第一節:セリアからの依頼
シリウスト領での新しい産業であるセメント作り。
これが軌道に乗り始めたころ、ある1つの依頼が俺達夜明けの月に舞い込んできた。
依頼主はなんと、セリア姫。
彼女直々の手紙は、封蝋がされており正式な依頼であることが伺えた。
そんな手紙に書かれていた内容はこうだ。
貴君らの働きにより、バウラス領の水不足、シリウスト領の経済、奴隷商人の確保などさまざまな分野において、助力し、解決に導いたことについて国を代表として心から礼を言う。
本来貴君らには我が城へと来てもらい、褒美を取らせたいところではあるが、恥ずかしながら我が国は今重要な公務が滞っているため、それがかなわぬ。
そればかりか褒美を取らせなければいけない貴君らに、依頼しようとする私を許してほしい。
私の依頼というのは、迷わずの森へ出向き、調査に当たってもらいたいというものだ。
貴君らの中には聞いたことがある者もいると思うが、一応軽く説明しておこう。
迷わずの森とは、シリウスト領の遥か西にあり、国境近くの森である。
名前の通りこの森で迷うものはいない。
なぜならば、不思議なことに森に入り歩いていると決まって同じ場所に出てしまうからだ。
この森は、建国当初からあり、毎年国で調査隊を送り原因を究明しようとしているが、依然として解明されてはいない。
おそらく後何十年経とうとも、このままでは解決することはないと思われる。
そこでだ、数々の問題を解決してきた貴君らの知恵で、森の謎を解明してほしい。
もちろん成功するに越したことはないが、長い年月をかけて我々が調査し失敗してきたものだ、簡単に解決することないであろう。
むしろ失敗する可能性のほうが大きいと思われる。
だが安心してほしい。
失敗したとしてもそれなりの報酬を出そう。
それで調査についてなのだが、森の近くに村があるのでそこを拠点として行うといいだろう。
森についてはその村の村長がよく知っているので話しておくといい。
それと調査の期限だが、とりあえず1ヶ月、その期間でわかった秘密をすべて私に報告してほしい。
それでは貴君らの成功を祈る。
追伸、アキラ、用がなくても遊びに来い。
ゼルバが寂しがっていたぞ。
「絶対うそだ……」
手紙を読み終えた後俺の口からは自然とその言葉が漏れた。
そんな手紙が届いたのが10日ほど前。
現在俺達はセリアの依頼を受け、ジェシーの実家から迷わずの森近くの村へと来たのだった。
別にこの依頼は受けなくてもよいと、手紙が届いた後セリアに連絡を取った時に言われたのだが、手紙と一緒に送られてきた前金100ガルンに目がくらみ俺達は依頼を受けることが決定。
正式に依頼が決まると、前金にもらった100ガルンを使い武器や防具を改造または新調するとことから始まった。
なぜかというと、セリアが調査場所の迷わずの森近くの魔物は、1ランク分ぐらい強いと言ってきたためだ。
この話を聞いた時、俺以外の夜明けの月のメンバーは首をかしげていた。
それはなぜか?
後で聞いてわかったことなのだが、魔物は生物学では完成された生物と呼ばれており、どこの地域へ行ったとしてもほぼ同じ強さで、環境の影響を受けないというのが一般的見解だそうだ。
中にはそれには属さず異端な奴がいるらしいが、非常に稀で傭兵をしていても一生に一度会うかどうからしい。
(その一生に一度を俺はもう体験しているわけなのだけれども……)
俺から言わせれば環境の影響を受けない生物などいるのかと逆に疑ってしまったのだが、魔物についての研究は人類の存亡にかかわるため熱心に行われており、魔物が環境の影響を受けないというのも長年の研究で結論付けられたものだそうだ。
それならばなぜ、迷わずの森近くの魔物は同じ種類の魔物でも強さが抜きんでているというのか?
セリアにそう尋ねると、『それも調査対象の1つじゃ』とのことだ。
まぁそんなわけで、魔物が強いということを踏まえ、自分達の強化を行うことになったのだった。
まずはエマ、ナイフ1本と投げナイフを少しだったものを、ナイフを2本にし両手で扱うように、またナイフの柄には丈夫で細い皮製の紐がつけられた。
紐がつけられた理由としては手持ちのナイフを投げナイフとして使い、そのナイフの回収のほか、紐でつながっていることでできる、投げたナイフの操作、また紐での絞殺等、戦術に幅を持たせるため。
この紐の長さは大体3メートルほどで、普段は手の平に巻いて滑り止めとしている。
ハンスは、今出ている紐の部分を50センチぐらいにして、後の残りを柄にしまえるようにし、ひっぱれば伸びるように改良したいといっていたが、果たしてできるのだろうか?
