みどりの日
井野嶽幌は、双子の姉の桜と共に家でのんびりとしていた。
「幌ー、今日のご飯はー?」
桜が、台所にいる幌に、ソファでくつろぎながら聞いた。
「アスパラガスのバターソテー、グリーンピースとキャベツの味噌汁、あ、大根も入ってるよ、それと、ご飯と鯖の味噌煮」
「なんか今日は緑物が多いね。どうして?」
「今日は「みどりの日」だからかな。まあ、それはきっと偶然だろうけどな」
「みどりの日かぁ。ああ、だから、今日はテレビでも、公園の話題とか、森林の話とかが多いのかな」
「それはどうかは知らないけど、「自然にしたしむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」ことが目的だから、そういう話があっても不思議じゃないか」
「そうだねぇ。それよりもご飯はいつできる?」
「いつもどおりかな」
テレビの声が、急に無くなる。
「じゃあ、それまで幌と一緒にいたいなー」
「包丁持ってるから危ないよ」
幌が、利き手で持っている包丁をぎらつかせながら桜に近づいた。
「じゃあ、部屋にいるから、できたら呼んで」
残念そうな表情で、桜が自室へ引っ込んだ。