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夜明けの月  作者: びるす
タイムトラベル
78/89

第十四節:トラウマと出会い

 まずたどり着いた時に感じたのは、底知れない恐怖。

なぜだかわからないが、一秒でもそこにいたくないという感情。

体は不自然に振るえ、脂汗が顔から流れるのがわかる。

 先ほどいた時代とは異なり、いきなりだったとはいえちゃんと地面に足が着いて到着したと言うのにいったいどうしたことだろうか?


「ど、どうしたんだ俺の体は」


 震えの止まらない手を見つめてみる。

握りこぶしでも作ってその震えを止めようとしても、力自体が伝わらない。

本当にどうしてしまったのだ。

 たどり着いたのは見知らぬ森。

川のせせらぎが聞こえる静かな森だ。


「とりあえず、落ち着こう……」


 立っているのもままならず、腰を落とし木に背中を預け座り込んだ。

寒いわけでもなく、病気というわけでもない。

それなのにもかかわらず震えは止まることはなく、両手でそれぞれの肩を抱く。


「おかしい……おかしすぎる。時空を飛んだ副作用か!?」


 あまりに不可解な現象に、言葉に出さねば恐怖を感じるほどだ。

それでも、出来るだけ冷静になるため、辺りを見回してみる。

 辺りは別段普通の森。

ときどき木々の間から漏れる光や、吹き抜けていく風が心を落ち着かせる。

そんな森だ。

 しかし、この森についてから震えが止まらない。

やはり、時空を飛んだ副作用なのではないか?

 頭にはそんなことばかりが浮かんだが、立つこともままならない状態では動くことも出来ず、俺は震えが止まるのを待つしかなかった。

 10分ほど時間が経つと、震えは少しずつ収まっていった。


「いったいなんだったんだろうな……」


 立ち上がり、まだ若干震える両手を見ながらつぶやく。


「こんな静かで穏やかな森についただけなのに……」


 風で揺れる木々のざわめきと、川のせせらぎだけが聞こえる本当に静かな森だ。

震えをもたらす要素など皆無である。

 首を捻り考えるも、なぜ震えるのかはわからない。

だが、それとは別に俺はここである異変に気がついたのだった。

 それはこの森があまりに静かな森だということ。

日はまだ高く、風は穏やか、そんな日の森にはかぎって鳥の声や動物の鳴き声が聞えるもの。

しかし、ここについてからはそれを一切聞いていない。

 もしかしたら偶然、聞こえなかっただけかもしれない。

そう思おうとしたが、明らかに動物の気配が森の中からは感じられなかった。


(何かに似ている……)


 心の中がなにやらもやもやする。

そのもやもやは、震え意外にも体に影響をもたらしはじめた。

強烈な吐き気。

まるでこの場にいたくないと、体が拒絶しているようだ。


「気持ち悪い……」


 震える手で口元を押さえうなだれる。

逆の手で木を支えにして何とか体を立たせている状態だ。

 頭の中はどうしてこうなったと? 混乱しか浮かばない。

そんな時、俺の耳にある音が届いた。

 その音は明らかに人が作り出す音。


「あの乾いた音は……銃声!?」


 音の大きさからしてかなり遠い。

人と会話していたら、まったく聞えないぐらいの大きさだ。

 しかし、その独特の音は以前使っていた銃の音と酷似しており、俺はその音を銃声と断定することが出来たのだった。


(何が起こってるんだ!? この森はいったい?)


 震えに吐き気、そして最後には銃声とまったく訳のわからない状況。

混乱する頭で考えるが、答えは1つだけ。

銃声の元へと行ってみる。

これだけだった。

 なかなか言うことの聞かない体に、命令しつつ俺は銃声の元へと歩を進める。

最初は方向も定かではなかったが、そのうち2発、3発と新たな銃声が聞え方向を修正していきながら近づいていった。

 徐々に近づくにつれて、銃声以外の音も聞こえ始めた。

木々をなぎ倒したような音。

そして、うなり声と怒声。

 それらはこの先で誰かが戦っていることを安易に想像させる物だった。


(こんな状態で、戦闘場所にいってなんになるんだ!?)


