18.
羽田空港行きの高速バスに乗った。一時間足らずで空港に到着する。搭乗手続きを済ませて、発車口へと向かった。飛行機に乗るは、久しぶりだった。軽装のため手荷物は預けていない。
飛行機に一時間半乗って、福岡空港へ到着する。九州に来たのは、小学生のとき以来だ。福岡空港は混雑していた。地方都市の一つだと思っていたので、人の多さに驚いた。東京よりも暖かいイメージがあったが、意外に寒かった。気候も東京とあまり変わらない。
博多駅も栄えていた。東京と同様にどこもかしこもビルが立ち並んでいる。忙しそうに人が往来していた。
電車に揺られて、しばらくすると状況は一変してくる。田園風景が広がり、都市の雰囲気から田舎の落ち着いた自然豊かな風景が飛び込んできた。
大学は高台にあった。敷地も東京の大学とは比べ物にならない。総合大学ということもあるだろうが、それにしても広さ過ぎる。正門の前には大きな案内板があった。文学部、教育学部、経済学部、法学部、経営学部、商学部、工学部、理学部、医学部があるようだ。父は理系だった。医学部ではないと思うので、工学部か理学部に在籍しているのだろうか。
守衛室があったので、太一は声をかけた。
「こんにちは。理学部か工学部はどちらですか?」
守衛室の中にいた警備員が身を乗り出す。
「理学部はこの通りをまっすぐ行ってください。大きな講堂があります。その手前で右に曲がってください。工学部も同じ方向にありますが、工学部はこのキャンパスだけではないですよ」
「そうなんですか」
「お隣の大分県にもあります。今日は何のご用ですか?」
「研究の関係です。ありがとうございます」
太一は早口でお礼を言って、守衛室を背に歩き出した。身分証や学生証などの提示を求められないかビクビクしながら、小走りに進む。幸い警備員は追いかけてもこなかったので、とりあえず理学部の研究室を目指すことにした。
この大学も試験期間が終了しているのか、キャンパス内は閑散としている。構内の建物はどれも老朽化が進んでいた。太一の通う私立大学とは随分違うんだなと思った。都内の大学は、近代的な建物が多く、高層階の校舎が目立つ。太一の通う大学にもタワーマンションのような校舎がシンボルのように建っている。もちろん土地の問題もあるのだろう。東京は大学に限らず、建物がどんどん縦に伸びている。
ようやく時計台がある大きな建物が見えてきた。これが講堂だろう。正方形で重厚な造りだ。建物自体に威厳があり、歴史と格調を醸し出している。一目でホールだとわかった。入学式や卒業式、演奏会などもここで開催してかもしれない。太一の大学では大人数を収容できるような会場はない。入学式は武道館で開かれた。




