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セルデシア・インザ・リューリク  作者: 創手カケラ
1~極北(シベリア)の異邦人~INセルデシア
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黒兵衛とPK

「お二人さんは念話してみた?」

「まだしてませんよ?」

「私もですね。葵を抑えておかないといけないので」

「えー、ひどい大地ー」

「では掛けてみますか」

葵と大地は確認はしたが念話を掛けておらず、その理由のひとつに、ギムレントは笑い葵は大地をポカスカ叩く。だが大地は気にしてる様子もなくいつもの事のようである。その様子にガランもジーフェンも笑っていた。その間にギムレントは黒兵衛に念話を掛ける。

~◆~

「はい……黒兵衛です……」

「無事か?俺だギムレントだ」

「マスター。こちらは無事と言えば無事ですが?マスターはご無事でしたか?」

「ああ、大丈夫だ他のメンバーも無事だよ」

念話越しに黒兵衛と答える声。その声は大地より落ち着いていた低い声。その声はギムレントの問いかけにマスターと呼ぶ。無事を伝え合う。

「何でウラジオンに……」

「少し買い出しにウラジオンへ……トランスポートゲートを使ったのですが……気づくとこの世界、この姿……そして」

「トランスポートゲートが動かないんだな?」

「はい。その通りにございます」

変わらぬ声色で会話を続ける黒兵衛にギムレントは、安心する。ハバローフから南、ウラジオンと言うもうひとつの冒険者の町。現実の世界での位置ではウラジオストクに当たる。そこに買い出しに行ってたらしいが、皆と同じく目を覚ますとこの状況。トランスポートゲートはやはり使えないらしい。それを聞いてギムレントは少し頭を掻く。そしてさらに続けた黒兵衛の続けて言い出したことに、今度は苦笑いを浮かべ始めた

「ただ、問題はあったと言えばありましたが……PKを返り討ちにして見たところ。予想以上に助けを求められまして身動きとれず」

「そ、そうか……何があったの?」

「はい、一人ならばウラジオンからハバローフに行ける自信はあったのですが……外では既にPK狙いの愚かな連中がプレイヤーを襲撃してまして……そのうちの幾人かが私に向かってきたので、返り討ちにしてやりまして、次いでに他のプレイヤー襲ってたやつも殺ってやりました」

PK。俗にプレイヤーキル、プレイヤーキラーとも呼ばれるそれは、プレイヤーをターゲットに戦闘し命を奪うこと。ヴリガンディアの事もあり起こるとは思っていたがそんなに早くとは思わなかった。そして。その行動にギムレントは内心、嫌悪と憤怒で腸が煮え繰り返る思いであった。正直まだリアルであってリアルじゃないと思う自分がない訳ではない。だがこの新たな現実と言っていい中で、人間を殺す、殺人と言う思考に向くこと、行動に走る連中に震え握る杖に力が入る。

「……マスター?聞こえてますか?」

「あ、ああ……すまん」

「して、結果助ける形になってしまい、頼られてしまいまして……現在彼ら初心者などを町で保護しています」

「そうかい……ふふっ、にしてもお前らしいな。俺よりそう言うのを放っとけないやつだからな」

「薄情ではございませんので」

黒兵衛の問いかけに我に帰る。黒兵衛の人柄を知るギムレントは、怒りの次に彼が変わらぬことに、心が少し救われる。淡々と喋る風は冷たくも感じるが、そういう男ではない。

「で一様聞くけど全員つれて動ける?」

改めて黒兵衛に尋ねるギムレント。黒兵衛は一呼吸置き、それに答えた。

「ふぅ……残念ですが無理ですね。外はPK狙いがさらに増え始めてますし、ギルド規模で動くものも……私一人ならば先程も申し上げましたがハバローフに行けたでしょう。ただ助けを求めてきた彼らの召喚笛の馬やそもそもレベル的にハバローフにはたどり着けないですね……人数も私を抜いても20人超フルレイド規模ですからね……守り抜けるかどうか」