 心の底からそう思う。

しかし、なぜだか歩みを止めようとは思えず、1歩1歩ゆっくりではあるが確実に近づいていった。

 木々の間をすり抜け、転びそうになりながらも近づいていくと、ようやく音の原因へとたどり着いた。

そこにいたのは魔物、そして……。


(俺!?)


 木陰の影から覗き込んだその先には、地面へと転がり、体中は泥と血で汚れ、ぼろ雑巾のようになっている人物がいた。

角度的に個人を特定するのには困難を極める場所であったが、その人物の持つ武器と相対する魔物の姿から自分自身だと断定できたのであった。


(まさかこの震えは!?)


 レベアルへと視線を向ける。

すると両手は震えを増大させ、脚からは力を奪う。

 これは間違いない。

そう、俺はレベアルがトラウマとなっていたのだ。


「がは!」


 震えを落ち着かせようと、肩を抱きうずくまっていると聞きなれた苦悶の声が上がった。

声の先にあるものはやはり自分。

 これ以上に無いほどにボロボロである。

そんな俺に、ゆっくりと近づいていくレベアル。

こちらもところどころ怪我を負っているが、俺ほどではない。

 止めを刺しに俺へと近づいていく。


(このままじゃ俺が殺される!?)


 嫌な汗が流れる。

しかし、震える体は言うことを聞かず、飛び出すことは出来なかった。

だが、次の瞬間その震えが止まることとなる。


(!?)


 場所はちょうどレベアルの右側。

もの凄い殺気が放たれた。

あまりの凄さに、自分の震えを止めてしまうほど。

 殺気のターゲットが自分ではなく、レベアルだったから良かったのかもしれない。

レベアルから感じていた威圧がすべて吹き飛んだのだから。

 そんな凄い殺気を全部受けたレベアルというと、殺気の方角を見つめわずかに震えている。

俺のように震えで体が崩れないのは、さすがSSといったところだろう。

 けれどその震えとよそ見が命取りになることを俺は知っている。

たしかあの日の俺はこのチャンスを逃すことは無かったのだから。

 破れた雑巾と大して変わりない体に鞭をうち、左手のソードパーツをよそ見しているレベアルの胸へとめり込ませる。

 そして振り絞るように、トリガーを引く。

表情は苦悶、声にならない声が聞こえてくる。

それでも俺は指を動かし撃った。

そう、撃ったのだ。

 森の中に乾いた発砲音が6回鳴り響くと俺は意識を手放したのか、必死にレベアルと密着させていた体を重力にまかせてだらりと地面へ落下させた。

 ここまでは予定通りである。

俺は6発の弾丸を撃ちつくし、意識を失った。

 つまり、ここで決着がつかなければ俺は死んでしまっているはずなのだ。

しかし、レベアルは死んでいない。

俺と共に崩れ落ちようとしたが、踏ん張りその場で俺に止めを刺そうとしている。


(今しかない!)


 自分を助けるには今しかない。

俺はそう思い、剣を抜いた。

幸いなことに、レベアルから受けたトラウマによる震えは、先ほどの謎の殺気により消えている。

距離は少しあるが、奴が仕掛ける前には切りかかれるはずだ。

 自分で自分を助ける。

なんともおかしな話であるが、今ここで過去の自分が死んでしまっては今の自分はありえない。

 抜き放たれた剣を構え、俺はレベアルの元へと1歩踏み込んだ。

けれど歩みはその一歩で止まる。

なぜか?

別に、レベアルのトラウマが再発したということではない。

 では何なのか?

それはすでにレベアルが、1人の男の長剣により斬られていたからだ。


(早い!!)


