彼の評価
頑張れシュトロボフ君
「えっと……これはいいだろ……こっちはまとめて……これこんなにあんの?」
カムイワッカのギルドホール。そこの空き部屋に、机、椅子、羽ペン多数に、インク複数、判子を持ち込んで、運ばれてくる書類やらに眼を通し、サインや判子を書いたり押たり、書類を仕分けてと処理する人、一人。始動したばかりだが、書類の山が一つ二つと出来上がり、さらにギルメンが新たな物を持ってくる。
(ハメやがったな。クソジジイ!!)
「若、追加です!!」
「若これも、お願いします!!」
「そっち置いといて、これは終わったから持ってって!」
「はい!」
眼を回し、涙眼で文句心で念じれば、ドアがバン!と押し開き、また新たな山を作りにやって来る。一つ終わらせても、すぐに白い山、柱が運ばれて来てその光景に頭を掻きむしる。処理した山を運び出させても、次がまたやって来る。見積もり、決算、追加の書類に、報告書。処理しても処理しても終わらない。
「大変そうですね……ギルマス……はい、追加です」
「……お前も手伝え……プーシ……」
「手伝いたいのは山々ですが……現場監督も必要なので、すいません」
先にいたギルメンと入れ違いに、書類と一緒にシュトロボフを冷やかしにプーシがやって来る。追加と言う言葉に、ペンを持つ手に力が入り震え、普段聞かない口調で話、プーシに手伝えと、口以上にもの語る眼で迫る。その様子をとても楽しそうに悪戯を成功させた子供のように笑いその様子をあからさまに楽しんでいる。シュトロボフはそんな彼を冷めきった眼で尋ねる。
「てめえ、そんなこと思ってないだろ?顔に出てるぞ?」
「おっと、失礼失礼、ホントに思ってるって」
「あーもう。いいですよ……ギムレントさんに仕事残してやる。言い出しっぺがいないとか……どう言うことだよ」
言われてしまえば、くすくすと鼻で笑い笑顔で、本心でないことをさらに続ける。このプーシの事は、いつものことなのだがため息ついてプーシを手で払う。悪態ついて矛先をいない人に向ける。ただ言うわりには、仕方ないかと言う心が見て取れる。その様子にプーシも笑うのをやめて真面目に尋ねた。文句を言うが彼に賛同したことを、そして、正直話に乗ったが、彼を知らないからの質問を。
「けど、そんなギムレントさんに賛同したんでしょ?いったいどんな人なんです?」
「……しましたよ……今いないのも、仕事放棄でなく何かこの計画の別の部分のことをしてるんでしょうよ……」
一瞬止まりため息一つついては、そんなギムレントの話に賛同しましたよと一度ペンを置く。そして、文句を言っていたがいない理由もこの計画のための何かをしてるからだろうと適当な書類を取り無駄に目を通す。そして、こう続けた。
「あの人は自分がよしと思ったことを貫く人だよ。怖いぐらいにね。しかも余程の事がない限り止まらない……恐らく意見は聞くが目指す先はほとんど変えない変に頑固なお人だよ」
「ある種、狂信的ですね。歴史に出てくる今だいる独裁者ですか?」
続けたことを聞き、低い書類の柱に腰を下ろしてギムレントの評価をプーシは言う。笑顔で言うが危うく思い首は横に振る。その様子にシュトロボフは鼻で笑い書類を置いて再びペンを取りサインを入れる。そしてプーシの下した評価を少し否定してまた続ける。
「けど、俺らが歴史で習った連中とは少し違うかもな。この金儲けも利益だけで、自分や俺らと言った小さい事のためだけで計画したわけではないし……金は好きそうだけど」
シュトロボフの彼の評価を言う。どこか違うとシュトロボフは言う。少し他者より長くいたから感化された可能性もあるがそれでもプーシの言うタイプとは違うと自分の口で言う。そして自分と似てるだろう最後のところを笑ってプーシに伝えた。プーシは少し目を丸くしたが口許を緩めた。ただ多く言うこともなく。つぶやくだけであった。
「ふーん……なるほどね」
ギムレントさんはどこでなにされてるんでしょうね。言われっぱなしです。
まあ、よいか悪いかで、後世の評価で名君か独裁者か決まるわけであって、本人たちは皆最善を尽くしてると信じてやってるんだよね。どこまで本気かはまた別だけど




