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『1000年ぼっちしてた魔王龍ちゃん、現代でダンジョン配信しながらスローライフを始めます!』~最強だけど寂しがり屋のドラゴン娘を拾ったんだが、現代生活を満喫してる件~  作者: ゆーしゃエホーマキ
◇ニンゲンはドラゴンを手に入れた!▶餌付けする

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#07. ドラゴンは卵生です。つまりおっぱいは飾りです。


 そこは都内某所にあるアパートの201号室。

 洋室の居間が十畳ほどある1Kの部屋は一人暮らしには充分な広さだ。

 ミルキーな白い壁に合わせたベージュ色のカーテンの隙間からは眩い朝日が差し込み、小鳥がベランダの腰壁にでも留まっているのかチュンチュンと可愛らしく鳴いている。

 青空は澄み切っていて、気持ちのいい朝だ。

 しかし家主、小鳥遊辰樹は唸っていた。


 ――息苦しい。

 顔に何か、クッションのようなものを押し付けられている。

 だがクッションにしては柔らかく、暖かい。

 そして重い。大玉のスイカくらいはありそうだ。

 なんとか押しのけようと手を伸ばすが、ずぶりと指が沈み込んで上手く押し返せない。


「ぅ、ぐ……くるし……うぅ、なんだこれ……ハッ?」


 さすがに苦しいと目を覚まし、辰樹は思考停止した。

 床で寝ていた辰樹の上に覆い被さっていたのは、ベッドを独占していたはずのドラゴン娘。ルルト。

 変身魔法によって人間態、少女の姿になっているルルトはベッドから転げ落ち、辰樹を抱き枕代わりにしていたのだ。


「ぉ、あ……??」

「むにゃあ……」


 手のひらいっぱいに感じる柔らかい感触が、止まった思考を再び回転させる。

 手で押し返そうとしていたのは、つまるところ、ルルトの小柄な身体に不釣り合いなほどたわわに実った胸だった。


「ゥォオオアアアアーーーーッ!!?」


 ニワトリ顔負けの目覚ましアラームが響き渡る。

 こうして、辰樹とルルトの騒がしい一日が始まった。



  ■■■



「――なあ、辰樹よ。なんでだ? なんで額を床につけ丸くなっているのだ?」

「それは女の子のおっ……胸を揉みしだいたからです。というかよく考えれば家に連れ込んでる時点で傍から見れば事案だ……なのでこうして無抵抗になり、謝罪の意を示している」

「よくわからんが、この世界の倫理観なのだろうな。それができる辰樹はえらいと思うぞ。でも余は気にしてないから顔を上げてくれ」

「お願いします頭を下げさせてください。まだ手に感触が残っていてまともにルルトの顔を見れそうにありません」

「何もそこまで気負う必要はないだろう。ここから乳が出るわけでもあるまいし」

「いやしかしだな……え、出ないの?」

「だって余、卵生だし……」

「あぁー……」


 考えてみれば当然のことだった。

 ドラゴンは卵生。言ってしまえば爬虫類に近い。

 そもそも胸――いや乳房という器官がないのだ。


「え、じゃあ……なんでそんなに胸があるんだ? あぁいや、あれか、ルルトがあんなにデッカいドラゴンだからか?」

「この胸は余の魔力炉……まあ、火炎袋のようなものが詰まってる。ドラゴンの肉体を人間のサイズに縮めるのは苦労するが、ここだけはこれ以上縮められなくてな」

「な、なるほど……いや? そんなに縮めるのキツいならもっと身長を大きくしたらいいんじゃ……? 見るからに子どもの背丈より、お姉さんっぽくした方がこう、バランスもいいだろ……?」

