【幻風景】読書家の優越
読書家なら誰しも経験があるだろう。いわゆる本雪崩。
読書家というのは本をため込む性質を持つ。欲しい本があれば即座に買うし、欲しくない本でも手に入れたくなる。
すると必然、本棚から本が溢れるようになる。仕方がないから押入れに、食器棚に、風呂にまで本が浸食。床にはうずたかい本のタワーが何基と建立される。
そこで起こるのが本の災害、本雪崩だ。地震で、もしくはちょっとしたきっかけで、積み上げた本が崩れ落ちる。
この瞬間というのは、自分でわざと崩したのではいけない。自然現象、もしくは重力の見えざる手により起こらねばならないのだ。それはまさに、見知らぬ本との出会い、セレンディピティにも似ている。
確かに本雪崩によって最悪、命を落とす読書家すらいるだろう。だが本雪崩の起こる瞬間こそ、読書家の本懐。このくらい味わわないで、読書家は名乗れない。
……と書かれた本を読んで、僕は満足していた。どうやら、僕もこれでいっぱしの読書家らしい。
崩れてきた本の中でうなずく。
さて次はどうやって埋もれた本の中から出よう。全く動けないぞ。周囲の地層ならぬ本層は分厚く、びくともしない。何なら自分が上下左右どちらを向いているのかも分からない。
確かこのへんに、「埋もれた本からの脱出法」という本があったはずなんだ。どこかな。分からないぞ。やっぱり多少は片付けるべきだったか。
仕方ない。一冊一冊、読みながら探すとしよう。
と手元の本を閉じた。タイトルは
「読書家の優越 みんなと違った読書で差を付けよう!」




