オリジナルのフィーリオン
警告。
未確認の機体が多数接近中。
警告音と共に警告が表示される。
カイ「何かの警告か?」
シャル「どうやら味方が来たようですね」
カイ「こいつの言葉がわかるのか?」
シャル「少しならば。フィーリオンの情報は、ほとんど公開していませんが」
カイ「もしかして、フィーリオンって、これの他にもあるのか?」
シャル「おそらく」
カイ「おそらく?」
シャル「フィーリオンは元々、隣国、シーラディア王国が所有していたものです。シーラディアは以前から、我が国と反目していましたが我が国と比べ国力が小さいため
いつも小競り合い程度で終わっていました。ところが最近になって、謎の高性能の機体で我が国を徐々に侵略し始めたのです。
情報部の調査によると、その機体の名はフィーリオン。我が国の機動兵器の数段上の能力を持っているとのことです。
更に驚くべきことに、実戦配備されているのはフィーリオンの劣化コピーであり、その能力を遥かに上回るオリジナルのフィーリオンが存在するというのです」
カイ「ということは、この国にはフィーリオンはないのか?」
シャル「鹵獲したフィーリオンコピーなら、何体かあります。フィーリオンコピーは、この機体と内装から外装まで全く違うので、この機体をオリジナルと判断しました」
カイ「じゃあ、このフィーリオンは一体――」
ガシャン、ガシャンと音を立てて、多数の機動兵器が近づいてくる。
?「フィーリオンの搭乗者に告ぐ、直ちに投降せよ! 少しでも動けば敵対行動とみなし攻撃する」
カイ「みんな同じようなことを言うんだな、軍隊ってのは」
シャル「このボタンを押せば、外部と会話できるはずです」
シャルは何かのボタンを押す。
シャル「私はシャルロット・ゼノビア・アリエス。敵ではありませんよ」
?「シャルロット・ゼノビア・アリエス……じょ、女王陛下! な、なぜこのような所に」
シャル「カイ、ハッチを開けてください。顔を見せないと信用しないでしょう」
カイ「あ、ああ」
フィーリオンのハッチを開ける。
丸っこいロボットのカメラがズームする。
マイルズ少佐「おお、間違いなく女王陛下であられる。私は対シーラディア辺境警備隊、テッド・マイルズ少佐であります」
丸っこいロボットが敬礼をしている。
シャル「ご苦労、マイルズ少佐。見ての通りシーラディアの攻撃により町は酷い状態です。敵はフィーリオンコピー小隊で、大体は倒しました。この辺りの警戒の強化と住民の救助、支援をしてください」
マイルズ少佐「はっ! 警戒の強化と住民の救助、支援を行います。えっと、たった1体でフィーリオンコピー小隊を倒したのでありますか?」
シャル「ええ。後の事は中央に状況を報告して、指示を受けてください」
マイルズ少佐「はっ! あの、女王陛下はどうなさいますか?」
シャル「私のことはお構いなく。フィーリオンで帰りますから」
マイルズ少佐「はっ! お気をつけて、お帰りください!」
再び敬礼をしたあと、手を振っている。
シャル「ええ。ありがとう」
シャルの顔を、まじまじと見るカイ。
シャル「なんですか、人の顔をじろじろと」
カイ「いや、本当に女王陛下なんだなって」
シャル「もちろんですよ。疑っていたんですか? ふふふ」
シャルは上品に笑った。