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『設備転生』 〜チートなしの現場無双で異世界快適計画〜 41歳設備屋 ハイエースの工具だけで魔法世界のインフラを完遂する  作者: らいすクリーム


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第11話【剣術大会の足音と、エナが練り上げる『黄金の弾力』】

 アキラがグランの元で暮らすようになって、数日が経った。毎日グラン工房の手伝いをして、鍛冶仕事を覚えつつエレメント錬成にも没頭していた。


 何度も繰り返しエレメント錬成をしてわかったこと。それは精製ともいうべき効果があるということだった。


 例えば水のエレメントを手に錬成すると飲み水に適した水ができる。純水またはそれに近いものだとアキラは考えた。飲めることを確認した後、試しにその水で絞った雑巾で車の窓ガラスを拭き取った時、拭き残しが出来なかったからだ。


 砂のエレメント錬成でも、ただの砂が出てくるのではなく均一な砂が得られることが分かったし、火のエレメントと水のエレメントを錬成したときは、ぬるま湯だったり熱湯だったりをイメージである程度コントロールできることも分かった。


 相変わらずエナはグラン工房へ頻繁に足を運んでくる。街から離れたグラン工房のニュースソースはエナのおしゃべりといってもよかった。


 エナの話では近々『星鉄会(せいてつかい)』というイベントが行われるそうだ。これは衛兵の実力を試す剣術大会であるとともに、平民であっても実力で騎士になれる編入テストも兼ねているという。毎年優勝したものには騎士への道が開かれる熱いイベントなんだそうだ。


 そして、それよりも盛り上がる星鉄会のメインイベントがあるのだとギムレットが言う。



「星鉄会のメインイベントは、王宮騎士団と宮廷騎士団の代表が争う一騎打ちじゃ」


「王宮と宮廷?二つの騎士団があるんですか?」



「王宮騎士団は、城を守る華やかな甲冑を着たエリートたちよ。そして宮廷騎士団は、王の側近。政治的な力も持ち、儀式や公務に同行するまさに結晶王国クリスタニアの顔となる騎士。

 あたしの所属している宮廷魔術師団も王の側近という位置づけね」


「エナ……王の側近魔術師でその中のナンバー2って、凄い立場なんだな」



「どお、少しは見直した?」


「見直したけど、毎日のようにここに遊びに来てて大丈夫なのか」



「そ、それはこの前説明したわよね!あたしはこれでいいの、こういう調整役なの」


「緩くていいよなぁ」



「アキラだって緩く暮らしてるでしょうが」


「うっ、それを言われると反論できない……」



「グランはせっせと納品で街に出かけてるのにねー。アキラはお家でゆっくりかしら」


「アキラはわいらと鍛冶仕事をがんばっておるぞ。最近は取っ手付きで手袋要らずのスキレットも考案したしのう」



 この世界のフライパンやスキレットは、ガスコンロのように火の上に置くタイプではなく、暖炉の中に入れたりすることが多く、取っ手も熱い鉄のまま。手袋を使用することが普通だった。


