゼンの強さは身に染みて知っている。
「アンフェアさん! 眼とっても強いの! だから油断しないないで!」
四人の中で唯一アンフェアと話すことができる千花が〈眼〉の強さに警戒することを伝える。
しかし、帰ってきた反応は千花の予想だにしない答えであった。
「この程度、どうということはない。下がってみておれ。余の強さを」
「……!?」
千花は信じられないといった風に口をパクパクさせる。
それは他の三人も同じだったのか、全員言葉を失っている。
「◥◤◣◣◢◥◣◤◣◤◥◢◣◣◥◢◤◣◥!」
そこに〈眼〉が再び攻撃を仕掛けようとする。
先程千花たちに向けたような色とりどりの巨大な杭をアンフェア一人に向ける。
「アンフェアさん!」
「安心しろ、千花」
「……!? 霊魈さん!」
焦っていた千花の元に表れたのは〈アザークラウン世界線〉『神王』の霊魈彼方であった。
「アンフェアなら大丈夫だ。それより、こいつらを運ぶからお前らも一緒に空中庭園に来てくれ」
「え……? あ、はい」
彼方の言葉には有無を言わさない力があった。
故に、千花たちも素直に従うしかなかった。
「ワール!」
「今きましたよ」
ヴォン! と、空間が捻れるような音がした後そこには人が一人追加されていた。
「よし、ここにいる全員を空中庭園まで運べ」
「承知!」
トントン拍子で進んでいくなか千花たちはなされるがままになっていた。
「そうだ! アンフェアさんは!?」
「だから安心しろ、って言っただろ? よく見ておけよ。アンフェアを」
いつの間にか空中庭園に着いてしまった千花がアンフェアが無事かどうかを彼方へ問う。
彼方は空中庭園の玉座の間に設置されている大型ヴィジョンを見せる。
そこには〈眼〉がボロボロになり、空中にアンフェアが静止している状況が映し出された。
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千花たちが撤退の準備を進めている頃、〈眼〉とアンフェアはお互いに睨み合っていた。
「◣◤◢◥◣◥◤◢◤◣◤◥◢◤◣!」
先に動きだしたのは〈眼〉だ。
様々な自然元素の杭をアンフェアに向けて放つ。
とてつもない爆発音とともに、煙が玉座の間を包み込んだ。
「はっ! つまらん。その程度で余と対等に殺りあうつもりか?」
なんとアンフェアは無傷で同じ場所に立っていた。
その表情は半分苛立ち、半分が無関心であった。
「◣◤◣◢◤◣◤◣◤◣◢◤◥!」
轟々と燃え盛る炎が辺り一面に着火した。
もはや玉座の間は元の荘厳な雰囲気など微塵もなく、ただの瓦礫とかしている。
その状態で炎をまいたのだ、玉座の間はどんどん破壊が進んでいく。
「たかだか炎程度でこの余を圧倒できると思っていたか?」
そう言うと、アンフェアがおもむろに左手をあげた。
すると周囲に溢れていた炎が全てアンフェアの左手に消えた。
「返すぞ。穢れた炎なんぞ余中には入れん」
今度は右手をあげ〈眼〉に向ける。
そうするとアンフェアの右手から雷鳴が轟き、〈眼〉へと一直線へと向かっていった。
「◤◥◤◣◤◣◢◤◥!」
だが、雷鳴を受けた〈眼〉は大した傷もつかず逆に怒りに火がついたようだった。
その勢いでもう一度様々な自然元素の杭をだし、アンフェアへ放とうとする。
「もうそれも見飽きたな。一芸しか出来んのか?」
アンフェアが左手をあげると、すぐおろし右手をあげる。
「貴様には重みが必要だろう。ありがたく受け取れよ」
アンフェアの言葉の後、〈眼〉はなにか重いものが体に乗ったように地面へと押し込まれた。
「◥◤◥◤◥◢◤◣◢◤◥◤!」
それでも〈眼〉はアンフェアを睨み続け、竜巻型の合成魔眼を使用する。
「何度も言っただろう。もう見飽きたとな」
アンフェアは先程と同じような容量で左手をあげ、右手をあげた。
そうすると、今度は〈眼〉が放った竜巻型の合成魔眼がなにかに吸い込まれ、その場から消える。
「終わりだ。人をやめたところで真の王たる余には敵わん」
そして、左手をあげる右手をあげる動作をした。
今度は右半身が天使の羽のようなものに包まれ、神々しい感覚を醸し出している。
次の瞬間、羽がヒラヒラと〈眼〉に向かって落ちていった。
羽は〈眼〉に当たると同時に〈眼〉を溶かし始めた。
「◣◤◥◢◤◣◤◥◣◤◥◢◥◢◥◢!!」
「耳障りだ。喚くな」
必死に羽の追撃を逃れようと動いている〈眼〉だが、アンフェアが一連の動作をした後、〈眼〉はなにかに押し潰されようとしている。
その上にアンフェアが〈眼〉を睥睨している。
