不発のロシアンショット
「ん……最悪だ……」
「……癖がないのがウォッカだけど」
「はは、リアル命の水……」
「焼けないですね……喉……」
「すいません……お客さん」
ショットグラスでイッキ飲み。ロシアの良くある光景だが、口々に言う言葉は失望感がにじみ出ている。癖がないのがウォッカだが、癖どころ酒の味すらしない。その様子を見てたバーテンの男性も残念そうで、その様な酒しか出せない自分に顔を曇らせていた。
「いや、いいんだ……味がないこの世界が悪い……ギムレは普通のグラスか?」
「ホント考えないとな……あ、うん。頼むよ」
「俺はこれでいい」
「自分もグラスを」
「分かった……」
イワンが頼まれたグラスを取りにカウンターに取りに行く。その間、ギムレントは酒のボトルを眺めてため息をつく。酒にすら味がない。
「すまんな……マスター。ありがとう」
「で、乾杯はしたしそろそろ本題にしようや」
「あ、ああ……そうだな。呼んだのもそのためだからな……」
カウンターで、グラスを受け取り戻ってくる。ショットグラスと違い、少し洒落た綺麗なグラスをギムレントとシュトロボフの前に置いていく。イワンは、ギムレントの本題と言う質問に口を開く。
「ギムレは、色々やってるようだが……二人はどう思う?この世界?」
「ん?ああ……そうだな……どうにか出来るならしたいね。俺のところのメンバーはPK被害合ってるしな……食料に金かかるし」
「自分のところも材料集め大変ですね……素材を取りに行く冒険者やギルドもいないので……自分等で取りに行ってますよ。PKや略奪にも合いました……撃退はどうにかできましたけど……毎回あれでは」
「どこも大変だな……俺らは買い占めに困らせられてるが……」
「それは、私も謝らねばならんな。味のあるものは貴重だから……他者より先にと……申し訳ない」
それぞれ、起きたこと情報を簡単に話す。買い占めはやはり大手や力あるギルドの行いのようで、文句はつけれるがこの世界では、やはり仕方ないことかもしれない。実力あるギルドであるランゲルンのところもPK被害が出たり、生産系はこの状況下では上手く素材が入らず自ら素材集めをしているらしい。そして、それを襲うプレイヤーが出ている。どこまでも酷くなる状況にギムレントやイワンは顔をしかめる。ギムレントは自ら無味酒を注ぎ、グラスを傾ける。
「まあ、その代わり生で食えない食料アイテムは安くなってたりするがな」
「そんなの買ってどうすんだよ?ギム……」
「これで、味のある料理が作れたらぼろ儲けだろ?そのための買い込み……」
「自分のところもやってますけど、レシピなど再収集しても、なんも変わりませんよ?」
「いや、だが、可能性がないとは限らないだろ?なあ?イワン?」
「……そうだが、希望も持てんだろ……」
「イワンに言われると、弱るな」
味のあるものを求めるがどこも険しいらしい。ギムレントの発言にイワンは、ショットグラスに注いだ酒を再びイッキに飲み込んで、楽観しもでないと言う風で口を開く。それにギムレントはなにかよい返しも思い付かず苦笑う。好転しない会話に皆それぞれ静かに酒をのみ、息が漏れる。その中、一人重い口を再び開く。
「けど、何かなしないとですよね……言う通り冒険者は腐る一方だし、悪党ギルドはより悪くなる……良くならないなら彼らみたいにってまた出てくるし……止めても焼け石に水ですからね。また、雰囲気が悪くなる……」
「やっぱりそれかな。悪が悪を呼ぶ流れだからな。大手がどうにかしてくれと言いたいが」
「俺らも慈善団体じゃねえぞ……ギム」
「冗談だわ……分かってるって。ランゲルン」
シュトロボフの、言う通り何かするか起きないと恐らく変わらないだろう。大手にどうにかして貰うと言っても、慈善団体でもないし、自分のギルドを守るので精一杯。ギムレントも一つ二つPK狩りをしたが、効果があったとは言いがたい。
「ギムレ、何か方法ないか?」
「そこで俺かい……うーん……」
「ルールを設けてはどうです?」
「ルールか……それが必要かもな。シュトロボフの言う通り」
「ルールか……」
「けど、守らす方法がねえぞ。お三方」
シュトロボフの提案に賛同しかけたが、ランゲルンの言葉がルールの無意味さを伝える。シュトロボフは顔が暗くなり、ギムレントとイワンは酒の入ったグラスを傾ける。ランゲルンもショットを飲み干し机に突っ伏する。
イッキ飲みダメ絶対!!
うん、ショットグラスとは言っても、強い酒を飲むわけですからね。飲み方間違えると大変ですよ。
あー、後お腹になにかしら入れて(つまみとか)飲んだ方がいいよ。酒だけだとアルコール吸収され安いらしいからね




