1st Game 『スタートライン』
「あなたの目的はJOKERの所有者の殺害です」
携帯を耳にあて、その声をただ呆然と聞いていた。
「さ、殺害!?ど、どう言うことだよ!おい!」
少年の問いかけに携帯が答えることはなかった。
それ以降、何も話してこない携帯をただ握り締め、少年はその場に立ち尽くしていた。
今語られたことが真実なのか、嘘なのか。
これは現実なのかすら、今の少年には分からなかった。
少年しかいない殺風景な部屋に、静寂が戻った……。
そこで少年は目が覚めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ……
ピッ。
ベッドのすぐ傍に置いておいた携帯のアラームを止める。
総一は体を少し起こし、壁に掛けてある時計を見た。
時刻は…6時40分か…
「ふぁ~ぁ、……いやな夢だ。」
昨日起こってしまった現実を再度夢でみて、桜井総一は気分がわるくなった。
「しかし、やっぱり夢じゃないんだな…」
総一はまだ眠たい体をベットから起こし
俺は机の上にある、普通ではありえない物体を見て苦笑した。
「これ、やっぱり本物だよな…。重いし、弾丸もしっかりとあるし…」
そこには、拳銃と呼ばれる物があった。
多分、その拳銃はベレッタと呼ばれる拳銃なのだろう。
普通なら拳銃を見たら慌てたりするのだろうが総一は慌てることはなかった。
拳銃をみて総一はすぐにそれが昨日に関係しているのだと分かった。
そして、その横に自分の携帯とは違う、黒い携帯が置かれている。
「Aか…。そして、JOKERの殺害」
総一はそう呟くと、机のほうに歩き、黒い携帯を手に取った。
携帯を開くと、待受にはトランプのエースの絵柄と文字が写しだされている。
その携帯は普通の携帯とは違い通話することも出来ず、メールなどの機能も存在していないようだった。
「やっぱり昨日のことは本当なのか?」
黒い携帯のメニューを開き、目的の欄を押した。そこには
目的
ジョーカーの所有者の殺害
「殺害って。やっぱり人だよな…。本当に殺せってことなのかよ。」
到底、信じることはできなかった。人を殺すなんて、アニメやドラマでしか見たことがない。
しかし、現に今ここに拳銃があり、この不思議な携帯もある。
これが現実なら信じるのには十分すぎるくらいの物がそこにはあった。
総一は少しの間、携帯をいじったり銃を見たりして考えていたのだが
結局これが真実なのかは分からなかった。
「まぁ、とりあえずは考えても仕方ないか。」
今まで見ていた携帯から目を逸らし
時計を見ると、6時55分を回っていた。
「まっ、考えても分からんし飯でも食べるかな」
黒い携帯の画面を閉じ、一旦頭を冷やすためと、
朝ごはんを作るために総一は台所に移動したのだった……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
桜井総一
千華高校の2年生
頭は良くないが、運動神経はすこしの自信がある。
両親は総一が幼稚園の時に離婚。
以降、母親との二人暮らしだったが、中学生の時に、ガンにより
母親が亡くなってしまった。
その後、母親の友達、月子さんに引き取られた。
月子さんはアパートの大家であり、俺に住めるようにと部屋を
無料で貸して下さっている。
学校への学費などは、親が貯金してくれていたおかげで
学校に通えている。まあ、3年生まではなんとかなりそうだ。
そんな2年生の5月20日
昨日のことである
5月20日 放課後
「……う~ん、ここは…?」
起きた所は、自分の家ではなく牢獄のような殺風景な部屋だった。
部屋はやや寒く、壁からくる冷たさがより一層、緊張感を醸し出している。
部屋にはドアなどもなく、まさに大きな穴にでも落ちたみたいだ。
「…えっ、どこだここ!! あっ、俺の部屋ではないし…
マジか! まさか誘拐?嘘だろ。たしか学校が終わって帰ろうと
して、校門を出て……出て、どうしたんだ!」
完全にパニック状態になり、何を言っているのか自分でもわからない。
だが、時間が経つにつれて落ち着きを徐々に取り戻すことができた。
落ち着きを完全に取り戻したのはそれから、15分後。
「机の上になにかあるな…。」
今まで興奮のあまり気づかなかったのだが、部屋の中心に汚れた机があり、
その上に黒い物体が置かれていた。
総一はあまりのショックに疲れていたのだが、この状況下なにかの手がかりでもあればと思い
最初に寝かされていたベットから体を起こし、机に近づいた。
「なんだこれ、携帯かな?」
警戒もせずに総一は机に置かれたそれを掴んでしまった。
その瞬間
ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ……
「うおっ!なんだ!」
携帯らしきそれが急に鳴り出した。
そのバイブレーションはまるで、早く出ろといっているようだった。
そして、その携帯を開き……
通話ボタンを押してしまった。
「あなたは、13人の一人に選ばれました。………」
気づいたとき、そこは自分の部屋だった。時刻は11時59分
今までのことはすべて夢だと思ったのだが、机に置いてある先ほどの携帯と
拳銃を見て、夢でないことを確認した。
驚きはしたが、それよりも眠気が襲ってきて。
総一はそのまま眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、とりあえずいくか。」
朝飯を食べ終わり、その後シャワーを浴びたあと、制服に着替えた。
なにも変わらない、いつもの生活。ただ変わったのは…
「持っていくか?こいつ。」
総一は自分の机の上に置いてあった、あの黒い携帯をポケットにしまう。
まだ携帯の内容は半信半疑だったが、なぜか置いては置けないと思ったのだ。
「こいつは、無理だな。こいつは…」
机に置いてある、禍々しい銃を机の引き出しにしまった。
とりあえずだよ、とりあえず。
本物だったら危ないしな。
「よし。行くかな?」
部屋に鍵を掛け、大家さんである月子さんに挨拶をして
学校へ登校するのだった。
今はまだわからなかったが、
総一にとって長い一日の始まりである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「へ~、あれがAの所有者か。」
通学路の近くにあるマンションの屋上から、総一を見つめる一人の少女がいた。
「面白そうな子。また会いましょう。そ、う、い、ち、くんっ」
物語はようやくスタートラインにたったのだ。
ようやく、本題を書き始めました~ 作るのって難しいですね。
少しずつではありますが、連載していくので
よろしくお願いします。