 男がレベアルを斬ったのは本当に一瞬の出来事だった。

何せ俺が1歩を踏み出す動作をする間に、男はレベアルに近づき剣を抜き放ち、そしてレベアルにとどめの一撃を浴びせたのだから。

 エマやジェシー、彼女達の動きも早いが、レベアルを斬った男の速さは別格であった。

彼の速さを比較して最も近いのは、ギルバーンで戦ったシュウと言う男が見せた一閃を出したときの動き。

そして形として近いのはまさしく、居合いであった。

 男に斬られたレベアルは、それが致命傷になりさすがに現世に自分をつなげておくことは出来ず、その巨大な体を地面へと転がす。

 一方その男はと言うと、倒れている俺を一瞥した後、こちらへと視線を向けた。


「でて……きたら?」


 低すぎない声。

民衆の中で声を出したら、すぐさまかき消されそうなそんな声で合ったが、その独特のしゃべり方はしっかりと耳に届く。

 俺は男にいわれるがまま、隠れていた木々の間から姿を出した。


「よく……がまん、した」


「?」


「これ、一対一……横槍ダメ。けど……俺、我慢ダメだった」


 男の言葉に小首を傾げると、説明を男は口にした。

どうやら、先ほどの戦闘は男の中でレベアルと俺との一騎打ちということになっていたらしい。


「いやいやいや、一騎打ちとは違うだろう。助けて正解。じゃなきゃそいつ死んでるだろ」


 自分を指差して話す。

なんとも不思議な体験だ。


「そう……かな?」


「そうだとも!」


「なら……よかった」


 男はふと笑みをこぼす。

 それにしてもこの男、いったい何者なのだろうか?

先ほどの一撃を見る限りでは、少なくともSランク以上の実力者だ。

そんな男がこんな森にいったい何しにきたと言うのだろうか?


「なぁあんた?」


「オズラード」


「はい?」


「名前、皆……オズ呼ぶ」


 自分を指差して男は話す。

思わぬ切り替えしに、少し呆然と男を見てしまった。

 この男、背格好からして俺と同じか、少し上ぐらいなのだが、自分を指すそのしぐさはどこか子供っぽく見える。

顔が美形と言うのもあるだろうが、おそらく彼の瞳がそれを感じさせているのだろう。

その澄んでいてまっすぐと見つめる黒い瞳が。


「な、名前な。俺はアキラ、アキラ=シングウ。皆そのままアキラって呼んでる」


「わかった……アッキー」


「アッキー!?」


 俺の驚嘆する顔をまっすぐ見つめつつ、オズと言う男はコクリと首を縦に振る。

しゃべり方も変わっているが、まさか愛称をつけるとは……。

 オズはうなずいた後、何事も無かったかのように俺へと背を向け歩き始めた。


「お、おい、オズラード」


 急な行動にまたビックリした俺は、彼を呼び止める。

すると、願いが通じたのか、彼は足を止めこちらへ振り返った。


「オズ」


 しかし、振り返った彼からは予想外の言葉しか出てこない。

どうやらフルネームが気に入らないのか、自分のことを指差し愛称のほうを告げると口をへの字に曲げた。


「わ、わかった。オズな」


「うん」


 俺がオズと呼ぶと彼は満足そうに首を縦に振り、また歩みを進めようと振り返る。


「って、いくな! オズ!」


「どう……した?」


「どうしたって……お前があの魔物に止めを刺したんだろ? だったらあの魔物の殲滅証明部位を取っていってもいいだろう?」


「いら……ない……。俺……傭兵違う」


「いらないって、て!? 傭兵と違う!? あの強さでか!?」


 レベアルを指差していた手は、驚きのあまりオーバーリアクションの材料として使われ、大きく振られた。

 傭兵は様々なカッコウのものがいるため、人目で判断しにくいが、それでもオズがもつような得物を携えていれば、この世界にいる人間は10人中10人が傭兵だと応えるはずである。

それなのにもかかわらず、オズのような戦士がいったいどんな職業をしているというのだ。


「それに……それは、あの人の物。俺邪魔した。取る資格……無い」


 そういい終わると、今度こそ振り返ることなくオズは歩みを進める。

まったく持って変わった奴だ。

 そんなことを思いつつ、オズの見送りをしていると、なにやら自分達以外の人の声が聞えてきた。


「アキラーーー!! いたら返事しなさい!」


 声の主はエマ。

どうやら救援をつれて戻ってきたようだ。


(まずい……ここにいたら鉢合わせになりかねないな。どうするかな)


