思うところ
「さて、これから我々はどうしますかね」
紅茶を飲みつつ、目を細める。黒兵衛は昼間と違った雰囲気で大地と会話を交わす。
「我々ですか……」
「我々と言うより冒険者皆の事ではすかね」
「……」
「冒険者、ゲームをただプレイしてた、ただの人間。ただの21世紀の現代人。それがこの世界でもっとも強い力を手に入れた。ゲームのときなかった現実社会でも無かったある種自由を手に入れた。そして、冒険者同士の殺し合いに、大地人相手に横暴、略奪……味のある果物野菜など色んなものの買い占め、狩り場の占有まあ、その他にも」
元はただのゲームプレイヤー。それが、冒険者と言う強靭な肉体と強大な力を手に入れた。変な話元の世界で出来なかった色々なことが良くも悪くも何でもできる。出来るからこそ人の弱い方に転がったのかもしれない。黒兵衛の言葉に、大地は再び茶を口に運び目を閉じる。
「日本サーバーも同じですしね……私たちがロシアサーバーでこの状況なのだから、全世界で同じことが起きているか」
「でしょうね……ふっ」
大地が言うことは、恐らく当たっている。ロシアサーバーで大地たちが、日本サーバーではギルドメンバーのフォールたちが、この世界に取り込まれている。同じゲームであるが違うサーバーで同じことが起きた。取り込まれた人数は数十万を越えているかもしらない。その現状に恐らく当たってると頷き、ティーカップを手に持つソーサーに置いた。そして含み笑いを浮かべて続けた。
「ふふっ……ギムレントはどこまで考えているかな?本気で」
「かなり本気だと思いますよ……ただ、方法がなく……」
「方法ですか……それが揃ったら早そうですね……あのギムレントだから」
手に持つソーサーをティーカップと共に置き、ギムレントならばどうするかと楽しそうな含み笑いをまたして考える黒兵衛。それに大地は目を開き真剣な眼差しで返し、ティーカップをテーブルのソーサーの上に戻す。ただ、方法がないことが現状進めない理由。だが、あればと黒兵衛は笑う。
「横暴を止めて、冒険者に変化を与える方法もしくはルールを作るための方法……まあ、拘束力さえあれば方法はなんでもいいか……」
「何でも、いいんですかね?」
「ふふっ、私はそう思いますよ?早くしないとPK潰したあの大手ギルドだって暴れだすかもですからねえ。正直品物は生産系が九割独占してますし……」
黒兵衛は淡々とだが、口調はどこか楽しげで現状を話していく。大地は天井を見上げ、その彼に黒兵衛は続けた。
「ハバローフはハバローフで大変なのだろ?生産系が品物牛耳り、狩り場は戦闘系が何だかんだ占有してる。こちらと変わらないと言いますか……PKは小規模なのがのさばり、大地人にも容赦しなくなってる。まあ、こちらも大地人に対してより横暴になってきてるが」
一通り話せば、静かにティーカップを持ち再び口へ運ぶ。大地は紅茶を眺めてこちらも口へと運ぶ。
「念話をしてもいいですか?」
「何方に?」
「ギルドマスターに、実は戻ってから味のある料理のことを教えようと思ってたので……」
「ふふっ、それは早めに伝えてあげた方が良かったかもしれませんね」
「道々で伝えて誰かに聞かれてたら嫌でしたから……」
大地はティーカップを置いて立ち上がる。黒兵衛は彼を見上げて、大地の言うことに、苦笑いを浮かべる。戻って伝えても良いが、遅すぎる。このままでは手遅れになる。
「私も良く良く考えすぎでしたか……」
黒兵衛に軽く頭を下げ、窓辺へと歩き出す。
「ギムレントなら、最大限生かすでしょうね……これを忙しくなりそうです」
無理矢理でしたが、まあ、これでギムレントに繋がりますね。
さて、ギムレントの方に料理人はいたか……←




