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9.

「それはドッペルゲンガーじゃありませんか?」

 同級生の島田浩次が言った。

 太一は大学に到着すると、教室で先程のことを浩次に話した。

「自己像幻視ですよ」

「ジコゾウゲンシ?」浩次の言葉を復唱してみる。

「自分の姿を自分で見てしまう幻覚の一種ですよ」

「映画かドラマで見たことあるかも」

「噂では、ドッペルゲンガーを見た人は数日後に死ぬと言われています。まあ、伝承ですからね。迷信みたいなものです。一説にはリンカーンや芥川龍之介もドッペルゲンガーに遭遇したらしいです」

「芥川龍之介ってあの芥川賞の?」

 太一は身を乗り出す。

「俺、小説読まないけど、芥川龍之介くらいは知ってるぞ」

「芥川龍之介にいたっては、ドッペルゲンガーが出て来る小説を発表しています。『二つの手紙』とか『歯車』ですね」

芥川龍之介の小説は、教科書で「羅生門」を読んだことしかない。それ以外で芥川龍之介の小説は読んだことはない。あとは「蜘蛛の糸」くらいしか思い浮かばなかった。

「しかも、芥川龍之介はドッペルゲンガーを見たから死んだなんてことも言われています。もっとも芥川龍之介は自殺したんですが」

「自殺か……」

「因みに芥川龍之介以外でも、多くの作家が題材にしていますよ」

「他には?」

「そうですね。有名なところですと、ドストエフスキーや谷崎潤一郎なんかですかね」

 名前くらいは聞いたことがあった。

「フランスの文豪モーパッサンに至っては、小説の執筆中にドッペルゲンガーに遭遇したと言われています。小説を書いていると、モーパッサンのドッペルゲンガーが現れて、書いていた小説の文章をすらすら話し始めたらしいです」

 教場に学生が増えてきた。次の講義は、五百人収容の大規模な授業だ。

「ごめん、モーパッサンは知らないや。要するに、色んな小説家が見ているってことか。でも、何で小説家ばっかりがドッペルゲンガーに会うんだろうね」

「確かにそう言われれば、小説家ばかりですね」

 浩次が思案顔になったところで、チャイムが鳴った。



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