その名はフィーリオン
カイ「俺の攻撃で町の人が死んでないだろうか」
カイは町の人の被害は気になったが、町を破壊した者への感傷はなかった。
カイ「ここのパン、うまかったのに」
パン屋は看板が割れ、建物は見る影もなかった。
カイ「何も無くなったのか。俺と同じだな」
幸か不幸かカイにとって家族と呼べる者は、既に他界していた。
カイ「そうだ、あいつらは無事だろうか」
友人の安否が気になった。
1時間程前、爆音がして、サイレンが鳴り、町の住民は皆逃げ惑った。
カイ「あいつら、やっぱりあの機体を狙ってきたんだよな」
敵は建物は容赦なく破壊したが、逃げる人を狙い撃つようには見えなかった。
1日前、空から隕石が落ちてきた。
カイ「あいつらは隕石の中に、あの機体があると思って、この町を襲ったんだろうな」
実際には、あの機体と隕石とは関係がなかった。
カイ「爺さん、あの機体をどこから持ってきたんだか」
必要になったら使えと育ての親である、お爺さんに言われていた。
あの機体は、巨大なトレーラーに載せられて、廃工場に置かれていた。
カイ「誰もいないな」
少し見て回ったが、誰もいなかった。
遠くに逃げたのだろう。
その時、けたたましくサイレンが鳴った。
カイ「また敵襲か!?」
急いで、謎の機体に乗り込む。
ハッチを開けると、後部座席に何者かが乗っている。
カイ「誰だ!?」
?「少なくてもあなたの敵ではありませんよ。それに、自己紹介している場合ではないと思いますが?」
見るからに高級そうな服装に、フードのようなものを深くかぶっている。
声からして女だと思われる。
カイ「戦闘になるんだぞ? 降りた方がいい」
?「これはフィーリオンのオリジナル機体。外にいるより幾分安全だと判断します」
問答している場合ではない。
カイ「勝手にしろ!」
カイは搭乗席に着くと、レバーやボタンを乱雑に押し始めた。
?「もしかして、動かし方がわからないのですか?」
カイ「さっきはちゃんと動いたんだ」
?「強く念じるのです。感情を力に変えて」
カイ「そんなこと言われても」
?「何もせずとも、敵が来れば動くはずです」
敵別働隊長「救難信号が消えたのは、ここら辺だな?」
敵別働隊員1「あいつら先行した癖に救難信号だして、そのままロストするとはな」
敵別働隊員2「やられちまったんじゃないか? 功を焦りやがって」
隊員1「いたぞ! 目標発見!」
敵隊長「敵機に告ぐ、ただちに機体から降りろ。機体を動かした場合、敵対行動とみなし攻撃する!」
カイ「お前らこそ帰れ! 前の奴らみたいに消し飛ぶぞ!」
感情反応増大。
感情反応回路作動開始。
怒り、憎しみ、緊張、期待を波動に変換。
搭乗員二名。
感情誤差修正。
起動完了。
敵隊長「先行隊は、これにやられたようだな。なかなかいい機体のようだ。散開して攻撃。できるだけ壊すなよ」
敵隊員1「そりゃあ、相手次第ってもんでしょ」
敵隊員2「全くだ」
カイ「撃ってきやがった」
?「反撃するのです」
拾った機銃で攻撃する。
格闘攻撃をする。
光球で攻撃する。
カイ「機銃で攻撃する」
敵隊長「常に動き続けてかわせ!」
敵隊員1「硬いぞ! 効いているのか?」
フィーリオンに銃弾が当たるも、損傷は見られない。
フィーリオンが機銃で反撃する。
敵隊員2「うわぁああああ」
敵隊員1「2号機がやられた!」
敵機1体が大破。
敵隊長「なかなかやる! ならば、これならどうだ!」
隊長機の鋭い蹴りが入りバランスがくずれる、と同時にナイフによる斬撃を繰り出してきた。
カイ「ダメだ! イメージが間に合わない!」
ナイフがフィーリオンの装甲にめり込むが、軽い損傷。
敵隊長「まさか、オリジナル機体だとでもいうのか? 1号機、敵機と距離を取れ!」
敵隊員「いくら硬かろうと、この特殊徹甲弾なら!」
敵隊長「やめろ、うかつに近寄るな!」