卵の孵化には遅れずに
俺は今コーラル村の広場にいる。
「まずここは広場です。ここからいろんなお店に行けます。」
「たとえば?」
「武器屋、ポーション屋、卵の孵化工場などです。」
「孵化工場?」
どんな所だろ、ゲームでは詳しく描かれてなかったからな。
「はい、モンスターの卵を孵化させる場所です。今からそこに行きます。」
「分かった。」
~卵の孵化工場~
孵化工場は大きな小屋と小さな小屋が複数あった。今いるのは大きな小屋で、小さな小屋は中から暖かそうな光が漏れていた。多分、あの小屋で卵を孵化させるのだろう。
「こんにちは、カーネル。」
「おや、どうしたのアリシアちゃん?」
カーネルと呼ばれた少年は緑色の髪、緑色の瞳をしていた。ゲームの登場キャラだ。
「卵を孵化したいのですが。」
「どんな卵?」
アリシアは俺を見る。
「ん?ああ。」
俺は持っていた卵をカーネルに渡す。
「ん?君は?」
「俺の名前は赤道 仁だ。えっと竜使いの勇者だ。」
「えっ!この人が!?・・・ということはこの卵は竜の卵!?」
「ええ。」
「お父さん!ちょっと来てよ!」
「何だ、何だ。」
「竜の卵だよ!」
奥の小屋からこちらに来たのは大柄な男で髪も瞳もカーネルと同じ色をしていた。
俺はこの人物を知らない。ゲームでは出てこなかった。
「見せてくれ。」
父親は卵を観察する。
「これは本物だな。持ち主は?」
「俺だ。」
「あんたは?」
「竜使いの勇者だってさ、名前はジン。」
カーネルが説明する。
「よろしくな、ジン。俺の名前はグリムだ。」
「よろしく、グリムさん。」
「で、この卵を孵化させるのか?」
「ああ、頼む。」
「孵化が始まるまでおそらくあと三日だ。」
「遅れずに来いよ。竜は始めて見た者を親、飼い主と認識するからな。」
「あ、ああ、分かった。」
「じゃあ次は武器屋を案内します。」
「ああ、頼む。」