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詰め込まれた情報を整理して眠ったその翌日。

朝の身支度もそこそこに侍従らしき人間に連れられて俺は広間に引っ張り出されていた。そうかと思えば、口の端を上げるだけの不遜な笑みと共にエルが現れ、俺の手を引いた。


『好きな娘を選ぶとよい』


引き連れてきた女性数人を指し示す。

お上品で気位が高そうで、俺より大分年若い少女。俺を見て赤くなったり青くなったり、中には露骨に顔を顰める者までその反応は様々。上手く表情を取り繕おうとしている感はあるが多少は察せられる。

恐らくは、彼女たちがこの場に立っているのは合意じゃなくて強制だろう。そして俺がイケメンならまだしも、残念ながら年のいったおっさんだ。そりゃあ嫌だろうと思う。

流石に俺も無理矢理婦女子を犯すような趣味はない。盛りのついた餓鬼でもない、相手がそれなりにノリ気ではないと致すまでにいけないという確信があった。


「エル」


名を呼んでこちらを向かせ、緩く首を振った。

茜色の瞳が細められている。伝わっただろうか。


『サガラ、それが真に意味するところが妾には解らぬ。気に入った娘がいるのならば、“はい”』

「ナンヌ」

『いないのならば、“いいえ”』

「ヴァ」

『今後もそのどちらかで答えよ』


発音を教えるためだろう脳内と耳元で交互に言われる。相良、俺は名乗っただろうか、考えたくないが今後もとはどういうことだろうか、とどうでもいいことを頭の隅で思いながら一先ず自分の意思を示す。


「…ヴぁ」

『……心得た』


何か思うところがあったのだろう。僅かに眉を跳ねさせ、けれども一瞬で笑みでかき消し控えていた侍女たちを呼び寄せた。退室を促すと少女たちはほっと小さく息を吐いてぞろぞろと歩み出て行く。


その安堵に満ちた姿を見送ったところでエルに向き直る。今後、と言うのならば候補は絞らないと駄目だ。例え俺に無理矢理課せられた使命だとしても、それを全うしなければ帰れない、それならば。


「嫌がる…娘。は、連れて…くるな。わかるか?ヴぁ、だ、ヴぁ。嫌がってる、連れてくる、ヴぁ。嫌がる、連れてくる…は、ヴぁ」


身振り手振りを交えてみる。いやいやと首を振って、よよよと倒れ込む娘のフリ。それを連れて行こうとする兵士のフリ。続けてやりながら何度か言葉を繰り返しているとエルが噴出した。


『…そう睨むな。意味するところは、恐らく理解できた。望まぬ娘は不要だということだな?』

「なんぬ」

「ふっ…ナンヌ、ウィッツェルタ!」


高らかに言い切って愉快そうにくくっと笑ったエルは、重たげな衣装を颯爽と翻しその場を去っていった。

何が彼女の感情を高ぶらせたのか、よくわからないながらも伝わったのでよしとする。俺は侍従に連れられ来た道を帰った。


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