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セルデシア・インザ・リューリク  作者: 創手カケラ
2~冒険者の革命~下準備
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身の上話 ~バコフ~

「言わずもだな……じいちゃんと言われる通り……スティンは私の孫だよ」

グラスのウォッカを再び乾かして、少し真剣な眼差しで話をはじめた。酔えぬ酒をギムレントのグラスへ、自分のグラスへ注ぎ満たして話を続ける。

「いまはモスクワで暮らしている。息子夫婦の仕事のためにな。私はハバロフスクに残って現実でもバーを経営している。たまにカウンターに立ったりするだけで各店舗別途マスターに任せてるわけだがな」

「モスクワとハバロフスクだとかなりの距離ですね……」

「そうさ……だから孫に出汁にされて、エルダーテイルを始めたってところかな。おじいちゃんと話すのにって、なかなか利口な子だよ」

グラスを眺めつつ言うには、孫に出汁にされたと笑う。実際モスクワとハバロフスクとなると大陸の両端に当たるのでかなりの距離であり直接会うには大変である。だが話すだけならば電話や他の手段でも良かったろうと思うが、バコフの言う通り利口なのかもしれない。

「おじいちゃんと遊ぶのに、話すのにエルダーテイルがしたいと言い出したらしい……孫のために私もゲームをやり始めるのだから、私も孫に甘いがね」

「優しいおじいちゃんでいいじゃありませんか……」

「息子にはいつも甘やかさないでくれと怒られるんだがね」

ギムレントもグラスを煽り、聞く話に笑う。笑うギムレントに話すバコフも笑う。グラスが乾けばすぐに味気ない酒を満たしていく。話しはゲームの頃のエルダーテイルのことへ。

「やれば……なかなか面白くてね……孫のいない昼間にインして、こつこつレベルを上げて、パーティに混ぜてもらいダンジョン潜ったり……金が貯まれば、あのお店を開いたり、お世話になったプレイヤーやあの大手ギルドがきたりしてね。とやってたら今度はどうやって知ったか現実の私のお店にも、ゲームで知り合った人が来るようになったぐらいにしてな。孫より楽しんでたかもしれないな。たかがゲームと昔は思っていたんだがね」

「ははは、それはまた……スティン君の方は?」

「アレクセイ……は、サブを幾つか作ってね。はじめはソーサラー、次がコサック……で最後が今のアサシンか。最近観始めた日本のニンジャのアニメが面白くてこれにしたってな。ただ、こういう状況にな……」

「そうでしたか」

「孫だけでなく私も一緒で良かった……と言うところかな。ひどい状況に孫一人だったらと思うと……息子夫婦にも……申し訳ない……あの子だけでもと思うのだがなんともね」

はじめは口元を優しく綻ぶようにして優しい笑顔をみせていた。孫に出汁にされた自分の方がやりこみ始めたと楽しげに話し、バカに出来ないものと今では思う自分がいることを笑う。ただ、孫のこと、孫と一緒とはいえこの世界に投げ出されたことに、グラスの中身を一気に流し込み空しげに笑った。目を伏せて、話していくうちに孫の心配事が表に出る。

「ですが……そこで、ギムレントさんが私のもとに、料理の秘密と計画教えてくれた……久しぶりの味のある料理に孫も笑ってくれましたしね。ギムレントさんの言うことが成功すれば孫だけでなくこの世界もゲームの時のように……」

「成功させますよ……失敗しては……冒険者の町が暗いままだからなあ」

だが、ギムレントの計画。それの可能性に、バコフは目に光を宿し目線を真っ直ぐギムレントへ向けた。成功させればということにギムレントは力強くさせると答えた。ギムレントは酒を飲み干して、バコフに向き直り頭を下げた。

「改めてこの計画に力をお貸しください。バコフさん」

「改まらずとも……あの食事で皆の反応を見れば……喜んで力をお貸しします」

頭を下げるギムレントに、バコフは静かに答える。そして、バコフも静かに頭を下げてギムレントの計画協力することを約束した。

明日より忙しくなる。その前の静かな今を二人は、ボトルが空になるまでゲームの時のことや元の世界ことを話していた。

色んな人の話かけたら面白そうだが……なかなか難しいですね。バコフおじいちゃんは孫のため頑張りますよ

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