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ゲーム名「オセロ」  作者: wise
サイド編
6/14

六話「クモハリュウニシタガイ」

 猪に教えられた通りの場所にやってきた。そこは学校の近くの廃墟で、虎太はどっしりと構えて待っていた。

「予想より早かったですね。」

 白縁の眼鏡を、親指と薬指を使い、顔を覆うようにして上げている。奴の癖なのだろうか。細身で背の高い奴は、名前に似合わず落ち着いた雰囲気を醸し出している。俺の方に向き直し、残念そうに言い放った。

「このままゲームオーバーでも、僕は全然構わなかったのですが。」

「そうなったらお前らが困るんじゃないのか?」

「いえいえ、辰くんと猪ちゃんは面倒事が嫌なだけなんですよ。でも、こんな事になってしまうなら、新しい人間を探した方が良いと、私は思いますがね。」

「すまないな。なんせビギナーもんで。でも、お前の予想は超えているんだろう?」

「ええ。少しだけですよ。猪ちゃんに殺されると思ってました。」

「殺される相手がお前に変わったとでも言いたいのか?生憎だな。」

 虎太は純白の手袋を右手にはめた。戦いの準備なのだろう。だが、俺は猪に勝ったのだ。今なら奴にも勝てる気がする。

「じゃあ、手合せと行こうぜ。」

「何をおっしゃてるんです?僕とあなたが戦う理由はないでしょ。僕の役目はシロについての指南だけ。今日はただ、ちょこっと技を見せるだけですよ。」

 左手には白い棒が握られていた。

「僕はこれを、うんりゅうふうと名付けている。君も、猪ちゃんから名付けによるパイプの広げ方を聞いてますよね?」

「ああ。」

「いいです。じゃあ、うんちゃんの力を見せてあげましょう。」

「略すところはそこなのね。」

「じゃあ、行きますよ。でも、その前に、これはブラックボックスというものです。一時的にクロの力を借りれる便利な道具です。うちのグループが開発したもので、使用者によって負う代償にとても大きな差がある危険な代物です。」

 右手には黒い箱が握られていた。

「これは猪ちゃんから借りた力です。近隣住民への配慮です♪」

 俺は奴から距離を取った。それを見てから、虎太はその箱を思い切り握りつぶし声を張り上げた。

「我に従え。ゾーン!!!」

 寒気の訪れと共に、廃墟はその姿を消していく。猪に連れていかれた、あの場所だ。しかし、少し違っていた。突然虎太が膝から崩れ落ちた。

「グっ」

 痛みに耐えるその声はまさしく虎太からだった。血に染まった右手を押さえていた。これはブラックボックスの副作用なのか?

「お前は、何でそんなもんこんな時に使ってんだよ!?」

「しっ、仕方ないでしょ。いつかは使わなきゃならない。いざって時に初めて使うなんてナンセンスですからね。試してみたかったんですよ。」

「じゃあ、今度こそ行きますよ、ハアハア。」

「大丈夫なのか?」

「ええ、これしき、辰に比べれば。」

 棒で地面を突くと虎太は大きく舞い上がった、そして、地面に鋭い突きを放った。その跡は、爆心地の様相を呈していた。

「これが、クロとシロの武力差です。猪ちゃんに勝ったのは当たり前。ただし、能力を使う猪ちゃんにあなたが勝てる道理はありませんけどね。」

 俺は興奮していた。

「明日からは、クロとの戦闘で気を付けるべきことを教えます。出来が良ければ、明後日には出陣ですよ。では、私はこれで失礼します。」

 もう昨日の憂慮は消え去っていた。圧倒的パワーを前にして、胸がざわめく俺がいた。



 虎太はすぐさま、右腕を切り落とした。その腕は黒く変色し腐っていたからだ。心臓まで届く勢いだった。

「あ~あ。いざって時に使う方がセンスありましたね。」

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