防御面では、ジェシーのつけているものと同様の鉄の胸当てを装着した。
続いてリオ、もともと攻撃力は夜明けの月ナンバー1であったが、より攻撃面に特化するため俺のハンマーパーツを改良し、ハンマー専用にしたグローブが作成されそれが彼女の新しい武器として加わった。
ハンマーが加わったのは本人の希望によるものだ。
そのグローブは俺のように付け替えができるようなものではないため汎用性は劣るが、ハンマー専用に作られたそれは小型化、軽量化することに成功し、より扱いやすいものとなった。
このハンマーグローブにより、中距離からの強力な攻撃手段をリオは得る。
ただし、ハンマーグローブをつけながら大剣は振れないので、普段はカウボーイの銃のように、グローブはリオの腰の部分に装着されている。
でもリオならばもしかしたら片手であの大剣を扱いながら、ハンマーを振り回すなんてことができるようになるかもしれない。
攻撃をとことん強化したリオだが、防御面は一切強化せず。
大剣のほかに、ハンマーグローブを持つため、重量が増しこれ以上の増加はさすがのリオも動きに支障をきたすと判断したためだった。
次にジェシー、彼女の強化はハンスの発明のアイテムによるものとなった。
もともと軽い剣しか扱えない彼女に、武器の変更または改造は逆にマイナスになると判断されたためだ。
そんなジェシーに渡されたのが、一言で言えば爆弾である。
これはバクロの実を粉末状にし、木炭や硫黄などを混ぜ固めた後、起爆用の薄い鉄の球体に入れられたものなのだが威力は非常に高い。
細い木ならこれ1つで吹き飛ばすことができるぐらいだ。
この爆弾をジェシーは10個ほど所持している。
一見誰にでも扱える武器だと思うが、起爆の時間の把握や、威力の範囲など短時間でそれらを完璧に理解できたのがジェシーだけであったため、彼女が持つこととなったのだ。
それと防御面に関しては、これ以上重くすると彼女の真骨頂である避けて急所を突くという動作ができなくなるため、胸当てを叩きなおすだけにとどまった。
さて次はリット、彼はリオとは逆に攻撃面の強化は一切されることはなかった。
その代わり、防御面が飛躍的に向上することに。
肘、膝等、要所要所に鉄のサポーターが付けられ、胴体はエマやジェシーが身に付けている胸当てとは違い体全体を包むしっかりとした鎧を身にまとう。
また小さいながらも彼の左腕にはバックラーのような盾が装着され、守りながら戦うことができるようになった。
最後に俺の装備なのだが、基本的に防御面はリットと同じである。
全体的に保護しなければいけない部分に、鉄のサポーターが当てられ胴体は鎧を身にまとう。
ただ1つだけ違うところは、左手にバックラーがつかない点。
けれど代わりにグローブにつける盾があるので、リット以上の防御力を誇っている。
防御面としては大体こんな感じだ。
攻撃面に関してなのだが、先ほど言ったとおりリオにハンマーパーツを譲渡している。
これは悲しいかな、俺よりも彼女のほうが扱いがうまかったため彼女の武器の材料に……。
これにより攻撃力がダウンと思われるかもしれないが、ハンマーパーツよりも強力な武器を実はハンスが作ってくれていた。
形状はグローブを大きくするだけのようなパーツなのだが、そのパーツの先端に拳大の丸い穴が開いている。
実はここにはジェシーの持つ爆弾と同じ材料を使って作られた、大砲が仕込んであるのだ。
形状上放てるのは一発のみだが、その威力はすべての武器の中で断トツの性能を誇り、鋼鉄をゆがませ、時には貫通させるほど。
ただし、重量は重い上、反動がひどく、扱えるとしたら俺とリオのみだろう。
扱えるとはいっても、あまりの反動に腕の筋繊維がいかれ、回復力が普通なリオに撃たせるのは非常に危険であるため、俺専用武器といって過言ではない。
また撃った後は、パーツ自体歪んでしまうので単発式の一回ポッキリ、下手するとグローブの接続部分も歪んでしまう。
そんな使いどころが難しく、扱いにくい武器ではあるが、それを補って一撃必殺というロマンがあるので俺は気に入っていたりする。
ほかのパーツは手入れをしたぐらいなので、武器の変化はこれぐらいだ。
そんな感じで装備が整った後、シリウスト家の屋敷を出て調査へ向ったのだった。
村へつくとセリアに言われたとおり、早速村長に会うことにした。
ただし全員で押しかけるのもなんなので、俺とエマだけで面会することに。
俺達が話しを聞いている時に時間の空くほかの連中は、旅で消費した道具などの補充を担当することとなり、俺達は2つのグループに分かれたのだった。
そして村の奥まで進むと、ほかの家と同じ木造ではあるが一回り大きな家へとたどり着く。
「ここが村長の家みたいね」
「そおっぽいな。すいません、セリア姫の使いできたものですが」
家のドアの前でエマと村長の家であることを確認した後、家の中まで聞こえるよう少し声量をあげ自分達がきたことを伝える。
しばらくすると、中からは人の気配が感じられるようになり、それが徐々に近づいてくると目の前のドアが開かれた。
「おう、話は聞いてる。中に入ってくれ」
中からは白髪で立派な白髭を携えた筋肉隆々のマッチョな長老が、ニカッとした笑顔とともに出迎えたのだった。
そんな長老の出迎えから数秒、俺達は村長宅前で立ち尽くしていた。
目の前の男性の姿が、村長という役職で想像される人物の格好とあまりの違っていたため、そのギャップに驚きを隠せなかったのだ。
俺は村長という者は、年老いて弱弱しい老人だとばかり考えていた。
俺と同じように立ち尽くしていたエマもきっとそう考えていたに違いない。
しかし、実際はどうだろうか?
