念話の糸・会話の管
「何で置いてったのー大地ー」
「何でと言われても貴女がついてくると長期化しかねないので」
「むー、酷いぞ大地ー」
念話の相手、ハバローフの葵。一人ホールの椅子に座りテーブルにもたれて念話をしてた。とても不満そうでその顔は頬を膨らませて子供のようである。森の中の大地は、星空を見上げながら、表情を緩ませて本音を言いつつ言葉を返す。その本音に、テーブルの持たれる彼女はより頬を膨らませて相手に言われて酷い酷いと連呼して騒ぎ立てる。
「その代わりお土産ももって帰りますし、相手してあげますよ」
「いっぱい買ってきてね。それからちゃんと相手するんだぞー」
「しますから……それに、葵に嬉しい発見を教えたいですしね。そっちはどうでしたか?」
むくれる葵をあやしつつ葵の声に何処と無く嬉しそうな風で声も普段より明るくなっている。念話の向こうの葵も楽しそうな風で揺れている。大地の話す内容は聞こえないが先程までと違う雰囲気の後ろ姿にザハルは少し笑っていた。
「発見?じゃあ、それを楽しみに待ってるよ。あー、うん……こっちは相変わらずだね。柄の悪い人が幅聞かせてたり、食料品が不足してたり、狩り場は大手が独占し始めてて」
「そうですか……危ないところには行かないでくらさいね?貴女はよく巻き込まれるですから」
「大丈夫だよ。市場とギルド会館の往復だしカリンちゃんやアコニトちゃんもいるから」
聞いてる内容から町は、より悪くなっているのが伺える。ザハルの言うことはやはり、無理な気がするなと大地は表情が曇る。だが葵は明るく、大地の忠告も軽く返してしまう。それに大地は苦笑い浮かべて遠い星空を目を細めて眺める。
「ふふ、ホントわかっているんだか……では、もう切りますね」
「えー、もう切るの?」
「また明日連絡入れますよ。必ず」
「はーい……じゃあ、また明日」
「はい、明日」
短い内容を短い時間交わす。一日だけだったが、葵は寂しかったようで、切ると言われると声に悲しい感情が乗る。実際にもたれ掛かって、膨れたり嬉しそうだったりと変わった表情が一瞬で暗くなる。大地は見えない相手が想像ついているのかまた明日と言葉を伝えた。葵はそれを聞き表情を和らげ体をおこし、こちらも言葉を伝えた。念話を切ったの大地で、その瞬間にまた寂しそうに顔を曇らせテーブルに体を倒した。
「こなかったら……こっちからかけてやる」
そう呟き、そのテーブルから見える空を眺めた綺麗な星空が広がり月明かりが窓から差し込んでいた。
~◆~
「誰に念話だったんだ?結局?」
「秘密です」
大地の念話の内容は聞こえなかったが遠目で見てた様子から、ザハルは推測してにやにやと大地に訪ねるが、無表情で眼鏡を直し秘密と即答をする。それに対してよりにやけて大地を茶化そうとする。
「いいねえ……リア充?っていうんだけっけ?彼女いるやつのことを日本では」
「いえ?彼女ではありませんよ?」
「いやいや、そうやって否定するなよ。分かってるんだからさあ」
「はは、急に馴れ馴れしくなりましたね」
「いやー、あれを見たらねえ」
大地は表情をほとんど変えず、ザハルを流しあしらうが、ザハルはシラフの癖に管を巻いて絡んでくる。大地は自分の用意した椅子に座りその巻くザハルに少し笑顔を見せ始め、似たような答えを繰り返し相手をしていく。テントでは兄妹が寝息をたて始め、月の光が夜を優しく淡く照らしていた。
葵と大地の関係はなんなんでしょうね←わかりませんねー←
因みにザハルはフリーと言えばフリーですよ。