黒兵衛の言う通り彼一人ならあらゆる手段を使いハバローフとウラジオン間は、移動可能だろう。だが、今回保護した冒険者は20人を越える人数と一緒となると話は変わる。現実で両都市の間は約770㎞。この世界がゲームを基にしてるのならば、ゲーム時代に計画されたハーフガイアプロジェクトと言うものにより、現実世界の規模はその半分に縮小された385㎞。はじめの数字より半分も短いが、その距離を高速鉄道や飛行機がないこの世界では……言うまでもない。しかも魔物にPKの連中が蔓延る。多数の人を守りつつ脱落者出さずハバローフまでたどり着くのは難しい。

「はぁー……そうか……じゃあ、ウラジオンにもギルドホールがあったからな。そこで匿ってあげなさい。設定権限は黒兵衛もあるしな。後、ソロとかで対PKやってる者がいたら一緒に手を組んだらどうだ?」

「はい、ありがとうございます。ではそうさせていただきますね。それにそうですね味方が多いに越したことはございませんし」

ギムレントの提案に黒兵衛は礼を言う。ギルド会館のギルドホールはギルドで所有できるギルド共有の空間。カリンとアコニトが向かったのも自分達のギルドホールに戻るのが目的。ギルドホールはギルドメンバー以外は許可を得た者しか入れない。冒険者にとって町のなかでもより安全な空間の一つである。話がずれるが大手になればギルド会館にギルドホールを所有する以外にも、町の購入可能なエリアや建物を購入し、それをギルドハウスとして使用することもある。今回、ギムレントをマスターとするギルドはヤマトサーバー以外の、他サーバー、そこの冒険者の町にもギルドホールを有していていたから出来ることでもある。

「集まった味方にも解放していいからな。にしてもススキノではあのデミカス野郎のヴリガンディアが暴れてるって言うしな……どこもかしこも荒れるの早い」

「また、あいつらですか……懲りずわしかもこの状況で……戻れたら潰してやらないといけませんね」

「そうだな……戻れたら……な」

もう荒れ始めたこの世界にギムレントは乾いた笑顔を浮かべる。話がススキノ、ヤマトサーバーのことになれば、戻れたらヴリガンディアを潰すと黒兵衛はより声が低くなる。ギムレントはふと考えた。ヤマトサーバーに戻れるのだろうかとも……いやヤマトサーバーに戻るのもだがこの世界から元の自分達の生活してた世界に我々は戻れるのか考えた。乾いた笑いから悪人面と言っていい笑顔へ変わっていく。

「じゃあ、後の事は改めてだな。情報収集は別途頼むぞ」

「分かりました……では失礼します。ギルドホールに向かいますので」

「おう、それじゃあな」

~◆~

「黒兵衛はしばらくウラジオンから動けないとのことだ……聞こえてた通り、PK連中から助けたプレイヤーを保護してるらしい」

「俺らより凄いっすね」

「黒兵衛さんらしい」

「黒ちゃんは強いから頼りにされちゃったんだね」

念話を終えて、皆に改めて簡単に説明をする。黒兵衛の状態にそれぞれ笑いつつ口々に言うのは黒兵衛らしいと言うこととその行動の凄さ。この現状で己一人でも大変なのにと考えれば妥当な反応だろう。今現状では動けないのも当たり前なのだから。

「して……どうするのです?救援でも出しますか?」

「いや、今は黒兵衛一人でも大丈夫さ町の外が危険なだけだし……外はミニマップ?表示されないから地図がないとどうしようもない」

大地の提案にギムレントは首を横に振り、来た道へ踵を返す。ゆっくりと歩みを進める。そして、ギムレントは黒兵衛の話から変わって、話始めた。

「それより今二人に紹介したい人もいるしね」

「紹介したい人?」「紹介したい人ですか?あ、愛人?」

「ちょっ、葵さん」

「葵……面白くないです」

「むー……」

「はは、一度我々のギルドホールに戻りましょうそこにいますので」

ギムレントを真ん中にガラン、ジーフェンを左右に、その後ろを葵と大地が続く。紹介したい人と言うことに葵は変なことを言うが、大地は明らかにつまらないと言う風で一蹴する。唸る葵に皆笑い、ギムレントも笑った。彼らの回りの空気は重いが彼らは回りに比べれば異質に見えるほど明るい。五人はギルド会館へと戻った。

下手の横好き?いいじゃない!!ログホラ好きで書いてるのだもの


さてさて、順次進めてるので読んでいただけたらなとホント思ってるのですが……

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