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私、ダンジョンマスターやめます! ~迷宮少女の異世界譚  作者: すてるすねこ
第一章 さすらいの少女(ダンジョンマスターvsオークキング)
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閑話 一部限定、街の守護者


 領軍の大隊長の一人であるアクセルは、規則正しい生活を心掛けている。

 朝早くに起き、軽く体操をしてから走り込みも行う。鈍った体で兵士の仕事をすれば命取りになりかねない。毎朝欠かさず、アクセルは街を一巡りしていた。


「うむ。異常無し」


 陽も昇っていない時間なので、眠っている住民も多い。

 時折立ち止まっては、アクセルは民家の窓からこっそりと中を覗っていく。


「シルカ君もリミィ君もミュウ君も、元気で可愛い寝顔であるな」


 一歩間違えなくても覗きだった。

 けれど誰にもバレてはいない。なので、犯罪ではない。


 そうして街の平和、主に年端もいかない女の子たちの平穏を確かめながら、アクセルは外壁の上まで駆けていく。

 以前は、街の門で夜番をしていた兵士たちに挨拶をするのが常だった。

 最近になって順路を変えたのは、見張るべき場所が増えたからだ。


「ふむ。平穏な様子……であるのは良いことなのだが」


 北側の壁に上って、アクセルは目を凝らす。魔法によって視力まで強化して、遠方にある新しい開拓村の様子を窺っていた。

 黄金色の塊が、広い草地で跳ねているのが見える。

 村の中央にある屋敷の屋根では、大きな鷹も羽を休めている。


「やはり昼間でなければ、スピア様のお姿は覗えぬか。折角のガラス窓だというのに……あのカーテンさえなんとか出来ればいいのだが……」


 初めてアクセルがスピアを見たのは、彼女がこの街を訪れた時だ。伯爵邸へ第一報を伝えたのもアクセルだった。

 その時から、時間が許す限りスピアの姿を追っている。


 伯爵邸で美味しい食事に喜ぶ姿を見て、目を細めていた。

 庭で稽古する姿を見て、汗を拭うタオルになりたいと願った。

 勝負を申し込んで打ちのめされたラスクードには、激しい嫉妬を覚えた。自分も蹴っていただきたい!


「なんとかして御側に居たいのだが……あの村を守る新規兵団の話も止まったままであるからなあ。良い方法はないものか……」

「なるほど。悪意はなかったのですね」

「っ、!?」


 突然の声に、アクセルは振り返る。

 そこには一人のメイドが佇んでいた。銀色の瞳が冷ややかにアクセルを見据えている。


「おぬしは、シロガネ殿……?」

「わたくしのこともご存知でしたか。そういえば、エキュリア様に同行しておられましたね」


 鉱山街へスピアを迎えに行った時のことだ。

 三十名の兵士の中にアクセルも含まれていた。無論、真っ先に志願したのだ。


「妙な視線があると、ぷるるんやトマホークから報告がありました。なので確かめに来たのですが、問題はなかったようですね」

「当然だ。スピア様への愛に、悪意などあるはずもない」

「ふむ。信仰……とは少々違うようですが、敬愛というならば納得できます」


 目礼すると、シロガネは壁の外へと足を向けた。


「ですが、その目が僅かでも濁った時は容赦しません。今後の精進を期待します」


 一方的に告げて、シロガネは壁を蹴った。そのまま上空へと飛んで、あっという間に開拓村へと戻っていく。


 残されたアクセルは渋い顔をしていた。

 まさか気取られているとは思ってもみなかった。

 しかも、待ち伏せまでされるとは―――。


「完敗だ……だが、このままで終わりはせんぞ。期待通りに精進してやろうではないか。すべての少女を守る務め、誰にも譲るつもりはない!」


 昇る太陽に向かって拳を掲げて、アクセルは誓いを叫ぶ。

 紛れもない犯罪宣言。

 しかし迷いの欠片もなく堂々とした姿は、誇らしげに輝いていた。



感想欄で指摘されてましたが、バレバレでしたね。

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