その光景は千花たちが空中庭園のヴィジョンで見ていたものと同じである。
「アンフェアさん……一体なにをしたの?」
「これが〈アザークラウン世界線〉の王…………。レベルが違います……!」
疑問に思っている千花。
人類の護り手の強さが身に染みているミリソラシアは納得する。
「アンフェアの世界じゃあ超能力開発が進んでるらしくてな。その中でも段違いの強さを誇ってるのがアイツだ」
と、ここで声をあげたのが彼方であった。
「……? アンフェアさんの超能力って…………?」
「『エネルギー変換』だよ。妙に科学的だが、超能力ってのは元来そういうものらしい。アンフェアは左手でエネルギーを『吸収』して、体の中で『分解』する。そんで『分解』したエネルギーを体の中で『再構築』して、右手で『放出』する。言葉にしてみると簡単だが、『吸収』したエネルギーを『再構築』するためにはそのエネルギーの構造をしっかりと理解しとかなきゃならねぇ。その上、あの速さで『再構築』してからの『放出』は頭で考えるんじゃなく、感覚でやらなきゃならないらしい。まぁつまりだ、『エネルギー変換』って超能力はアンフェアでないと使えないってことだ」
「…………?」
彼方が丁寧に教えてくれたが、千花は理解出来なかったようだ。
ミリソラシアは黙って彼方の言ったことを理解しようと努力する。
千百合に至ってはもはや考えることを放棄した。
唯一、理系科目が得意な時雨は昏睡状態。
「おぉ……疑問符が浮かんでるな…………。よし! 具体的に説明しよう。例えば炎があるとする。この炎はただの炎と思うが、実際のところは[熱エネルギー]なんだ。[熱エネルギー]を左手で『吸収』し、体の中で『分解』。そんで違うエネルギー、そうだな…………[電気エネルギー]に『再構築』する。後は『放出』して終わりだ。まぁアンフェアはエネルギー変換効率とかいじれるし、エネルギーそのものの威力を変えることもできる」
「…………一つ質問を。例えば[風力エネルギー]を[熱エネルギー]に変えることも、[水力エネルギー]を[電気エネルギー]に変えることも可能なんですか?」
ミリソラシアがおもむろに彼方へと問いを投げる。
「そうだ。その考えであってるぜ」
「それでしたら、どんな攻撃をしても元々はエネルギーなんですからすべてアンフェア様は変換してしまうのでは?」
「あぁ。変換して反撃までしてくる」
「それって敵いないじゃん!?」
「だから〈アザークラウン世界線〉の全責任者なんだろ?」
アンフェアはこの世のありとあらゆるものをエネルギーとして『吸収』し、変換することが出来る。
ならばこの世の物質ではアンフェアに勝てないことになる。
「……? そういえば〜〜、最後のあの翼みたいなのはなんなの〜〜?」
「あぁ、あれか? あれは確か、[天使エネルギー]だったっけな?」
「……!? 天使エネルギー!? なんですかそれは!?」
「名前の通りじゃねぇの? 天使を創るために必要なエネルギー。天使エネルギーを使えばアンフェアは天使を量産できる」
非科学的な単語が出てきて千花たちは言葉を失くす。
「まぁアンフェアに勝とうと思ったらこの世の常識に真っ向からケンカ売ってるやつじゃねぇと無理だな」
彼方は誇らしくアンフェアのことを語る。
まるで自慢の子どものことを話すみたいに。
「……!? 霊魈さん! 〈眼〉が!」
空中庭園に焦燥に満ちた声が響く。
「……? すげぇな眼。アンフェアに勝てないと思って〈イントロウクル世界線〉の世界そのものを自分と同じように、つまり〈眼〉にする気だぜ?」
空中庭園のヴィジョンには〈眼〉が大型魔法陣を生成しているのが見える。
「アンフェア様はどうにかできるんですか?」
「無理だろうな」
「……!?」
彼方のバッサリとした答えにミリソラシアだけでなく千花たちも驚いている。
「アンフェアのエネルギー変換はえげつねぇ能力だ。だがその分欠点はある。アイツはエネルギーをひとつしか『吸収』出来ない」
「……? それはどういう?」
「例えばだぜ? 魔力で作った炎弾があるとするだろ? [魔力エネルギー]を『吸収』しても[熱エネルギー]が残っているから魔力を失って形を崩した炎そのものがアンフェアを襲う。そもそも相手が二人以上いると『吸収』できるはどちらか一方のエネルギーだけになるからもう一方のエネルギーは『吸収』出来ない。つまりアンフェアのエネルギー変換は一対一のタイマンじゃねぇとその本領を発揮出来ねぇ」
「それじゃあどうするの〜〜?」
「しゃあーねーなー。俺に任せとけ」
「霊魈さん……その…………大丈夫ですか……?」
