歴史
カイ「……なんだって俺が？」
シャル「あなたの育ての親であるレオが強く関わっています。……話が長くなるので、先に住民の救助をしましょう」
カイ「怪我人の手当ては他の住民に任せて、瓦礫の撤去をした……なさった方がいい……よろしいのではないですか？」
シャル「普段と同じように話してください」
カイ「……そうさせてもらう」
フィーリオンを使い、瓦礫の撤去を始めた。
カイ「爺さんが関わっているというのは？」
シャル「レオ・バルカが、かつて我が国の首相であったことは知っていますね？」
カイ「ああ」
シャル「私宛のレオの遺言には、自分の死後、カイを首相にするようにとありました」
カイ「爺さんが俺を？」
シャル「ええ。我が国の法により、首相は次の首相を指名する権限と義務を持つのです。それにレオは自分の持てる内政や軍事の知識を全て渡したとありました」
カイ「確かに、爺さんには色々と教えられたけど……。爺さんとは血も繋がってないのに……。で、首相になって何をしろと？」
シャル「我が国の首相は、とても強い権限を持ちます。王と、ほぼ同じと思っていただいて結構です」
カイ「俺に、ほとんどの権利を委任すると？」
シャル「ええ。しかし、いきなり全てを任せると言われても困るでしょうから、制限させてもらいます」
カイ「制限？」
シャル「最初は首相のほとんど全ての権限を制限します。私や現場の指揮官が色々な指令を下します。その成果次第で制限を解除するという形をとらせてもらいます」
カイ「それにしても面倒すぎじゃないか？」
シャル「残念なことなのですが、アリエスも一枚岩というわけではないのです」
カイ「俺を首相にすることを反対している奴らがいると？」
シャル「ええ。私がここにお忍びで来ている理由もそこにあるのです。そして、そもそもレオ自体を快く思っていない者も多いのです」
カイ「爺さんが何かしたのか？」
シャル「レオは悪くないのです。あまり語りたくはないのですが、私の父、つまり亡き先王のせいなのです」
カイ「先王の？」
シャル「我が国は大陸随一の勢力と歴史を持っています。
その状況に甘え、周りの小国から利益は取り上げ、不利益は押し付けました。
徐々に周りの国が我が国に対して反抗するようになりました。
そして、先王の時代には武力をもって反抗するようになったのです。
レオや皆の尽力によって小国の鎮圧に成功しました。
首相になったレオは先王に周りの国に対して敬意を持って接するように助言しました。
ですが……」
カイ「助言を聞かなかったのか？」
シャル「先王は人として優しすぎたのです。
王に向いていなかったと言えるかもしれません。
側近達は自分達の利益のために、また小国に圧力をかけ始めたのです。
更に悪いことに、側近達は国内でも権力の乱用や賄賂などを横行しました。
その中には王族もいました。
そのこともあって、先王は事実を知っても、なかなか裁くことはできませんでした」
カイ「爺さんが代わりに裁いたのか」
