14.
ベッドに潜り込んだが、やはり寝付けなかった。自分を見つめる自分の顔が頭に浮かぶ。
たまに父の夢を見ていた。
父は太一が大学一年の冬に死んだ。あまりに突然のことだったので、記憶も曖昧だった。
今は母と二人暮らしになった。内心ではホッとした部分もある。父は暴力を奮うからだ。普段は大人しく真面目な父が豹変することがあった。仕事のストレスだろうか。
けれど、葬式では自然と涙がこぼれた。
「般若心経」は諳んじることができた。信心深い祖母の影響かもしれない。父方の祖父母と同居していた。父も母も教員だったため、小さいときは、祖父母と夕食を食べることが多かった。祖母はご飯を食べる前、必ず仏壇に拝む。
昨日、テレビでショートスリーパーを特集していたことを、ぼんやりとしながら思い出す。世の中には色々なタイプの人間が存在する。いっそ自分もショートスリーパー体質に生まれたかった。
上京したての頃は、一人暮らしが楽しかった。次第に一人で過ごす夜が辛くなった。
半覚半醒の中、太一とそっくりなその男性はこちらを見ている。
刹那、目が合う。視線がぶつかる。全身に電気が走った。
頭に浮かび、離れない。
思案を巡らせてみたところで、どちらが本物で、どちらがコピーかわからない。
日常と非日常の境目が判然としない。
靴音が響く。
もう一人の自分が言う。「お前はそうやって……」
幻想の中に自分を閉じ込めた。太一も一度死んでいるのではないだろうかと思ってしまう。
ベッドに横たわるが、やはり、寝付けなかった。結局、朝まで一睡もできなかった。




