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セルデシア・インザ・リューリク  作者: 創手カケラ
小さくても強く、小さくても怖い情報屋
53/94

悩み

シュトロボフと別れ、天高く照らす太陽を見上げる。段々と暖かくなる日射しは嬉しいはずだが、この町では楽しめそうにない。雪も溶けて路面が見えるところや日射しに芽を覚ました小さな若草が石畳の間から道端から顔を出す。これらが青々と地面を覆うまでには、木々が豊かに葉を繁らせるまでには、とギムレントは頭で巡らせる。ギムレントの格好に目を向ける冒険者は、何とも言わずだが、この世界でこいつは何やってるのかと言う視線を向けていた。

(コイツらも自分でどうこう考えれば……なあ……)

今だ現実を受け入れぬ彼ら、誰かがどうしてくれると思ってる彼ら、現代人こうなったら終わりだ。現代揃っている社会でも揃ってない社会でも人はこうなる。人間とは怠惰であり、理由をつけては勝手に絶望して動けなくなる。冒険者は恐らくほとんどこれに陥ってるのだろう。悪くなる町、いまだ変わらない彼ら。

ギルド会館に戻り、ギルドホールのある階へ。明るいが静かで寂しい通路を進み、ギルドホールのドアを開ける。

「帰ったぞー?お?」

「おかえりー、レントさん!見てみてこの子!!ガランの彼女!!」

「へっ!?えっ、ち、ちがいます……」

「葵さん、そろそろそれやめてくれないっすか?俺もエリーナも困るっすよ」

居残り組のメンバーが揃うなか。見慣れない娘が一人。葵が彼女に抱きついて頭を撫で回し、いつもの調子で、反応を楽しむようにギムレントに明らかな嘘を報告する。こよ抱きつかれてる娘は顔を赤くして否定する。ガランは疲れたようすで葵に言うが、葵は〔えー違う?〕のと残念そうにガランを見つめていた。そんな三人をカリンとジーフェンはクスクスと笑いながら、他人事のように楽しみ。アコニトはそんなみんなに困ったようすでそれぞれを見ていた。いつもと変わらぬ彼ら……ギムレントは安心から微笑む。

「……葵ちゃん、そろそろ止めてあげなよ。君好みのかわいいお嬢さんなのは分かるけどさ」

「むー、ごめんね。エレーナちゃん」

「あ、えっと、いえ。大丈夫ですよ」

やっと解放されたエレーナと呼ばれる娘。彼女は葵の言葉にふんわりとして優しい笑顔で返してしまう。それに葵がときめかないはずがなくまた撫でようと手が伸びそうなっていたが、カリンが葵を止める。

「ほら、葵さん。そろそろ落ち着いてください」

「むー……あ、アコニトちゃん……」

「あ、はい?」

「私と遊べー!!」

「きゃっ、葵さん!?」

「もー……」

「ふぅっ……でガラン?この方は?」

「あ、はい。町で知り合った娘でエレーナさんです」

「は、はじめましてエレーナです」

葵とアコニト、カリンの戯れを優しく眼差しで見つめて、次にガランとエレーナに向ける。ガランの性格からして、彼女がここにいるのは予想がつく。悪い方にはいくらでも動く。ゲームは終わったのにだ。そう思っていると彼女の声に我に返り目を開ける。エレーナ、ステータスバーを見れば、大地人で、職業は町娘。彼女にギムレントは優しく微笑み自らも挨拶をする。

「ギムレントと申します。まあ、我々こう言うものですので……ゆっくりしていって構いませんので……」

「ありがとうございます。ギムレント様」

「ギムレントでいいですよ。エレーナさん」

「あ、ではギムレントさんと……」

「ふふっ、分かった……」

また一人人が増える……ギムレントは少し眉間にシワを寄せ小さなため息をつく。

(いろいろ……そろそろ答え出さないとな決めなくてはならんか)

無言でそのまま執務室に向かう。いつものような覇気はなかった。

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