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プロローグ

これは全部自分のオナニーです

「16時36分。さあお前の寿命はこれで終わりだぞ?人間」


高校からの帰り道のことだった。俺、多田野 太郎は、人気の無い路地で、死神を自称する少女に出会った。

白い髪に赤い瞳、フリルだらけの黒いドレス、人間らしさのないその風貌を、140センチも無いのではないかという身長が可愛らしく見せていた。

ドレスから出た白い手足に、球体間接を探してしまうほど、少女は人形のようだった。

だが、今はそんな容姿を気にしている場合では無い、何故なら少女の手には、背丈の倍はあろうかという大鎌が握られていたからである。

少女と俺との距離は10メートルもない。少女は大鎌を両手で持ち、構えると、一気に距離を詰めてきた。

「震えろ人間!貴様の命を刈り取るのはこの私、死神のテンサだ!」

テンサと名乗る少女が、大鎌を振るかぶる、そして、俺の左肩から右脇を抜けるように降り下ろした。

しかし、俺の体になんの変化もない。

「どうしてだ!?どうして死なない!確かにお前は、寿命を終えたはず…って1日ずれてるじゃないか!?」テンサは懐中時計のようなものを取り出して、それを覗き込みながら、小さくうめいていた。

俺は何が起こっているか分かっていなかったが、とりあえず、うなだれているテンサの手から、大鎌を奪い取った。

「ああ!何をする、返せ!」テンサは赤い瞳の目を細くし、睨んだ。少し涙目になっていて、まつげが濡れている。

「お前テンサと言ったな?お前はさっき俺に何をした?俺はこの大鎌で、切られたと思ったんだが?ちゃんと答えてくれたら返すから、な?」俺は、少しでもこの状況を理解しようと、テンサに聞いて見た。

テンサは涙をふき取り答えてくれた。

「私は死神だ。死神は寿命を迎えた人間の元に現れ、その魂を刈り取っていく。そしておまえは、今日寿命をむかえたはずだった、それなのに…」テンサがまた涙目になっている。

「1日間違ったのだ!!本当は今日ではなく、明日のこの日に死ぬ予定なのだ。その大鎌は寿命をむかえた人間の魂しか刈れない。」言葉の最後を弱々しく、膝をついてうなだれた。

「テンサ、お前が本当に死神として、この事態は大失敗なのだな?だから落ち込んでる?」俺はテンサの顔を覗き込んだ。

「そうだ。この世界とはちがうところに、死神界があり、そこの偉い方々からの使命で、我々死神は、魂を刈りとっている。私は今回の失敗で罰を受けるだろう…」テンサの声がどんどん弱くなっていくので、かわいそうになり、大鎌を返してあげた。

「今日は俺の家に来いよ。」

「は!?どうしたんだ急に。」テンサは真っ赤な目を見開いてこちらを見た。

「どうせ俺は、明日死ぬんだろ。お前はそれまで俺の家で待ってればいい、近くにいたほうが都合がいいだろ?それに少しショックなんだ、明日寿命が尽きると思うと。最後くらい誰かといたいんだよ。」俺は高校に入学してから、家族から離れて、一人で暮らしている。たまに一人暮らしを寂しく思うときもあった。

「人間、どうしてお前はそんなに落ち着いているんだ?明日死ぬと言われているのだぞ?もしかして、信じていないのか?家に誘って襲う気だな?」落ち着きを取り戻したテンサが、不思議そうに問う。

「ちがうよ。ただ明日寿命をむかえることは決まってる事なんだろう、なら諦めるしかないだろ。で、俺の家に来るのか?」

「行くのはいいが、お前の家族がいるのではないのか?まあその時は姿を消せばよいか。いいぞ、行く。」

「大丈夫だよ、俺は一人暮らしだから。って姿を消すって言ったか?」俺は、あわてて問返した。

「言ったがどうした?死神だからそれぐらい出来て当然だろう。」テンサは小さな胸を偉そうに突き出し、威張ったような態度になる。

「じゃあ、俺のことも姿を消して、大鎌で切りつければ良かったんじゃないのか?そうすれば失敗もばれることは無いんじゃないのか?」

テンサの顔が見る見る赤くなっていく。どうやら今気づいたらしい。

「なあ、テンサ。お前ってもしかして、こうやって魂刈るの初めてなんじゃないのか?」

「うっさい!そうだよ…」もう日が落ちてきているというのに、テンサの顔は夕日に照らされているようだ。

「じゃあ、俺が始めての相手になるんだな。」この台詞はわざと言った。テンサの反応は面白い。

「なっ!?」顔から湯気が立ち込めそうな勢いだ。死神は奥手らしい。

「そういえば、名前教えてなかったな。俺は、多田野 太郎だ、よろしく。」

「ふんっ!明日死ぬやつの名前なんて知る必要ない!」テンサの言葉は冷たかったが、顔は触れるとやけどしそうだ。本当に触ったら、より熱を増すだろうと思ったが、頭の中だけにしておいた。

「それじゃあ、ついてきてくれ」

「わかった、着くまで姿をけしておる。」

俺達は、多田野家を目指して歩いた。光始めた街頭は、一人の影しか映さない。



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