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私、ダンジョンマスターやめます! ~迷宮少女の異世界譚  作者: すてるすねこ
第二章 ひよこ村村長編(ダンジョンマスターvsダンジョンマスター)
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幕間 吾輩は

 吾輩はキングプルンである。

 名前は、ぷるるん。

 どこかで生まれたのか、魔法によって創造されたのか、とんと見当がつかぬ。

 薄暗いじめじめとした洞窟で、ぷるぷると震えていたことだけは記憶している。


 吾輩はここではじめて人間というものを見た。

 しかもあとで聞くと、それはダンジョンマスターという、人間の中で一番業の深い種族であったそうだ。


 なんでも、穴倉に潜み、獲物が掛かるのを待つのを生業としているらしい。

 人間も魔物も区別なく喰らうというから恐ろしい。

 まあ吾輩も、食い意地に関してはあまり他者を責められぬが。


 本来なら、吾輩もその狩猟を手伝う運命にあった。

 しかし吾輩を呼び出したダンジョンマスター、主人である少女は、日の当たらぬ暮らしを善しとはしなかった。

 日向ぼっこはよいものである。


 吾輩も喜んで穴倉から外に出た。

 それから吾輩と主人はさまざまな出会いと冒険を繰り広げることになった。

 冒険譚を語りだすと切りがない。

 街の人間に聞けば、吾輩と主人の活躍をいくらでも語ってくれるであろう。

 最近は吾輩も人気者であるからな。子供の間では、この黄金色の体に触れるのが勇敢さを示す遊びとなっているようだ。

 どの種族も、子供というのは突拍子もないことを思いつくものだ。


 いま吾輩は人魚の村を訪れている。

 どうやら主人が、貝や魚を食べたいと思い立ったようだ。

 奔放で、いつでも楽しそうにしている主人だが、とりわけ食に関しては拘りがある。おかげで吾輩の食事も充実している。以前に食べた毒キノコ尽くしも、ピリピリとして趣深い味わいであった。


 海というのも不思議なものである。

 これほど広大な水溜りがどうやって出来上がったのか?

 どうして塩が混じっているのか?

 ぷかぷかと浮かんで考えているだけで一日が過ぎてしまいそうだ。


 しかしこの浮くというのにも始めの内は難儀させられた。

 主人が言うには、吾輩の体は水よりも重いそうだ。よく分からぬ。

 ともかくも空気を吸い込んでおけば浮く。

 その空気を吐き出せば、海の中でも好きな方向に進むことができる。

 まあ泳ぐだけならば体を動かせばいいのだが。


 主人より習った、この泳ぐという行為もなかなかに面白い。

 人魚たちが好んで海に入るのも頷ける。

 吾輩に乗ったり、掴まったりして横着する者もいるが。


 まあよい。主人とも人魚たちは友好な関係であるようだ。

 彼女たちの狩猟を手伝ってやるくらいは苦にもならぬ。おっと、あの膨れた魚は毒を持っていて危ないのだったな。吾輩が排除しておくとしよう。

 うむ。美味である。


 さて、泳ぐ練習もよいのだが、新しい技の稽古にも励まねばならぬ。

 ぷるるんブレイカー。そう主人は呼んでいた。

 ここ最近、主人の友人がひたすらに撃ち放っている技を真似たものだ。


 真似ると言っても、吾輩は魔法というのをよく理解できぬ。そもそも呪文とやらを口にすることもできぬからな。同じ技は使えぬであろう。

 しかし魔力とやらは扱える。

 水や空気とさして変わらぬからな。こちらは吾輩の体に取り込んでも溶け難いので、むしろ扱いやすい。


 要は、魔力を集めて打ち出せばよいのだ。

 魚を捕らえるより簡単やも知れぬ。

 だんだんと、威力を出すコツというのも分かってきた。

 まだ岩塊程度しか吹き飛ばせぬが、いずれ海に大穴を空けるのも可能であろう。

 吾輩はキングであるからな。強くあらねばならぬ。

 キングとは何であるのか詳しくは知らぬが。


 さて、今日の稽古はこれくらいでよかろう。

 あとは日向ぼっこでもするとしよう。


 主人を乗せ、砂浜で佇む。

 波の音を味わいながら微睡みに身をまかせる。

 うむ。陽の匂いも心地良い。

 こうして優雅なひとときを過ごすのも、キングの務めなのであろう。








「―――っていう風なことを考えてると思うんです」

「いや、有り得んだろう。だいたい吾輩などといった偉そうな口調は似合わん」

「そこは様式美なんですけどねえ」


 砂浜に腰を降ろしていたスピアはのんびりと述べる。

 その隣では、ぷるるんも波の音に合わせるようにゆるゆると揺れていた。



参考書籍『吾輩は猫である』


ちょっと短めでした。

だって、ぷるるんが何考えてるかなんて作者にも分かりません。


次回はエキュリアvs???です。


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