「まだ試作段階ですけどね、暖炉の火が強くて持ち手の木が焦げやすくて」



「しかし毎年とは言え、今年の星鉄会も楽しみじゃわい」


 ギムレットは息を荒くする。だいぶ思い入れが強いイベントのようだ。



「城を守る王宮騎士と、王を守る宮廷騎士か……(よくわからないが警視庁と警察庁みたいなもんかな、警察とSPみたいな)」


「今年は若き王宮騎士団隊長レオン・ヴァリエールが、ついに宮廷騎士団隊長の剣聖『白銀』を倒すという大方の予想じゃ」



「レオンと白銀……ですか」


「白銀はわいら年寄りの期待を背負って戦っておる。古き剣聖なんじゃ。じゃが老いには勝てんでのう。去年の引き分けでついに連勝の記録が途絶えてしまったんじゃ」



「それで今年はレオンが勝つという予想なんですね」


「オッズはそうなっておる。じゃが、わいらは皆、白銀の勝ちを願っておるがのう」



「オッズって……賭けてるんですか」


「星鉄会はお祭りみたいなもんじゃからの」



「まさか違法な賭博?」


「何を言っておる、伝統、合法じゃ」



 エナが種類ごとに分けて、かごいっぱいに集めてあったエレメントに気づく。



「ところでアキラ、そこに集めてあるエレメントは?最近は何を錬成してるの?」


「ゴムを作ろうとしてるんだ、この世界にはまだないからね」



「ゴム?」


「エナ、わいが使っているこれを見てみろ。ゴムの手袋じゃ」



 ギムレットは無駄がなく手の形とそっくりな上質な手袋を手にしていた。それはアキラからもらったものだった。


「なにその手袋、妙な艶がある。革製じゃない……」



「そうじゃ、これがゴムを使った手袋じゃ。この手袋のおかげで握力が弱ったわいでも昔と変わらん重さのハンマーを使えておるのじゃ」


「ほんとだわ。ギムレット、それ彫金じゃなく鍛冶仕事じゃない!手のすじのケガは治ったの?」



「このゴム手袋のおかげで、わいの死にかけとった手首と指が生き返ったようじゃ。握り込む力が逃げんから、若い頃の感覚で打てるんじゃ」


「俺が仕事用に持ってるのをグランとギムレットに分けたんだよ。手首にベルトが付いていて手首もサポートするから、ゴムの効果とベルトのサポート両方がギムレットに良かったのかもしれない」



「なにそれ、あたしにも頂戴!」


「エナはそもそも力仕事しないでしょ。それにあんな重い杖、普通に振り回せるんだからゴムの滑り止めはいらない」



「アキラって意外にケチなのねー」


「何かもっと女の子に合いそうなものを考えておくよ。仕事用の手袋なんだよこれは」



「まぁいいけど。それで、エレメント錬成でゴムは作り出せたの?」


「あと一歩なんだよね……素材は間違えてないと思うんだ。出来上がったものが柔らかすぎたり硬すぎたりで……失敗の副産物でコーキングは出来たんだけど」



「こーきんぐ?」


「ああ、それはまた今度ね。今作りたいのはゴムだから」



「じゃあ、あたしにやらせてよ錬成。たぶん色々とアキラよりはできると思うのよね」


「なんか、ほんのちょっとだけ棘のある言い方だなぁ」



「いいからゴムの特徴を教えなさいよ」


 アキラはポケットから取り出した自分用のゴム手袋をエナに渡した。



「今作りたいゴムというのはこういう手や物に触れた時に密着して滑らないもの。そして伸びて元に戻る弾力があるもの、それでいて水を弾いて混じらないもの。火と硫黄のエレメントを加えて、近いところまでは行けたと思ったんだけど、最終的に満足できるものができなくて……」


「ゴムがあれば、わいらの手袋のように楽に仕事ができるんじゃがのう。アキラが持っているハンマーも持ち手がゴムで滑らんのじゃ。ありゃ最高じゃ」



「この感触ね……わかった……」



 アキラは自分が集めてきた数種類のエレメントをテーブルに乗せた。透明、黒、赤、水色、乳白色、茶褐色……様々な色のエレメント。エナはその前に立ち目を閉じ集中した。



「伸びて、もとに戻る、滑りにくい、水と混じらない……よし!」



 イメージが頭の中に出来上がった瞬間に氣を練りエレメント錬成するエナ。すると目の前に集められた様々なエレメントが、うねりながら色と形を変え、茶色の物体が出来上がった。



「どうかしら?」



 アキラは出来上がった物体を手に取った。見た目の大きさより少し重さを感じる。握って弾力のある物体。そしておもむろにテーブルに落とす。



 ボウン!



 と一回弾んで、震えるようにテーブルに転がった。



「おおおおお!出来た!ゴムだ!!」



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