確かに老人ではあったが、上半身に軽いシャツを1枚着ただけの姿は、惚れ惚れするくらいの筋肉の鎧に包まれており、体格も俺の体よりも一回り大きい。
また、肌も老人のそれとは違く、張りがあり、黒光りするつやまでもあった。
彼が俺達の村長という認識の中で唯一当てはまっていたことといえば、年をとった証である白髪と、その長い白髭だけであったのだ。
「ほれ、いつまでそんなところに突っ立ってんだ? 中に入らんか。あぁそうそう入るときは靴を脱ぐようにな」
「……あっ、えぇお邪魔します」
「お邪魔します」
ドアをあけてから一向に動かなかった俺達を不思議に思ったのか、村長はもう一度家の中に入るように俺達を促した。
その声を聞き、ようやく思考が動き出した俺は、視線を村長の体から顔へと移し、焦りながらも家へと入る。
エマも俺と同じような感じではあったが、先に俺が口を開いていたためおかしな言動を言うことはなかった。
村長に言われたとおり、玄関と思わしき場所で靴を脱いで家へと上がり、前を進む村長のあとをつける。
廊下はフローリングのようになっており、靴下が微妙に滑った。
歩いて3つめの引き戸まで来ると村長はその戸をあけ、俺達を中に招き入れた。
中は廊下と同じようにフローリングではあったが絨毯を敷いてあり、寝転がっても痛くないようになっている。
また、その中央には囲炉裏のようなものが存在しており、お湯が沸かされ茶の準備がされている。
さらにその囲炉裏を囲むように、絨毯の上には座布団のようなクッションが置かれ、より快適に座れるようにもなっていた。
「とりあえずそこに腰をかけてくれ。慣れないと落ち着かんと思うが、床に寝転がるというのは案外いいもんだぞ」
「そうですね。エマはどうか知りませんが、私の住んでいたところでは家に入るときには靴を脱いで、床に寝転がったりする習慣があるので、なんとなく懐かしい感じです」
「私は……初体験だわ」
俺とエマは村長に言われるがまま、そのクッションに座りあぐらをかいた。
クッションは予想以上にやわらかく、床が木であることを忘れさせる。
「おっと挨拶が送れたな。俺がこの村の村長をしていハンセンというものだ」
「私は夜明けの月の副団長をしているアキラというものです。こっちがその傭兵団の団長のエマです」
「よろしくお願いします」
村長に俺がそうやって説明すると、エマはいつもの態度とは一変した感じで礼をする。
とりあえず彼女の一般教養が、まだ抜けていなかったことに安堵した。
「それで、お前達が来たのは迷わずの森の調査で間違いないんだな?」
「ええ、間違いないです」
村長の声には俺が受け答えをする。
ザマス夫人の件から交渉ごとは俺が行うことになったので、エマは俺達の話を聞くだけである。
頭の良い怠け者が指揮者には一番向いている。
昔こんな話を聞いたことがあるが、エマを見ているとその説は正しいと感じさせた。
まぁそんなことはおいといて村長との話を進めるとしよう。
「そうか、それじゃ1つ質問していいか?」
「えぇいいですけど、なんですか?」
「なに、たいしたことはない。お前さんがたのランクを聞きたいんだが」
「私達のランク?」
「そう、ランクだ。で、いかほどだい?」
話を進めていくとランクについての村長から尋ねられた。
別段俺達の傭兵団はランクが低いというわけではないので、すんなりと答える。
「戦闘員は5人ですが、一応全員がBランク以上です。団長のエマだけはAランクですが」
「なるほど、そうかそうか、ならあんたらはCランク以上の魔物とやりあわないことだな」
質問に答えた後、村長が口にした言葉は予想以上のものであった。
事前にセリアから情報を聞いてはいたが、まさかそんなにランク差が出るものなのかと聞き返したくなる。
俺は村長の台詞が何から来るものなのか確信するために口を開いた。
「それは……魔物の環境変化が原因ですか?」
