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『1000年ぼっちしてた魔王龍ちゃん、現代でダンジョン配信しながらスローライフを始めます!』~最強だけど寂しがり屋のドラゴン娘を拾ったんだが、現代生活を満喫してる件~  作者: ゆーしゃエホーマキ
◇とてもつよいドラゴンがあらわれた!▶話し合う

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#04. 主役は遅れてやってくる?


 ルルトが突撃したのは、封印されていたダンジョンのゲートから駅を二つほど過ぎた街の、ビル建設現場に現れた大規模ダンジョン。

 内部は複雑に入り組んだ大遺跡だ。

 見かけるモンスターは凶悪な奴らばかり。

 ダンジョン災害対策本部である《ギルド》が認めた特記戦力の冒険者、スレイヤーが宛てがわれるのは必然だった。

 そんなダンジョンを新米配信者、もといドラゴン娘のルルトは愉快に闊歩(かっぽ)する。

 しかし彼女の存在は、既に先行している冒険者に知られていた。

 

「――リーダー、ダンジョンの危険度が増した。何か出たらしい」


 淡々とした重厚感のある声。

 大柄な体躯を鋼のフルプレートアーマーに包んだ男は、後方を見やりながら報せる。

 腰に得物であろう手斧を下げていた。

 リーダーと呼ばれたのは、黒髪をストレートのセミロングにした女剣士。

 鎧の男に比べるとこちらは軽装。

 身を保護するようなアーマーはなく、ワンピースのような軍服を着て、腰に大きなベルトを巻いているだけだ。

 ベルトには長剣の鞘が取り付けられ、女剣士は長剣の柄に触れたまま男を見やる。


「先輩の【第六感(ハイパーセンス)】が無視できないほどの?」

「先輩はやめろ。お前は討伐者(スレイヤー)、俺より立場が上だ」

「む」


 女剣士の墨を一滴垂らしたような黒い瞳は睥睨しているかのような威圧感を放っているが、鎧の男はたじろぐ様子もなく、指でバッテンを作った。

 不満そうに目元を細める女剣士だが、鎧の男は気にせず続ける。


「おそらくゲート付近。もしモンスターなら、ゲートを抜ける危険がある。無視はできない」

「冒険者、だったら?」

「俺の知る限りでは、他のスレイヤーは別のダンジョンを攻略中だ。それにお前が宛てがわれた以上、他の奴を呼ぶ必要がない」

「……そう。漁夫の利狙いの人かもしれないけど」

「そんな奴が俺のスキルに反応するなら、漁夫の利なんかしてないで普通に攻略しろと言ってやりたいな」

「じゃあモンスターの線で動こう」

「どっちからやる。もうダンジョンボスは目の前だが」


 男は壁画が描かれた大扉を指さす。

 遺跡の最奥。この先にダンジョンのボスが居る。


「ボスを倒せばゲートを閉じれる。先にこっち」

「了解、リーダー」


 男の静かな了承を聞く前に歩き出していた女剣士は、既に大扉に触れていた。 

 扉に描かれた壁画は、あまり見ていて気持ちのいいものではない。

 大勢の人々が大きな器に生け贄を集め、何か儀式をしているような絵だ。

 壁画に大きく描かれているのは、歪むように曲がりくねったツノを持つ山羊(ヤギ)の頭。

 生け贄の器を前にして笑っているような表情をしていると、扉に触れた女剣士は僅かながらそんな感想と、嫌悪感を抱いた。


 早く終わらせよう。

 と、いつもの調子で納刀したままの剣の柄を握り込む。


「――――攻略開始」


 その合図で、鎧の男が先行する。

 内部は一言で言えば玉座がある謁見の間。

 古い遺跡だが、豪華な造りだ。

 かなり広く、学校の体育館の倍以上はある。

 そして、我こそが王だと玉座に腰を下ろしていた黒山羊頭の巨人は、アポなし謁見してきた不届き者の二人を睥睨する。


「グォォゥン」

「悪魔か。じゃあいつも通り、時間稼ぎよろしくね」

「了解」


 短く息を吐くように言うと、腰の手斧を取り、悪魔の黒山羊に真っ直ぐ突っ込んでいく。

 馬鹿正直な突撃に、黒山羊は悪魔らしく嘲笑いながら四本腕を展開し、それぞれの手に魔法の弾を作り出した。

 直後、黒い魔弾が不規則な軌道を描く。

 予備モーションなし。

 黒い魔弾は男の元へ無情に降り注いだ。

 一発、二発、三発、四発。

 全て着弾し、砂塵が舞う。


「グオオ! ブオオォ!」

「また笑ってる。気持ち悪い笑い方……」


 魔法攻撃に巻き込まれた男を嘲笑する黒山羊に、女剣士はその顔を睨みながら指先に電気を走らせる。