 この時、小さくなり始めたオズの背中を見てひらめいた。

俺が入院していた時にたしかエマに病室でほかに誰かいなかったか尋ねたはずである。

その時の答えは誰もいない。

つまり、エマはオズとも会っていないはずである。

 俺は徐々に大きくなる声から遠ざかるように、オズの後を追っていった。

 オズの後を追い、追いついてからは並んで歩くようになった。

なぜ追ってきたのかという質問をされるのかと思いきや、オズはそんな素振りを見せず黙々と歩いていく。

 そして、道のりにして2キロぐらい歩くと、町とは別に小さな一軒家が見えてきた。

 煙突付きの赤い屋根と、四角い窓がある白い壁、ところどころ色あせてはいるが、ちゃんと修繕しているのかボロというイメージは無い。

外には細長い棒を地面に挿し、縄を張った簡易的な物干し場所があり、そこには洗濯物が干されていた。


「あれ……俺家。来る」


「来るっていいのか?」


「いい。姉さん喜ぶ」


 自分の家だと主張するオズに連れられ、家の前まで案内された。

そしてオズがドアノブに手を掛けた瞬間それが、待っていた。

ゴツ。

 固いもの同士がぶつかったときに出る低い重厚な音が、オズの額とドアによって生み出された。


「あら? まぁまぁ大変。オズ君大丈夫?」


「大丈夫。慣れ……てる」


 家の中から出てきたのは、女性。

オズが姉がいると言っていたのできっとこの人だろう。

 オズの姉は、腰の辺りまである長い髪と少し垂れた目が印象的な人だった。

色は彼と同じでそれらは黒色をしている。

また彼と姉弟であるため、顔の作りはかなりの美人で、町に出かければきっと何人にも声を掛けられることだろう。

 そんな彼女が、オズの額を撫でるのに爪先立ちになっているのはなんともほほえましい。


「ねぇさん……アッキー」


 オズは撫でられながらも俺に左手を向けて紹介する。


「どうも」


「あらあらあら、オズ君の友達なんて何年振りかしら! アッキーさん。ずっと友達でいてくださいね」


「は、はい」


 近づいてきたオズの姉は俺の両手を手に取ると、澄んだ瞳と満面の笑みで見つめる。

これは言えない。

友達じゃなくて、エマ達に見つからないために彼についてきた赤の他人だなんて絶対に言えない。

 少し冷や汗を流しながら、視線をオズへと向ける。

すると意外なことに彼から助け舟が出た。


「ねぇさん……アッキー困ってる」


「あっ! ごめんなさい。ついうれしくて。そうだわ。良かったら中でゆっくりしていって下さい」


「いえ、そのそこまでしてもら…………お言葉に甘えさせていただきます」


「良かったわ~! それじゃアッキーさんは中でくつろいでいてください。オズ君は裏のポロの実を少し取ってきて」


「わかった」


 さすがに家に案内されるのはと思い断りの一言を口にしようとすると、オズの姉の顔は見る見る険しくなり、1文字ごとに目にためる涙の量が多くなっていった。

そのため、断ることが出来なくなった俺は素直に家の中に案内されることに。

 すると、先ほどまで目にたまっていたものはなんだったのかと思うほどの笑顔を振りまきつつ、彼女はオズに指示を出し、自分は俺と一緒に家の中に入っていった。

 家の中は綺麗に掃除されており、誰かさんが泊まった後の宿屋の一室とは大違いである。

その誰かさんとは決してエマのことではない。

決して。

 案内されたのは、キッチンが見えるリビング。

食事を作っているところを見ながら、くつろぐそんな空間。

そんなリビングの中央にはテーブルと椅子が2脚。

来客が少ないのか、自分達用の椅子だけしか置いてないようだ。

彼女の喜びようからそのことは安易に想像できる。

 俺はその椅子の片割れに座るように促され、腰を落とした。


「少し待っててくださいね」


 そう言ってオズの姉はキッチンに向かいお茶の準備をしてから、違う部屋へと行ってしまった。


(なんとも気まずいな)