「あぁそうだ、姫様から聞いているかもしれないが、迷わずの森周辺の魔物はなぜか魔物の概念を覆し、ランク以上の力になっている。こいつはDランクだから楽勝だななんて甘い気持ちで挑んで、返り討ちにあった奴らなんて数知れず。だから悪いことは言わん。俺の指示通り、お前らはCランク以上とは戦うな」
村長の言葉は、今度は予想通りの反応を返してくれた。
それにしてもいくら強いとはいえ、Cランク以上とはいささか自分達を過小評価しているのではないかとおもう。
だが、俺はそのことは口にせず、森の魔物がどのようなものなのか尋ねるのだった。
「はぁ、ちなみに迷わずの森近くの魔物はどんなのが出るのですか?」
「大抵がBランクの魔物だよ。まぁそれより下の魔物もいるし、上の魔物もいるがな」
「ちょっと! それじゃほとんど調査できないじゃない!」
エマが声を荒げながら口を開き村長にくってかかった。
今まで自分達を過小評価したことは我慢していたのだろうが、依頼をこなすことはできないと言われている事と同意義の言葉を投げかけられては口を挟まなければ気がすまなかったようだ。
しかし、村長はそんな態度をとったエマに対して、客人である俺達に対して茶を入れながら冷静に対処する。
「あぁそうさ、ほとんど調査できん」
そんな村長のそっけないような口ぶりとは対照的に、その台詞にはなにやら彼自身の遺憾の思いが隠されているように感じてならなかった。
エマも俺と同じようなものを感じたのだろうか、彼の言葉に対してそれ以上口にすることは無く、彼が茶を俺達の目の前へと差し出すまで沈黙が続いた。
しかし、このままでは話が進まない。
俺は村長の差し出したお茶で喉を潤し、沈黙を飲み込むと、口を開いた。
「…………つまり、今まで調査が進んでいない原因の1つということですか?」
村長は残念そうな顔をしながら、肯定した。
「そのとおりさ、お前達もわかっていると思うがSランクを超えるような連中はこの国にほとんどいない。そこの嬢ちゃんみたいなAランクだって稀だ。なのに迷わずの森周辺の魔物ときたら……。この村は森について調べるために作られた村だが、森に行くには半日は歩かねばならない。それはいままでのことをふまえればわかるだろう?」
「ここが迷わずの森の影響を受けない最も近い場所ということですか?」
俺が村長の質問に答えると彼はコクリとうなずいた。
「そういうことだ。あの森の魔物は王国の騎士でも苦戦を強いられ、へたすりゃ命も落とす。だから俺の指示に従って、お前らはCランク以上とは戦うな」
村長の話が終ると、彼は自分用に注いだお茶を口にする。
その行動はこれ以上はなすこと話すことは無いと言う意思表示にも見えた。
「村長の言うことはわかりました」
「おぉ、そうか。それじゃ気をつけて……」
「ですがお断りします」
村長に俺はにこりと笑いかけた。
普通ならばここの台詞は、『気をつけます』などなのだろう。
だが俺の台詞は違っていた。
否定の台詞。
そんな予想外の台詞を言われた村長は今までの話は聞いていたのかと疑うような目をしながら立ち上がり、こちらに顔をぐいっと近づけ、俺の顔の正面で口を開けた。
「おい! 俺の話を聞いてたのか!?」
「もちろん聞いてましたよ。その上でお断りします」
じっと目を見つめられた。
俺は内心では焦りながらも、その目をしれっと見返した。
数秒後、村長は目を閉じ元の位置へと座りなおし、ふぅと息を吐き出した。
「なぜだ? お前らは死にたいのか?」
その問いかけに、俺は素直に答える。
「死にたいわけじゃありませんが、俺達は傭兵で依頼を受けた。その上で邪魔となるものは排除しなきゃいけません。ですからもし調査中にCランク以上の魔物が攻めてきたら戦います」
村長に俺の意思を伝えると、今度はエマが口を開き、俺が言いたかったことの補足をしてくれる。
「もちろん死ぬ気は毛頭ないわよ、だけどわざわざ装備を強化してまでこっちに来てほとんど仕事できませんでした~って感じで帰るのが癪なだけよ。もっとも本当に危険と判断したら逃げるから大丈夫よ」
「けれどお前達じゃCランク以上の魔物は危険がな……」
