仕事
ピーピーッ。ピーピーッ。
私は手を伸ばして、目覚まし時計のスイッチを押した。
布団の中はホカホカのちょうどよく温まっていて、少し布団から出るのを躊躇った
だが、いつまでも布団を恋しがっていても仕方ないので、ゆっくりと身体を起こした。
なんでも、急に起きあがると身体によくないらしいので、私は10秒ほどかけて起きあがる。
夢を見た気がするが、よく覚えていない。夢を覚えているほうが熟睡できていないらしいので、身体が休まるくらいは寝れたということだろう。
布団から出ると、パジャマから作業着という名のTシャツと動きやすいズボンにチェンジする。そのチェンジでやっと仕事のやる気が出てくる。
朝食はパンとお湯をいれるだけのスープ出済ませた。本当は豆から挽いたコーヒーを堪能してから行きたいものだが、時間が惜しいのでパンとスープだけにした。
仕事へは車で行く。この地方は平らな場所がほとんどなく、山を登り下りする事が多いので、自転車や徒歩では出勤できない。ジョギングをしながら仕事場まで行けばいいかなと、最初は思ったが、行きはよいよいの下り坂だが、帰りは恐怖の上り坂。これではさすがに無理だと思い、車での通勤にした。
私が働いているのは、全国チェーン店のハンバーガーショップ。十時の開店に間に合うように、前の日に使ったタオル類が乾かしてあるので、それを取り込み、私は店内の掃除を始める。
まず、濡れモップで店内を隅々拭き、次に円盤状のスポンジが回転して床を磨く。これが意外と体力を使い、いつもこの時点で汗で作業着がビショビショになる。
そのとき
「おはようございます。」
とマネージャーの鈴木さんがやってきた。彼女は中での準備をしなければならないのだが、いつも遅くきて、適当に準備を終わらせる。
昼間はマネージャーが店を切り盛りしている部分があり、昼間はマネージャーのいう事がすべて正しいのである。
掃除の続きはテーブルや椅子を定位置に置き、テーブルを全て拭く。最後にトイレを掃除して 、掃除は終わりだ。
急いでスタッフルームに行き、接客用の服に着替える。ポロシャツにキュロットという格好になり、長い髪を束ね、帽子を被り、鏡の前で最後の確認をする。
調理場に入る前に暗記してある営業方針を言って、やっと中に入れる。
十時ぴったりに開店。っと言っても平日の朝十時にはなかなかお客様は来ない。その間にコーヒー豆や持ち帰り用の袋などを補充する。
ケーキなどを補充する時が一番イヤだ。氷点下の冷凍庫の中に入り、ケーキを取って帰ってくる。そして、レジ近くの冷凍庫に入れる 。
長針と短針が真上を向く午後十二時。私達は昼ピーと呼んでいる。
その忙しさは半端ではない。ドライブスルーは列ができ、店内は人で溢れ、あとからきたスタッフ三人が加わっても対応しきれない。
今日は平日だからまだいいものの、土日祝日はこんなものではないらしい。でも、そんなもの比べてても仕方がない。どんどんやってくるお客にてんてこ舞いだ。
今日は暑いためか、シェイクが飛ぶように売れた。そんなことを予想していなかった私は忙しい中シェイクの残量を見てみた。なんと、もう底が見えてしまうのではないか、というほどシェイクの残量が減っていた。
どうしよう。
レジにはもうお客がイライラしながら、待っていた。目が早くしろっと言っているようだ。
レジはしなくてはならない。でもシェイクの補充もしなくてはならない。
私は身体が動かなくなっていた。
鈴木さんがそれを察知したのか
「水谷さん。早くレジ入りなさい。」
「でも、シェイクが…」
「シェイクがなに!?」
鈴木さんのイライラが伝わってきて、心臓がつぶれそうなほど痛かった。
「シェイクの残量がないんです。」
「じゃあ、栄口さん。シェイク補充して。」
ちょうどドライブスルーが落ち着いてきて、栄口さんは何も言わず、シェイク補充をしに行った。
午後一時半。
だいぶお客の入れ替わりがなくなり、コーヒーを飲みながら本を読んだりするブレイクタイムの人たちが店内に残った。
「今日の天気予報みてないの!?ここまで気温上がるなら、シェイクが売れるって想像できるよね?」
鈴木さんの声がスタッフルームに響く。
「水谷さん二時上がりだったわね。もう帰っていいわよ。明日はしっかりしてちょうだい。」
「お疲れ様でした。」
鈴木さんは何も言わず言ってしまい、私は帰り支度をして、そのまま病院に向かった。
「水谷さん。こちらへどうぞ」
看護婦さんに呼ばれ、私は診察室に入った。
「どうしましたか?また泣いたんですね。」
私の目は真っ赤になり、泣いていたのがすぐにわかるほどだった。
「先生。もっと頓服を増やしてください。」
「それはできませんね。食後の薬を少し変えてみますね。」
「わかりました。ありがとうございました。」
会計を済ませ、私は羽場心療内科を出た。
私は躁鬱です。
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