 なんともいえない空気の中、テーブルの上にある、花瓶に活けられた花を見つつ彼女の帰りを待った。

少しと言ったので、すぐに戻ってくると思っていたがそれよりも早くオズがこのリビングに顔を出した。

手には彼女に言われて取ってきたポロの実入りのバスケットを持って。


「ねぇさんは?」


「えっとあっちの部屋に」


 バスケットをテーブルに置きながら、辺りを見回すオズに俺がドアを指差して教えてやると少し考えた後、何かひらめいたのか手をポンと叩きすぐにそのドアを開けた。

ドアの先には、椅子を持ったままドアノブを回そうと奮闘しているオズの姉の姿があった。


「あっ! ありがとうオズ君」


「ねぇさん。置いてから回す」


「なるほど!」


 にっこりと笑うオズの姉。

なんだろうか、一言で言うならばとても温かい人のようだ。

 オズは姉から椅子を取ると、そのままテーブル前に自分の席として置く。

姉のほうはそんなオズにありがとう一声書けると、そのままキッチンに向かいお茶をいれテーブルへと運んでくる。


「アッキー……ねぇさんのシルメリア」


「どうもアキラです。よろしくおねがいします」


「はいこちらこそ。オズ君ともどもよろしくおねがいします。アッキーさん」


 お茶の入ったカップを受け取ると、またもにっこりと微笑むシルメリア。

 それにしても本当の名前を告げたと言うのに、呼び方はアッキーで固定なんですね。

などと思いながら、俺はオズの家で数時間過ごすこととなる。

 最初は、ほんの少しこのカップに注がれたお茶を飲み干したらおいとましようと思ったのだが、シルメリアだけでなく意外にもオズもおしゃべり好きなのか俺を放してはくれず、結局日が沈むまでたわいもない世間話に花を咲かせることとなったのだった。

 途中、この2人の前で転送されては大変だという思いから、隙を見て指輪を外していたので、今のところは転送される心配は無い。


「あ、そろそろ俺帰ります」


「え~~~! アッキーさん。泊まっていけばいいじゃないですか」


「アッキー……泊まる」


「いえ、そこまで迷惑をかけるわけには行かないので、今日は帰ります」


 本当に残念そうに呼び止めてくれるシルメリアとオズ。

だからと言ってここで引いてしまえはずるずる彼らのペースには待ってしまうことは目に見えている。

 俺自身ここにいたくないわけではないが、それ以上に元の時間へと帰りたいのだ。


「そう……残念ね~」


「残念」


「それじゃ、俺はこれで」


 あからさまにしょげているオズ達に、手を振って席を立つ。

するとそんな俺に顔を上げこんな質問をしてきた。


「今度……いつ会える?」


「ん~……」


(たしか、俺はこの後1ヶ月入院して、その後ギルバーンに出て……)


「3ヶ月以上先かな。ちょっと立て込んでるから」


 本当ならもっと早く会いたい気もするが、いろいろ考えると彼等と会えるのは単純に3ヶ月以上は先なのである。


「そんなに……」


「わるいな。けど今度はすっごいお土産持って、俺の仲間と一緒にここに来させてもらうよ」


「ぜったい、絶対ですよアッキーさん」


「えぇ必ず。それじゃまた」


 そう最後に残し、俺は彼等の家を出た。

オズ達も見送りと言った形で、家の外に出ては俺の姿が森で見えなくなるまで手を振って別れを惜しんでくれていた。

 なんとも奇妙な出会いであったが、これはただの出会いではないと俺は確信している。

なにせ命の恩人にあったのだから。


「さて、それじゃそろそろいいかな」


 俺は今度彼等にあった時にしようと思う、お礼のお土産を考えつつ、ズボンのポケットにしまわれた指輪を取り出すと、左手の小指へとめ新しい時代へと旅立っていった。


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