俺とエマの話を聞くと、ある程度は納得したのだろう、村長の勢いが弱まった。
だけど納得はいっていないようで、このままでは歯切れが悪い。
エマもそう思ったのだろう。
村長を納得させるため、追い討ちをかけた。
「その点は大丈夫よ、こいつがいるから。傭兵初めて1週間と立たないうちにSSランクのレベアルを撃破し、その後ギルバーンに出場してはBランクでありながらSランクの猛者を倒し、さらに現在最強とされる傭兵団の一員であるシュウと10分以上戦った実力者。それがうちの副団長のアキラなのさ」
エマは話しながら俺の背を叩き、一押し商品のように俺の実力を村長に説明する。
彼女に褒められることはあまりないため、このように自分を売り出したことは微妙にうれしかったりするが、誤解を招くような言い方が俺の気持ちに気まずさを生んだ。
しかし、事実無根というわけではないため、頬をかきながらも村長をまっすぐ見据える。
すると先ほどのように、じっと目を見つめられる。
「最初はどうかと思ったが姫様が送ってきた人物だ、ただものではないってことか。そんなちっこいなりでたいしたものだ。……でもこいつだけがすごくてもな~」
見つめられた村長はどうやら俺については納得したようだ。
しかし、納得する一方で、それだけではという声も上げる。
それにたいし、エマはすかさずたたみかけた。
「その点は大丈夫よ。さっきも言ったでしょ? 私達は死ぬ気がないって。本当に危なくなったら言われたとおり、こいつを盾にして逃げるから」
「おい!」
エマは俺をぐっと引き寄せて、村長に対して盾として扱うようなしぐさをして見せた。
確かに俺は盾にも殿にはもってこいの人物だと思うが、トカゲの尻尾きりみたいな言い方をするなという意味を込めつつ、ぺしりと突っ込みを入れる。
もちろん本気ではないことがわかっているので、力を加減しつつ。
すると、その動作が面白かったのか村長が、大きな体を揺さぶりながらこれまた大きな口で大きな笑い声を上げた。
「がはははは、ずいぶんと団長さんに信頼されてるじゃないか!」
バンバンと二回ほど肩を叩かれた。
俺以上に体が大きいため予想通り力が強い。
多少痛みを感じたが、なんだか村長のその行動は嫌な気はしなかった。
「はぁ、信頼なんですかね」
「えぇ、信頼よ」
「本当かよ!」
エマにもう一度突っ込みを入れる。
すると村長はもう一度大きな笑いをあげたのだった。
村長は自身の笑いが引くと、念のためということだろう、もう一度俺達に注意を払うよう伝えてきた。
「とりあえずお前さんたちの実力はある程度わかったが、本当に気をつけろよ? 戦ったことがあるからって同じと見ていると痛い目にあうからな」
「心しておくわ」
今度は素直にその忠告をエマは受け入れた。
俺も村長に首を立てに振り、気をつけることを約束する。
その後は、森についての話を聞き、迷わずの森の知識を獲得していった。
そうしているうちに日は傾き始め、白色の光に赤い色がつき始める。
時間が過ぎさり、森についての情報があらかた出尽くし、世間話に切り替わってきた頃、村長がこう問いかけてきた。
「それでお前らはこれからどうするんだ? 今から行っても危険なだけだぞ?」
「そうですね。それじゃこの村に一泊して、朝早く発とうと思っています」
「そうか、ならお前らうちに泊まれ」
村長の質問に答えると彼からありがたい提案をうけた。
囲炉裏の火をいじりながら何の気なしにその提案を出した村長に、本当にいいのかどうか俺は尋ねる。
「いいんですか?」
「あぁ、たいした馳走を出すことはできんがな」
「それじゃ……」
社交辞令ではなく、好意で俺達を止めてもらえることを確信した俺は、エマの顔をちらりと見て彼女に泊まるかどうかの采配をゆだねた。
采配をゆだねられた彼女は腕を組んで悩んだかのように見せた後、笑顔を作りぐっと親指を立て答えを出す。
その答えを受け、俺は村長にこう告げる。
「甘えさせてもらいます」
「おう!」
こうして村長の大きな一声とともに、俺達の今日の宿泊場所が決まったのだった。