七話「カゼハトラニシタガウ」
「何事も楽しまなきゃいけませんよね。特に、我々のような人種はね。ということで、クイズ形式で進行しようと思います。」
「ああ。分かった。」
昨日のブラックボックスの一件で、虎太の右腕は使いものにならなくなっているのじゃないかと、思っていたのだが。いつも通りの癖のまま、奴は眼鏡を上げていた。無用な心配だったようだ。
「まず第一問です。初めて会う敵と対峙して、すぐに相手が武器を突き出してきた。あなたはどうしますか?」
「………一応こちらも武器を出し、距離を取ってから、相手の出方を窺う。」
「零点。すなわち死を選んだということです。」
「(イラっ)何故だ?」
「それは、二重の意味で間違いだからです。一つは、相手に自分がシロだと教えてしまうことになる。もう一つは無防備になってしまうからです。」
「確かに、自らの手の内を晒すのは愚の骨頂かもしれないな。だが、二つ目はどういう意味なんだ。武器を手にしているのが、どうして無防備なんだ。」
「シロの武器は使用者の心を食い、その代価として力を与えるんですよ。すなわち、武器を練成するということは、相手を倒すという意思の元に与えられた力なのです。それは逆に言えば、防御を手離すことになる。そこで、クロが後方から不可避の仕掛けなりを発動させれば、死はあなたを逃がさない。圧倒的な武力を持つシロの弱点は、一点にしか集中出来ないことにあります。相手を倒す、だが自分の守りも固める。なんて中途半端な意思では、扱いきれないんですよ、シロの力は。一方では、クロはなんでも器用にこなせる。そこが怖い。」
「じゃあ、何が正解なんだ?」
「敵と対峙しないことですよ。」
「(右腕突いてみようかな~)」
「暗殺、これしか、あなたに勝ち目はない。」
「分かった。今の俺には姑息な真似をする以外無いと言いたいんだな。」
「分かって貰えて嬉しいです。第二問に行きましょう………………」
期限まであとわずか。明日は情報収集に走らなければ。。。