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セルデシア・インザ・リューリク  作者: 創手カケラ
小さくても強く、小さくても怖い情報屋
56/94

ゲームの思考

その日の夕刻。白い森のなかに白煙が一筋上がり、その下で焚き火に鍋をかける者が一人。鎧の上からエプロンをする大地である。近くの木にザハルがもたれ掛かり、兄妹はテントで料理ができるまでと休んでいる。

「しっかし、料理人だったのにしなかったんだな?料理?」

「ええ……そうですねえ。コマンド料理はしてみたのですが、実際調理できるとは思ってなかったので」

鍋をかき混ぜる大地に、ザハルは首をかしげながら尋ねる。かき混ぜる手は止めず、赤みがかった空を見上げてそう言えばと言う風に大地は答えた。大地の料理は、道々で集めたもの、有り合わせとは思えぬほど美味しいものであった。大地も兄妹も残さず食べておかわりを求め必ず完食する。しかも手際よく昼食は三品も作った。それほど料理が得意なのに、大地の答えにザハルとても不思議感じてに再び口を開き尋ねる。

「ふーん、大地さんって意外と抜けてるんすね?」

「っ……そう言うものと、思い込んでたんでしょうね。今のほとんどの人も」

「けど、自分も試そうとか?考えなかったんすか?」

「正直考えなかったですね」

抜けてると言われてしまうと苦笑いと哀愁入り交じる顔して、試さなかったとさら答えて、鍋の中身こ味見しつつ、調味料を足す。だが、聞けば聞くほど疑問に思うようで、さらに聞いてくるザハル。そんな彼に大地はかき混ぜ続けながら理由を話始めた。

「ギルマスも私も、いや今この世界の冒険者は普通にやってたらまだ試さないでしょうね」

「どうしてですか?」

「この世界が今だゲームだとどこかで思ってるからですよ。どんなことが起きても」

「ゲーム?」

「そう……この世界がゲームだからと思うからこそ、ゲームの範囲でしか出来ないと思う部分が必ずどこかにある。勿論ゲーム時代から比べるとより自由度は上がってるが、それでも皆はゲームの延長と認識して、そのなかでしか行動ができていない出来ないからこそ、元の世界でやってたことをやらない……やれない。現実とは違うと思うから」

「そんなものですかね?」

「そんなものだよ?与えられた選択のなかでしか、行動できなくなってましたしね。選択肢以外考えることもできず、選択肢だけしかと思い込んでしまう。私やギルマスもそうならないようにと思っていたのだが……まあ、結局無理だったと言うところでしょう」

ゲームのルールに縛られてまたは、そのルールを利用して行動するまたは行動出来ない。その思い込みが冒険者をダメにしている。悪くしている。思考を停止させている。ザハルに理由を話しているのだが、大地本人もその理由を再確認、認識していく。そして、ゲームの毒の部分に犯されてたことに笑ってしまう自分がいた。そうして、再び口を開き、ザハルを見た。

「正直ザハルがこれを試してくれたお陰で、私は助かりました。試さなかった自分に笑ってもしまいましたが……それに、この発見はこの世界を大きく変えるきっかけになるでしょうね」

「え?いやいや、そこまでのことじゃないと思うんですけど」

「ふっ、すぐに分かると思いますよ?君の発見が大発見だったってのは」

「はぁ……?」

ザハルは大地の言葉にそんな凄いことではないと思って言葉を返す。大地はクスリと笑ってザハルを見据えてすぐに分かると目を細める。ザハルは理解してないようで抜けた返事をして困った表情を見せる。

「うん、よし出来ましたよ。ご飯にしましょう。ザハルすいませんが二人を呼んできてください」

「お?はい」

「料理だけな……わけがありませんからね……」

空が赤黒くなり始めた頃。最後の味見をして満足そうな表情を見せてザハルに兄妹を呼ぶように声をかける。ザハルはテントに二人を呼びにいく間に皿に盛り付けていく。盛りつつポツリと呟き口角を少しあげた。

久しぶりの更新ですね。長らくお待たせしました。

また、よろしくお願いします

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