彼方に声をかける千花は心配を含んでいた。
いくら王といったところでアンフェアが強すぎただけである。
故に同じ王であっても彼方では敵わないと思ったのだ。
「任せとけって。『神王』の力見せてやるよ」
そう言って彼方は空中庭園から飛び出して行った。
新たに生まれた〈世界眼〉を始末するために。
しかし、彼方が〈世界眼〉元へと行った直後空中庭園に衝撃が走った。
それも物理的に。
「……!? 今度はなに!?」
「〈イントロウクル世界線〉の残党みたいだね。生きてたんだ」
千花の問に答えたのは玉座に座っていたギールであった。
「艦隊で来るとか頭どうかしてるんじゃない?」
「あ……ギールさん…………」
「なんだい? ギールさんいたの? って言う顔をして」
「い、いや〜…………」
「目を逸らさないでくれるかな? もしかしてワタシのことを忘れていたなんてないだろうね?」
ギールのジト目が留まるところを知らずにジトジトしていく。
「…………実は忘れてました」
「ちょっとミアミア!? 私の心のなか代弁しないでくれる!?」
ミリソラシアに心のうちを暴かれて千花はとてつもなく焦る。
「…………忘れてたんだね。ワタシってそんなに存在感ないかな…………? 『帝王』してるんだけどな……」
ギールの呟きに千花は心を痛める。
「えっと…………ギールさん………………?」
「お二人の話は一度置いといてもらって。外にいる残党はどうするんですか?」
ミリソラシアが二人で気まずい空気になっているギールと千花に話の話題を変える。
「……まず疑問なんだが、キミは一体誰だい?」
ミリソラシアのことを知らないギールから疑問が飛んだ。
「彼女はミリソラシア。私の親友で、変態さん」
「ああああああああぁぁぁ! 久しぶりの罵倒! いい!」
「…………キミは人間かい?」
千花とミリソラシアの流れるこのようなやり取りにギールは至極真っ当な疑問が浮かぶ。
「ねぇ〜〜、ミリソラシアちゃんのことはどうでもいいからさ〜〜、外の敵どうにかしようよ〜〜」
「キミは一人で何を言っているんだい?」
千百合の意識は未だに千花の体にあるため、千百合が喋ると千花が喋ったようになり、事情を知らないものから見ると、一人二役で遊んでいる感じとなる。
「いろいろあったから〜〜、後でゆっくりお話しましょ〜〜」
「千百合様、話の腰を折らないでください!」
「キミが折っているのではないかい?」
ギャーギャー、ワーワーと空中庭園内は動物園状態になってしまった。
「そろそろ話を元に戻していいカ?」
ここで一人の護り手が声を上げた。
「千花たちの事情は〈イントロウクル世界線〉の問題を片付けてからでもよいだロウ。今は残党処理を優先すべきだロウ」
ド正論すぎてこの場に集まっている者は誰一人として反論することができなかった。
「わかった。外の連中はワタシが相手するよ。アストライオス、この子たちをお願いね。まぁ一応神楽坂たちを呼んでおいてね」
「understood。アナタが出撃するのならワレは心配することもないナ」
ギールはグレゴリーの提案(?)により空中庭園の外に集まっている残党を倒すことを決める。
「まぁワタシが外に出るわけではないんだけどね」
「ではどうするのですか?」
ギールの呟きにまっさきに反応したミリソラシアがことの真意を問う。
「……? 簡単なことだよ。空中庭園を維持しているのはワタシなんだよ。だから空中庭園の支配権はワタシにある。少し待っていてね。操縦室にはワタシの力を空中庭園から使うことができるから」
そう言ってギールは玉座の間を離れ、操縦室とやらに向かっていった。
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世にも珍しいことが〈イントロウクル世界線〉で起きようとしている。
序列三位に位置づけされている〈アザークラウン世界線〉の三大王の戦闘が見られるのだ。
「ワタシは人類の護り手『帝王』へライド・ギール。ワタシの楽園に土足で踏み入れようとしている愚か者に魔道の鉄槌を振るう者。【世界想像全集第一節「盤上の遊戯」】」
「俺は人類の護り手『神王』霊魈彼方。悪ぃが世界眼は邪魔だ。だから、{否定}する。【否定の左手】」
「余は人類の護り手『皇王』アンフェア。下等な劣等種が、ひれ伏せ。[空間]『吸収』、『分解』、『再構築』、[天使]『放出』、【天使の唄】」
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空中庭園のヴィジョンには王たる者の姿が写っている。
