7.
黄泉の入り口に続くような濃霧の中をゆっくり進む。視界はほぼ遮られている。周囲に車がないとはいえ、減速しないと、少し不安だ。昔、似たような設定のゲームをしたような気がする。そのゲームには、身の毛もよだつ、クリーチャーも登場した。確か、ハリウッドかどこかで映画化もされた。
太一は、一旦車を停める。落ち着け、自らに言い聞かせてみる。
世界の終りはあるのだろうか。ぼんやりとそんなことも考えた。ここが世界の終わりなのか?
太一は、ノストラダムスの大予言が見事にはずれた一九九九年の七の月、この世に生を受けた。
来年の夏には、東京でオリンピックも開催される。東京での開催は、五十数年ぶりだという。
心理学の本に書いてあった。「世界は自分が考えるとおりになる」そうであるならば、世界の終りも自分が考えるとおりになるのかもしれない。
太一は、元の世界に戻りたいと強く願ってみた。目を瞑り、深く深く念じる。ここは現実の世界ではない。
太一の趣味は読書と映画観賞……そして……。
急に頭痛が襲ってきた。
太一は急に眠たくなった。意識が遠のいていく。
次に目覚めると、今度は車のシートの上ではなかった。あたり一面真っ白だ。どこまでも白い。先ほどの黄泉の国へ来てしまったのだろうか。「西の魔女!」と叫んでみるが、返事はない。歩いても、走っても、白い世界では感覚がない。途方に暮れて、仰向けになって天井を仰いだ。何もない。白い世界が続いているだけだ。
きっとあの世はこんな雰囲気ではないかと想像を巡らす。もしかして、自分は死んでいるのではないかとも思った。ただ、天国というよりは、地獄に近いような気がする。抜けられない不思議の国に迷い込んでしまった。永遠にこんなことを繰り返していくのだろうか。今まではまだ登場人物もいたからいいけれど、今はたった一人ぼっちだ。しかも世界は白く、音もない。まともな人間なら間違いなく発狂しているところだ。
もう感覚が麻痺していると思う。もはや神様になった気さえしてきた。そう太一はきっと神になった……。