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魔法が使える彼女と僕の日常

レインドロップ・ドロップ

作者: 早瀬 要

「あーぁ。本当だったら、今頃は遊園地だったのに。」


窓の外、6月の空はどんよりと曇り、やや大きめの雨粒が遠慮なく降り注ぐ。


目線を下げると、市立図書館の花壇には紫陽花が咲き誇っている。まったく、気持ち良さそうなのは紫陽花と、その葉にひっついてるカタツムリくらいだな。と思う。


「まぁ、たまにはのんびり、こうして本を読むのもいいんじゃない?」


後ろのテーブル席でクスクスと笑いながら僕のぼやきに返事をする彼女。


本当は今日、彼女と遊園地に出かける予定だったのだ。一週間前に遊園地に誘うと、彼女は微笑んで了承してくれた。


それから毎日、早く今日にならないかと楽しみにしていた。


一昨日の天気予報では、降水確率は30%、晴れ時々曇りの予報だったのに、昨日になってみると降水確率70%。曇り時々雨になっていた。


そして今日、この雨である。


朝彼女に電話して、この雨では遊園地は楽しめそうにないから予定を変更にしよう。どこか行きたい場所はあるか?と伝えると、図書館がいい。と彼女は言った。


そうして僕らは図書館に来たのだが、普段あまり本を読まない上に、予定が潰れてしまった落ち込みもあってあまり集中して本を読む気になれない。


黙々と本を読む彼女から少し離れた窓際の席で、僕は最初の十数ページだけ読んだ本を膝の上に乗せ、水滴が次々と滴る窓から外の景色を眺め続ける。


「たまには…って、君は雨だろうが晴れだろうが、暇があれば本を開いてるじゃん。」


そう言って、窓辺についていた頬杖を外して振り返った瞬間。


いつの間に近寄っていたのだろう。背後には彼女が立っていた。そして、トンッと軽くだが、僕はいわゆる壁ドンをされる形になった。


「うわっ?!」


僕が驚くと、彼女は笑いながら体勢を戻した。その手には何かがつままれていて、驚いて思わず開けた口に、彼女はそれを放り込んだ。


「はい。これあげるから。」


「?!」


口に広がる懐かしい甘み。イチゴ、味?


ぽかんとしている僕を見て、彼女はクスクス笑っている。そして、手をギュッと握ってまたもや飴玉を出すと、自分の口にも放り込んだ。

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