「同感だ」


 と、砂塵を突き破る鋼色。

 手斧の刃が少し焼けていた。

 あの不規則な軌道を描いていた黒山羊の魔弾を、手斧一本で全て弾いたのだ。

 砂塵に紛れて接近した男は、意表を突かれて反応が遅れた黒山羊の足を叩き斬る。


「ハァッ!!」


 手斧が素足に突き刺さり、舞う青い血飛沫。

 鋼のフルプレートアーマーにもベッタリと付着する。


「――――ッ!?」


 思いがけない痛みに黒山羊は片膝を着き、額には脂汗が滲んでいた。


「ありがとう、先輩。下がって」


 女剣士に言われるまでもなく、鎧の男は後退。

 黒山羊が訝しげに睨んでいるが、その顔ももう見納めだ。

 納刀していた長剣は、()()()()()なのだから。


「【青電流(ブルーカレント)】」


 抜剣。直後に、黒山羊は腹部に鋭い痛みを感じた。

 見れば、いつの間にか女剣士が自分の腹に剣を突き刺しているではないか。

 溜まった電気エネルギーが剣を通して全身に流れ込む。

 青い稲妻は黒山羊の血を沸騰させ、肉を焼き、皮膚を焦がす。


 誰がどう見てもクリティカルヒット。

 かつ、致命の一撃だ。

 女剣士自身も、これだけの電撃を浴びせれば大抵のモンスターは一撃で倒せると自負していた。

 なので、「逃げろ」の三文字に一瞬反応が遅れたのだ。


「きゃっ……!?」


 仕留めたと思っていた黒山羊が、女剣士を掴み上げた。

 このまま握り潰すつもりなのか、ギリギリと握力を強めている。


「うぐ……」

「いま助け――クソッ、また魔法か!!」


 黒山羊は助けに入ろうとした鎧の男へ、残った三本腕で魔弾を生成して放つ。

 邪魔されないよう、絶え間なく。


「う……ぐぁぁアッ!」

「ブォォォルル!!」


 女剣士のうめき声に悦び、嗤う。


「くっ、こいつ……傷が再生してる……!」


 元々、雷属性に耐性を持っていたか。

 黒山羊は異様なスピードで肉体を再生した。


(油断、したかなぁ…………)


 骨の悲鳴が聞こえてくる中、女剣士は再び充電をしながら後悔する。

 もう一度電撃を放つには、充電に数秒時間を使う。

 だが、待ってる間に死ぬ。

 死ねばアイテムは全ロスだ。

 ゲート前で復活するとは言え、武器も防具もなしでは再突入してもゲート付近に居るという別のモンスターに殺される。

 だが、充電し続けろ、と女剣士は自身を鼓舞する。


(先輩はまだ戦える。せめて先輩が戦いやすいよう、死ぬ直前に放電して――)


 そこまで考えて、久方ぶりの死を覚悟した。

 そして――――赤い光を見た。


赤靂(せきれき)魔法――――フルモバート!」


 凛とした少女の声の後、落雷の轟音が遺跡に響き渡る。

 紅蓮の稲妻が瞬き、目が眩んだ女剣士と鎧の男。


「なっ……」

「うそ……」


 目を開けて、二人揃って絶句。

 それもそのはず。

 あの憎たらしい黒山羊の顔が、綺麗さっぱり消し飛んでいたのだから。


「アレはまあ見たまんま、黒魔術が得意な悪魔だな。壁画にあった通り捧げられた贄がある限り再生し続けるようだが、さすがに頭を潰せば得意の魔術も使えんだろ」


 と、少女の声にしてはやや古風な物言いで、黒いマントに身を包む銀髪の少女はライブドローンに向かって解説する。

 そんな少女に倒された黒山羊頭の悪魔巨人は塵のように消えていき、握り締められていた女剣士はその手から逃れた。

 唖然とし、銀髪の少女を見つめている。


「さて、ごきげんようお嬢さん。余がもう少し早く来れたら怪我もせずに済んだんだがな……」

「あ、あなた……何者……ですか?」

「余はルルト。配信歴は、ざっと小一時間だ!」


 そうしてルルトは、むふん、と自慢げにライブドローンを見せるのだった。



 ■■■



「ハァッ、ハァッ……こ、こんなに走ったのは、久しぶりだな……っ」


 額に汗を浮かべながら、肩を上下させて肺に空気を取り込む辰樹。

 遺跡にはモンスターが蔓延っているが、【記録閲覧(ログチェック)】でモンスターの足取りも注視しつつ、入り組んだ大遺跡ダンジョンを最短距離で進む。


「面倒なことに、なってないといいけど……っ」


 その心配は残念ながら的中していた。

 ルルトの魔法で頭を撃ち抜かれ、塵と化していく黒山羊――その失われゆく体内から覗く()()()()()が、ルルトや女剣士達を睨んでいた。


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