「あ~……」


 それはそうだな~、なんて呟きながら目を逸らす。


「いやな? 人間の大きさはこれくらいだろと思って変身したんだが……ちょっと小さくしすぎてな……正直、辰樹を見上げた時にサイズ感間違えたなと焦った」

「ドラゴン基準の人間サイズで考えてたわけだ……それなら今からでも……あ、ダメだ。配信にガッツリ映ってたから今から変えたら不自然だな……」

「あっはっは! 失敗したな~」


 ルルトは笑いながら自分の胸をたぷたぷと持ち上げる。

 柔らかく躍動するそれに辰樹はたじろぐが、理性を持って静かに目を逸らした。


「コホン。まあ、最近の子は発育がいいということで押し通ろう。だけどそうなると困ったな……」

「な、なにか不都合があるのか?」

「……ルルトの服をどう調達しようかと」


 さすがに裸マントはいかんだろと帰宅早々に着替えさせたので、現在ルルトは辰樹のTシャツを借りている。

 これは酔った勢いで買ったもので、焼肉のイラストに『だぶるかるび』とゆるいひらがなフォントでプリントされた変なTシャツだ。

 オーバーサイズなので着る時に頭のツノも引っかかりにくく、ルルトが着れば胸で裾が持ち上がってもギリギリスカートになる。

 が、当然ルルトは下着を着けていない。

 ズボンだけでも穿かせようともしたが、さすがにウエストが合わず断念したのだ。


「この服じゃダメなのか?」


 と、ルルトは《だぶるかるびTシャツ》の襟を引っ張ってくんくん匂いを嗅ぐ。

 ただでさえギリギリなのに引っ張られるもんだから、裾はスルスルと持ち上がり――――見えそうになったところで、辰樹はルルトの手を掴んで制した。


「下見えるから、その、あんまり引っ張るな」

「おぉ、そうか見えちゃダメなんだな」

「うん。絶対外でやらないでくれよ……?」

「安心しろ。辰樹にしかこんな隙は見せん」


 それはそれでどうなのだろう。

 形容しがたい衝撃が辰樹の頭をノックする。


「昨晩のうちに契約は済ませたのでな。これからは身体に触れた程度で頭を下げるんじゃないぞ。余はもう辰樹のものなのだから」

「まあ、ルルトが言うなら気にしないことにす――――今なんて……?」

「契約は済ませた。小鳥遊辰樹、余はお前の所有物だ」

「は、話が見えないんだが? いや、ホントなんでそんなことになってるんだ?!」


 寝てる間にドラゴンテイマーにジョブチェンジしたらしい辰樹は慌ててルルトを問いただす。


「昨日の件で余は理解した。この世界でやっていくには辰樹が居なければならないと。だが辰樹にはそうするメリットがない」

「う、うん。そうかも?」

「だからなるべく迷惑をかけないため、隷属の契約魔法で縛りを設けた。余は主人である辰樹の許しがない限り、魔法を行使できない。隷属の契約ゆえ、余は辰樹に逆らえない……いや逆らわない」


 淡々と契約内容を述べながら、ルルトはジッと辰樹を見つめる。


「この身体と力、余が持つ全ての権利を辰樹に委ねる。左手の紋様はその証だ」


 辰樹は言われるがまま自身の左手を見ると、薬指にまるで指輪のようなタトゥーが刻まれていた。


「……マジか」

「もし()()()()の姿の方が好みなら、そう命じれば余は変身する。好きに使ってくれ」

「い、一旦使うとかは置いといて……本当にいいのか? 俺はただの人間だぞ」

「辰樹がいいのだ。あの時、余の話し相手になり、余のために頭を下げてくれた辰樹しかおらんのだ」


 ――だから、とルルトは微笑む。


「これからよろしく頼むぞ、主様っ!」


 朝一番のその衝撃は、辰樹の脳を揺るがした。

 キャパオーバーになって両手で顔を覆い、天を仰ぐ。

 ドラゴンを手に入れてしまった。文字通り。

 この先どうなるか皆目見当もつかないが、ひとまず、これだけは言っておこう。


「主様はやめてくれ……」


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