ギールの魔導書の権限により、〈イントロウクル世界線〉の残党がいる空間そのものが魔導書の支配する盤上と化した。
「支配者へライド・ギールが命ず。踊り狂い、死をもって盤上の遊戯とす」
ギールが一言命令を出した。
そうすると、残党たちが急激に暴れだす。
その様相はまさに踊り狂う暴徒のように。
そして最終的に互いに傷つけ合い、全滅をきした。
「……醜いですね………………」
ミリソラシアは心底気持ちが悪いといった風に、顔をしかめる。
それに答えたのはグレゴリーだ。
「まァ、人間の心の内なド所詮あのようなものダ」
「確かにそうなんですけど…………」
ミリソラシアの声色は何かが詰まったように歯切れが悪い。
「人の醜い部分を露出させるギールが気に入らないカ?」
「……!」
「どうやら当たりのようだナ」
グレゴリーの勘は当たっていたようで、ミリソラシアは激しく動揺する。
「恩人にこんなことを思うなんて不謹慎かもしれませんが、それでも…………私は」
「すべて言う必要はなイ。ワレも同じ思いもあル」
「……! だったら!」
「だが、ワレはギールが今の力を使う理由を知っていル。ギールがどんな道を歩いてきたかも知っていル。だからこそ、ワレは彼を嫌悪することなど出来なイ」
グレゴリーの横顔は凛としていた。
自分の思うことに一切の迷いがない。
そんな感情が含まれていた。
「私だって嫌悪したりしません。ですがそれでも、見たくないものには変わりありません」
「どうやら平行線のようだナ。だが、意見の食い違いは人間である証拠ダ。己の意見が決まっている者は何ものにも負けることはなイ。今の感情をよく覚えておケ。直にその想いにも納得がいク」
グレゴリーは寂しそうにそう呟いた。
「……ねぇ〜〜、あの人も強かったのね〜〜」
グレゴリーとミリソラシアの会話の隙を見計らって、千百合が二人に話しかける。
空気を読んでちょうどよいところで空気を壊す。
それが千百合の長所なのかもしれない。
「王を舐めてはならなイ。それはどの世界線でも共通の認識ダ。これに反した者から消えてゆク」
グレゴリーの言葉には確信が含まれていた。
そんな人間を何人も見てきたことがあるように。
「ギールも確かに強いが、それでもあの人には及ばなイ」
「あの人〜〜? アンフェアさん〜〜?」
「いいヤ…………違ウ」
グレゴリーは頭を振りそうではないと示す。
その顔には絶対的な自信が見えた。
「人類の護り手で最も強いのハ、迷いなく霊魈ダ」
皆が見ているところでは彼方が笑いながら何か喋っている。
「弱いなぁ、オイ。いや…………俺が強すぎるだけか!」
〈眼〉よりも強い〈世界眼〉を秒殺した彼方が笑いながら言っている。
「何があったのですか…………?」
今度は意味がわからないといった風に呟いた。
ギールに続き理解の範疇を超えた業に思考が停止しているのかもしれない。
「ワレも多くを知っている訳ではないガ、霊魈の左手は{否定}を意味するらしイ」
「否定ですか?」
「この世界のあらゆる物を{否定}すル。人モ、事象モ、世界すら霊魈の前では{否定}する存在でしかなイ」
「…………それはつまり………………」
ミリソラシアが戦慄の表情でグレゴリーに問う。
「霊魈はその気になれば左手を振るうだけで、すべてをこの世から{否定}できル」
己の一存だけで、世界の理すら超越する。
ギールやアンフェアも規格を大きく外れているというのに、彼方はもはやレベルが違うだけでは言いきれないほど強かった。
「『神王』霊魈彼方………………。激強だね〜〜」
彼方の名前を反芻し、その存在の大きさに語彙力を失くす。
いつでもふんわりとした千百合ですら、彼方の強さには絶句するのだ。
ミリソラシアなど受け入れることも難しかもしれない。
「これで終わったか。〈イントロウクル世界線〉はなかなかに長かったな」
アンフェアの呟きは空中庭園のヴィジョンにも聞こえていた。
「終わったようだナ。いくら〈眼〉が強かったとしてモ、ヤツラが一度に攻めれば造作もなかったようダ」
「………………お父様」
ミリソラシアが静かに〈眼〉と成り果てた父の旅路を思う。
多くの命を奪い、善王とは到底言うことの出来なかったが、それでもミリソラシアにとっては父親なのだ。
幼き頃の思い出がミリソラシアの頭の中を駆け回る。
それでも、ミリソラシアは涙を流さない。
それが、父に対する最初で最後の親孝行であるから。
〈イントロウクル世界線〉と〈アザークラウン世界線〉の戦争は〈アザークラウン世界線〉の完全勝利で幕を閉じた。




