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ラウル様から渡されたのはオルゴール。
それは婚約が決まるより前、私が大切にしていたオルゴールと同じものでした。
小さな子供がお気に入りのぬいぐるみを持って歩くように、私にはオルゴールがぬいぐるみの代わりでした。
ある時、窓際でオルゴールを見ていて強い風に吹かれ、カーテンに巻き込まれ地面に落ちて、壊れてしまったんです。
何か手柄があった気もしますが、お気に入りのオルゴールが壊れ当時はそれどころじゃありませんでした。
「どうしてこれを、ラウル様が?」
オルゴールは引っ越していった友人からもらったもので、確か特注品です。
なので、同じものは存在しないはずなんです。
「あの時、僕も同じ場所にいて、大泣きをしていたリリアーヌを見てるんだ」
頰をかいたラウル様が続けます。
大泣きをして私が両親と一緒に家に帰った後で、ラウル様は侍女さんたちに理由を聞いたそうです。
私の泣き顔を見ていると自分まで悲しくなってくると、オルゴールを直せば笑顔を見れるんじゃないかと幼いラウル様は考えたそうです。
「すぐに直せると思っていたら、全く。それで、凄腕の職人がいると話を聞いて彼女に協力を頼んだんだ」
侯爵令嬢さんのお家なら、確かに出来るかもしれません。顔を広いでしょうから。
それで協力をしてもらっていたら、噂がだったんですね。
「今思えばきっと、リリアーヌのことをあの時から好きだったんだと、思う。意識しすぎて、まともに話すことができていなかったけど……」
本当に嫌われてはなかったんですね。
それにしても、ラウル様に好かれていたのは驚きです。
「……ラウル様。きっと、私も一緒なんです。噂を聞いて仕方ないと思うのに怖くて仕方なくて、今、こんなにも安心している私がいるんです」
きっと、この気持ちは情が移っただけではないのでしょう。恋、なんだと思います。
だって、ラウル様の隣に立つのは私でありたいと、誰にも譲りたくないと思うのですから――。
ラウル様のためじゃありません。リリアーヌさんのためですわ。by侯爵令嬢




