クレセントムーン
一人ギルド会館の屋上へ上がったギムレント。ゲーム時代は賑やかに感じた町も今は死んだように日が上ろうが静かで寂しい。雪が溶け草木が芽吹きはじめ地面が見えてきたが、この町はある種冬のままである。
「これから……変えてやるからな……冒険者のこの町を……?念話?はいはーい……フォール君」
『ギムレントさん聞いてください!!すごいことあったんです!!アキバの町はすごいですよ!!もう大騒ぎで』
「お、おお……で、そのすごいことって?」
念話の呼び鈴がなる相手は日本、ヤマトサーバーにいるギルメン・フォール。念話受け返事をかければ、フォールは興奮気味に食いつくように、ギムレントに話をする。ギムレントはその勢いに押されて、さっきと違い相手の言うことに聞き返すことしかできなかった。
『あ、はい実はですね。クレセントムーンと言う軽食販売のお店が出来まして、そのお店の料理が全部味があるんですよ!!』
「味のある料理か?ふむ……」
『はい!!クレセントバーガーとかカリカリチキンとか。もう泣く子もいて、今行列になってすごいんですよ!!』
フォールの話す内容にギムレントは表情が明るく純粋に楽しそうなことに耳を傾けていた。そして、口元はいつものような笑顔でなく、にんまりと嬉しいときの表情である。ヤマトでも味のある料理が出たことそれを売り何かしらを使用とする者がいることに嬉しいのである。ギムレントはフォールの話に質問しつつ丁度いい高さ段差に腰を下ろした。
「その軽食販売をしてるのは?第8?海洋?ロデリック?」
『いえ!!マリエールさんとかの三日月同盟です。今は西風の旅団も手伝ってますね』
「三日月に……西風……」
『はい。少し値が張るけどすごいんですよ』
ギムレントはフォールから聞いた名前に、頭をかしげ引き出しを開けていく。三日月同盟はサポートギルドと言えど西風の旅団と接点があるとは思えないしかも西風が手伝う側と言うのは、正直不思議でしかない。三日月同盟のマリエールを動かして、西風がソウジロウが手伝う構図。西風のソウジロウ・セタは昔はある伝説的存在に関わってきた一人で……もしもその構図が可能としたら……色々と思うところあるが正直ギムレントの中ではないと思った。ただ、ヤマトで先に始まっていたことの最後の予想はつきフォールに言葉をかける。
「うむ……まあなんだ。彼らは恐らくアキバを変えることをするだろう……フォール君たちは今何を?」
『は……はぁ、わかりました。あ?はい、今自分達はフィールドで収集ですね……人員も多いのでPKは怖くないですが、大移動をしたと言っても、現状あまり遠くにも行けないので……アキバ周辺で落ち着かないと……エッゾに残った皆もある方と落ち延びて安全なところに到着したそうです』
「そうか……うん。分かった。皆大変そうだがどうにかやれてるならそれでいい。それに何かの役に立つかも知れんから収集は続けろ。後皆無理をするなよ」
『……分かりました。向こうにも伝えておきます。では、いつヤマトに皆さんが帰ってきてもいいように色々整えておきますね』
「ああ、こちらも分かったよ。また何かあったら連絡してくれ」
『はい、ではまた、何かありましたら。失礼します』
念話を終えて、ヤマトで彼らなりに頑張り、またヤマトで起き始めたことに思い巡らせ表情が緩む。フォールに料理のことを教えなかったことを少し後ろめたく思ったが、販売を始めたたと言うことに考えを向ければ、ヤマトの今後のことを考えて仲間とはいえ、言わなかったことの方が良かったと理由付け己で完結させた。実際、そうと思ったわけでもある訳だから。
杖を軽くつき、一羽のカラスを召喚する。そのカラスをうでに乗せ独り言を呟く。
「ヤマトは誰かわからんが動いたわけだ……ならばこちらもやれないことはない……いや、やってみせよう後々のために……」
腕を振り上げ、カラスは舞い上がる。黒い翼を広げてまだ白く、そして緑の燃えはじめたなか黒い鳥が始まりを告げる。
ヤマトで味のある料理が出始めて、遅れてロシアでもってところですかね。




