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エビ男の復讐

 前書きも解説も無く、いきなり本編が始まっている。全てのページが見開きでフルカラーの大きな挿し絵(絵柄はチャージマン健を更に古臭くした感じ)が描かれており、両端の部分に本文が書かれている。


 最初の数ページは忘れてしまった。何らかの凶悪犯罪を、少年探偵ケンと助手兼ガールフレンドのミキちゃんが解決するキャラ紹介的なシーンだったと思う。


 覚えてるのはその事件が解決して、事務所で二人がくつろいでいるシーンからだ。


 ……


 ……


 ……


「最近、帝都にまたエビ男が出没しているらしいね」


 ケンは新聞を読みながらミキに言った。


「まあ、エビ男が? 怖いわ」


 ミキはエビ男の名前を聞いて震え上がった。


 エビ男とは、過去に帝都に出没した正体不明の怪人である。黒いスーツ姿の人間の身体をしているが、頭部は緑色をしたクルマエビのそれに似ている(注:挿し絵ではかなり簡略化され、触覚すら省略された頭部が描かれている)。


 常に三体一組で行動する。知能は低いが、力と性欲が強い。


 かつて夜毎に現れては女性を襲い、帝都を恐怖に落とし入れた。警察も神出鬼没のエビ男を捕まえようと躍起になったが捜査は進まず、打つ手無しかと思われたが、ある時を境に忽然と姿を消した。それがまた、帝都に現れたのだと言う。


「だいじょうぶだよ、ミキちゃん。何があっても僕が護ってみせるさ」


 そう言ってケンがほほえむと、階下から大きな物音がした。


「なにかしら? 私、見てくるわ」


 そう言ってミキがドアを開けようとした時、


 ドカーン!


 と大きな音と共にドアが吹き飛び、無数の褐色魔人が事務所に飛び込んできた。


(注:褐色魔人……本文中に説明は無いが、褐色の筋肉質の男の腹部のみで出来た怪物。空中を浮遊して移動する。強そうな名前だが、壁を作ってケンを妨害する以外の働きは見せない)


「くそっ!」


 ケンは褐色魔人を押し退けながら、ミキの姿を探すが見当たらない。すると、ミキの悲鳴が階段の下から響いて来た。見ると、褐色魔人の作る壁の向こうに三人の人影が。


「あれは怪人エビ男! まてっ! ミキちゃんを返せ!」


 しかし、ケンの叫びも虚しく、ミキはエビ男によって拐われてしまった。


 ようやく褐色魔人を撃退したものの、ミキちゃんの足取りは全く判らない。途方にくれるケン。その時、事務所の電話が鳴った。


「はい、ケンですが」


「やあ、私だ。槙村博士だよ。いま、趣味の地底探検をしていたのだが、怪しい遺跡を見つけてね。その入り口にエビ男が出入りしているのを見たんだよ」


(注:槙村博士はミキちゃんのパパ。挿し絵は、地下空洞の中のアステカ式ピラミッドを前に、受話器を持った槙村博士の顔がアップで描かれている)


「なるほど、そこが黒幕の本拠地に違いありません! すぐに向かいます!」


 ケンは急いで事務所を飛び出した。


 ……


 地下遺跡に潜入したケンは、次々に襲いかかるエビ男や褐色魔人を自慢のコルトで撃退すると、遺跡の一番奥深い部屋へと躍り込んだ。そこには、ベッドに寝たままチューブで機械に繋がれた、四肢の無い醜い老人がいた。


「おまえは、△△財閥の総帥、△△公爵!」


(注:△△……漢字二文字だったが忘れた)


「お前は少年探偵ケン? よくぞここまでたどり着いたな」


 公爵はふてぶてしく笑うと、自分の企みを話し始めた。


 △△公爵は、有り余る金に物を言わせて放蕩の限りを尽くしていたが、事故でこの様な姿になってしまった。最早自分では動けない公爵は、腹いせと戯れの為にエビ男を科学の力で作らせて帝都を混乱に落とし入れていたのだ!


「なるほど、そう言う事か。ならば仇をさがす手間が省けたと言うものよ」


 そう言うと、ケンは自分の顔を引っ張ってはぎ取った。なんと、ケンの少年の顔はゴムで出来た偽物だったのだ!


「アッ! お前はエビ男!」


 その下から現れた顔を見て、公爵は驚いて叫んだ。そう、ゴムのマスクの下から現れたのは、まぎれもなくエビ男の頭だったのだ。


「そうとも。俺は、過去にお前が作ったエビ男と、それに襲われた女との間に生まれた子よ。正体を隠して辛い人生を送ってきたが、思いがけなく復讐を果たせると言うものよ。さあ、報いをうけろ△△公爵!」


「ウアーッ!」


 ……公爵の部屋から出てきたケンにミキか泣きながら駆け寄る。どうやらミキは槙村博士に助けられたらしい。ミキはケンに抱きつきながら聞いた。


「公爵はどうなったの?」


「ああ、公爵は僕が部屋に入った時には、もう死んでいたよ。きっと罪の大きさに耐えきれずに自殺したんだろうね」


 そう言うと、ケンもミキを深く抱き締めながら言った。


「もう、だいじょうぶだよ。これからも何があっても、僕が守るから」


(注:挿し絵は二人が抱擁しあう場面を描いているが、ケンの目線は読者の方を見つめている。その目は緑色に光って……)

何とも言えない印象を覚えて本を閉じた。


結構面白いようにも思える。


買うか? 買わないか?


悩みながら何度も読み返している内に、目覚ましが鳴った。


……仕事だ。

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[一言] 力とせいよくが強い エビ男、アウトー
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