欠片(ピース)
「味のないお茶にも慣れたな……」
ところ変わりハバローフのギルド会館。カムイワッカの森のギルドホールの一室。色々なものが散乱した執務室の机の前、椅子に腰掛け味のないお茶を眺めながらふぅーと息を吐く。ティーカップを置き、今まで集めた情報を書き出した書類を眺める。
「と言っても金がないしな……集める方法もないし……呼び掛けて……集まるほど奴らは流石にな」
書類を置き、天井を見上げる。日本サーバー・弧状列島ヤマトなら、それなりのギルドでススキノならば統制はとろうと思えばやれただろう。が、少数精鋭のみでロシアサーバーのこの地に来て大部分はヤマトに、金は動かそうと思えば使えるが、ギルドマスターと言うだけでそれをするは何とも身勝手である。
「ん?念話?ああ、大地か……」
遠くをみつめて、ぼおーっとまとまらないものを考えていたが、念話の呼び鈴がなり始めて、意識を戻す。念話の相手は大地ですぐに念話を出る。
「よお……連絡遅かったな」
[すいません]
「ウラジオンはどうだ?黒兵衛から少しだけ聞いたがPK潰しは終わってたか?」
[ええ、今日の昼間、大規模戦闘の末PKギルドは潰れたようです]
「そいつはスゴいな……」
念話に出て遅かったと言うと大地は謝る。いつものことだが、彼らしい。ギムレントのいるハバローフと違い、ウラジオンでPK潰しが成功したことに目を細める。すごいと思うのと同時にハバローフではどうするか。PK潰しの後はどうするかを考えてしまう。
[……ギムレントさん。前に話したことなのですが……]
「前に話したこと?えっと」
[戻って報告すると言いましたあれです]
「ああ、そうだったな……今教えてくれるのかい?」
[ええ、黒兵衛さんと話した結果その方がよいかと]
「そう、では報告を受けようか」
一呼吸置き大地が前に話したことと切り出す。ギムレントはほかにも色々あったので、記憶が曖昧になってたが、戻って報告すると言うので思いだす。机の書類を退かして別の紙を取り出し、ペンを用意して、味のないお茶の入ったティーカップを口へ運ぶ。
そして、大地から報告を受ける。
その内容にギムレントは。
[味のある料理を作ることができました]
「味のある料理……?いまなんて?」
[味のある料理を作ることができました]
「ホント?」
[はい、本当です]
味のある料理。今の口に運運ぼうとしたティーカップを見つめて聞き返し、二度聞いても同じ返答にギムレントはティーカップを置きペンを手に取る。目をつぶって静かに呼吸するが口許緩んでしまう。
本当と言う言葉に、目を開き目がぎらつき始める。
「で、方法は?コマンドか?」
[いえ、簡単ですがコマンドではありません。料理人か調理スキルのあるものが実際に調理することで味のある料理ができます]
「本当か?……正解だけど不正解だったってことか……あの時、再度頼べばよかったか……ふふっ、だが、これで揃ったか」
[揃った……?]
「ああ、他のやつに聞いたことと合わせて、実行すれば……な」
自分の失敗に頭を抱えるが笑いの方が止まらず失敗など直ぐどうでもよくなった。これでギムレントの欲していたものが揃った。揃ったからこそ笑ってしまう。情報屋のツェトフェンから得たもの。味のしないヴォトカで得たもの。そして、大地から得たもの。全て彼のなかでは揃ったのだ。
「大地、すまないがそのままそちらにいてくれない?」
[え?はい。構いませんが?]
「それから黒兵衛に至急協力できそうなギルドで口の固いところを探すように伝えてくれ。この事はまだ口外してないのだろ?」
[混乱になりかねないと言うのもありますので、黒兵衛さんにはそう伝えます]
「それから、人そちらに一人以上送るから迎えてくれないか?」
[分かりましたでは、用意しておきます]
大地にウラジオンに残るよう伝え、黒兵衛に協力者の選考をお願いする。続けて口外してないのを確認すれば、またニヤリと笑う口角が上がる。思い通りになってきたことにギムレントは楽しそうで今後の予定や方向を紙にメモを取っていく。そして、人材を送ることを伝え味のないお茶を一気に飲み干す。
「ふぅ……ふふふっ、忙しくなるぞ。連絡はまめに頼む黒兵衛にもそう伝えてくれ。では今度はこちらから連絡する」
[元気になりましたね。では失礼します]
「そりゃあ、元気になるさ。やりたいことがやれるからなあ……じゃあな」
思わず声に出して笑ってしまい、それに大地は元気になりましたねと声を返す。返されたことに当たり前だよと言う風にギムレントも返し椅子から立ち上がり歩き出す。念話が終わり彼は部屋を出ていきギルドホールを出ていく。足取りはとても軽く力強い。
ちょっと長いページになりました。
次のページで終わると思います。次回作もちゃんと書き始めるのでお楽しみに☆
あ、ロシアサーバーの簡単な設定をこちらにも書くので目を通してみてください。この地域の捏造を楽しめますので




