人獣
「ひどいっすよギムさん……」
「大丈夫でしたか?」
「いやーすまんすまんまさかこうなるとは……」
ゴオオー……
アコニトに心配され回復されながら、ガランはギムレントをジト目で見つつ文句を言う。ギムレントはばつが悪そうに頭を何度下げ謝る。傍らギムレントの呼び出したゴーレムも頭を下げていた。
「まあ、いい経験になったからいいっすけど」
「仲間のゴーレムに飛ばされるってのはそうそうあることじゃないもんね」
(まだ……大丈夫だな)
ただ、ガランの様子にやはり葵もギムレントも笑う。この世界では珍しい様子の場となっていた。ギムレントは戦闘も無理なくこなせることが分かり、また、自分等が暗くなることなく悲観することなくこの状況を維持できてることに安心する。安心してギムレントは手頃な腰掛けにできる石に腰を下ろす。
「あ、あの……わ、私うまくできましたか?」
「ん?もちろん!アコニトちゃんのお陰でガランもギムさんも神殿送りにならなかったからね」
「はは……そうっすね。正直やばかったすから」
「そうだね……アコニトちゃんはちゃんと役割をできてましたよ。葵の言う通りだったし……自分達の方が正直危うかったですからね」
「いえ……そ、そんなに……その……」
ガランはその場に座り込み疲れた様子であるが、満足そうな表情を見せる。葵もギムレントも一呼吸つく。無理なくできそうだが、流石にはじめては疲れる。それぞれ表情は悪くなかったが、一人、アコニトは自分が上手く出来たかやはり不安そうにギムレント達に聞く。それを聞き、アコニトの様子に皆優しい表情で、アコニトを誉めて、正直なところを言う。とくに葵の言うことにガランとギムレントは苦笑いでごまかした。そんなやり取りを続けたギムレント達パーティー。
「ふぅ……初の戦闘はこんなものですか……」
木片と化し、雪の上に積もるアイストレントを眺めつつ、呟く大地。刀の一振るいして、鞘に納めていく。アイストレントを相手をしていた大地パーティーも一呼吸つく。
「案外うまくやれましたね大地さん」
「回復呪文もよっと〔エリアヒール〕詠唱でいいんですもんね」
ジーフェンも双振りの剣を鞘に納めて腰を下ろす。うまくやれたことに安堵しつつため息を漏らす。カリンは確認するように言いながら回復呪文を詠唱して杖を振るえば鈴をしゃりんと鳴り大地やジーフェンのHPを回復する。カリンの回復呪文に礼を言いつつ大地はゆっくりと歩き出し、アイストレントの木片や雪を踏みしめていく。
「ありがとうございます。カリンさん……ふぅ、あのままでは危険でしたがまあ、やり方さえ分かれば雑作も無かったわけですね。では、ギムレントさんのとこに合流しましょう。少しトレント引き付けるのに離れすぎましたからね」
「はいっと……」
「分かりました」
大地パーティーは離れてしまったギムレント達のもとへ歩いていく。雪の上の木片が光の泡となり消え、空へと昇っていく。少し歩きすぐ大地達はギムレントのもとにたどり着く。談笑するギムレントのもとにつき大地たちの表情が緩む。合流した大地達にギムレントは気づきギムレントは立ち上がる。
「ご苦労様、大地に、ジーフェン、カリン……うむさて帰りますか……夜になったらコワーいモンスターも出てきますしね」
ゴーレムを帰還させ、杖をつく。ギムレントが歩き出せば他の皆も付いていく。おどおどとしてしまい咄嗟に付いていけなかったアコニトをカリンが手を引き一緒に歩く。ガランとジーフェン、葵と大地、カリンとアコニト。いつものコンビに新しいコンビにとそれぞれ共に歩き話を弾ませる。彼らの声を背に聞いてギムレントの表情は明るくなり、口元を緩ます。
「だ、誰か助けてええー!!!」
「ん?」
と、突然聞こえる女性の助けを求める声。雪を紅く染めて傾いた陽が森の中を照らすなかその悲鳴に似た声が鳴り響く。その声に緩ませた口元が真一文字に結ばれる。ガランやジーフェンは武器に手をかけた。大地は眼鏡を直し眼光鋭くなり、葵はため息をつく。アコニトは不安そうな表情になるがそれをカリンが優しく大丈夫と笑顔を見せる。
ギムレントは歩みを止めた。
「ガラン、大地は、アコニトの保護、ハバローフいや、ギルドホールに撤退。ジーフェン、カリン、葵は私と着いてきてください急ぐぞ……」
「了解!」「了解……」「了解です」「はい!」「りょうかーい」
ギムレントの新たな指示に従い、それぞれ返事をしてギムレントの後を付いていく。ギムレントの目は恐ろしい目付きに変わっていき歯を強く食い縛る。残されたアコニトはガランと大地共に町へと歩いていく。
ガランはいつものようだが、武器に手をかけたままで、大地は鞘に納めた刀の柄から手を離さず、表情も怖いままだった。
~◆~
「どこいくんだよ。逃げれると思ってんのか!!」
「ぐあ!?あっ……」
湾曲した内側に刃のある武器が逃げるものを背中を刺して、引き裂く。逃げていたものは倒れ血が流れ出る。肉体が泡のようなものと変わっていき倒れたものは消滅した。
「へへ、こんなときだ女ってのは大事だよな」
「PKする前にどこまでリアルか見てみる?」
「や、やだ。だれか……」
杖を持った女性が他の武器を持ったものに囲まれ逃げ道を塞がれ詰め寄られていた。武器を持った連中の目は酷く恐ろしく獣のようであった。人の皮を被ったそれらは、この世界で目覚めてしまったモノなのだろう。
「うんじゃあ、楽しませてもらうぜ」
その一人が間近まで近付き相手の目を見て武器を女性の首に当てた。腐った笑顔であり、気持ち悪い声で囁いた。
さて……次から書き直すのは私の好きだった場所なんですね。
まともに近い文章に直していきますよ。
こういう世界で力を有するモノとなった人間は平常心を保てるものでしょうかね?




