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Far sorridere te

この話しはカナタとか一切関係ない話ですが、物語においては重要な話しになっています。

申し訳ありません。

「あの子の世界を土足で踏み荒らすのは貴女かしら?」

 


玲香はその問いかけに応えられずにいた。

そもそも応えられる余裕ががない。

 

ーーこの幼い少女は誰だ? 確かに似てはいる。灰色の髪、赤い瞳、顔の造形。酷似していると言って良い。


しかし、この少女がカナタではないと断言できる。そもそもこんなに幼くないし、こんなふうにここで喋ることなんて出来ないはずなのだ。ならば誰だ? ぐるぐると思考が繰り返す。

 

 

「ごめんなさい。貴女を怖がらせるつもりはなかったの……。この子に対する敵意はないみたいだし、ちょっとだけ気になったからお話したかっただけなの」

 

「私こそごめんなさい。踏み荒らすなんて、誰かがこの世界にいるなんて思いもしなかったの…。ただ、この子のことを理解したかっただけなのよ…。本当にごめんなさい」

 

 

わかりやすく、肩を落としてシュンとしながらもその小さい手が玲香の手に触れた時、その暖かさで初めて口を開くことができた。

それは、拙い言い訳と謝罪であった。

 

 

「そう、なのね。でも……ふふ…….理解したいって?……ふふ。ふは、だ、駄目、ぶふぁ! 我慢できな…あはははははははは!!! 嘘ばっかり! 貴女がこの子を!? ふは! あ、貴女ばかね! 私がここにいる時点で、察しなさいよ! ぶふふぅ!! 全部筒抜けなのよ! で、でも! 面白いから許したげるわ! 」

 

 

堪え切れずに、両手で口を塞ぎながら吹き出して笑う少女を尻目に玲香は青ざめ震えていた。

 

ーーえ? どういうこと? 私の記憶読まれてて、泳がされていたの? なら、なんで私は無事なの?

 

 

「ふふふ、ごめんなさいね? 誰かと話すなんて凄く久しぶりなの! 大丈夫よ! 私奴らみたいに下品じゃないし、野蛮じゃないもの! 取って食おうなんて思わないから!」

 

「……は、はい。あ、あの……失礼なのですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 


玲香はおずおずととしながらその少女に問いかける。 


「まずは貴女が先に名乗りなさい。……本当に失礼な子ね」

 

「ももも申し訳ありません! 本名は市道玲香です! 年齢は23歳で、趣味は手芸をすることです! 特技は13秒で寝れることです!」

 

 

先程までとは一変して、ため息を吐きながら睨む少女に、戦慄しながら早口で答える。

 

 

「ふぅん……? 名乗れとは言ったけれど、自己紹介しろとは言っていないわ。けれど……手芸が趣味ねぇ…? ……まあ良いわ、しょうがなく名乗ってあげる。私の名前はノルン・A・スペランツァあの子の守護霊みたいなものよ」

 

ーー元悪魔のね、そう冗談半分に不気味な笑みを幼い少女は浮かべた。

 

 

「まぁ、それはそうと、此処に土足で踏み込んだのは普通に気に障るからちょっと仕返しね?」  

 

 

ノルン・A・スペランツァと名乗った少女は微笑みながら握る手の力を強める。逃すつもりはない、そういうことなのだろう。

 

 

「さて、暇つぶしにはなるでしょう…フィルム・デル・オルロレ《悪夢》」



目の前の少女が手をかざした瞬間、紫色の見覚えのない魔法陣が頭上に出現した。



「なっ!? ありえない! この世界で魔法なんて使えるはずないっ!この世界は私のーー」

 



唐突にこの空間が変異していく。巨大なスクリーンに観客席。そして薄暗くなる。

ーーここは映画館?



「嫌ぁぁあぁあ!! 誰か! 誰か助けて!! 娘が! 娘が血を流しているのっ!!アリア!アリア! 大丈夫だからね!」

 

 

疑問を遮る程の悲鳴。

スクリーンを見ると、下半身が切断され、欠損している少女を抱きしめる女性。

そして、映像内の周辺一面が猛火に包まれていた。

街の全てを這うように燃やし尽くし、人を焦がし黒煙が空を覆う。

 

 

「案ずるな、貴様も次期に娘の所に逝ける」

 

 

女性の背後にそいつはいた。

瞬間、女性の首がごとりと地面に転がり落ち、吹き出す鮮血が大地に降り注ぐ。


その右手には金の薔薇の装飾と逆十字のエンブレムが刻まれた長剣を携えていた。

 

 

「……同種で殺し合い、妬み、裏切り、そして嘲笑い蔑みあう……貴様らの罪は私達と酷似しているのにも拘らずその醜悪さ、存在そのものだ。だからこそ貴様達は付け込まれ、入り込まれるのだ。まったくもって愚かな種族だ」

 

 

長剣を腰の鞘に納め、死体に人差し指を向けると猛火に包まれ、数秒後には灰となり、空に舞う。

 

ーー灰色の腰まで長い髪をうなじ付近で結んでいる髪型。

赤い瞳、鋭いつり目、目元の黒子。そして、黒く、灰色の装飾が施された軍服。

 

間違いなくこいつは私を殺した相手で、これは前世の記憶だ。こことは異なる世界の負の遺産だ。

覚えている、忘れるはずがない。忘れてなるものか。


私がこいつらを憎む理由。突如現れ、私の住む世界を破壊し尽くして戦った私も致命傷を受けて死んだ。

 

 

「人間風情が良くぞここまで技を練り上げだものだ。が、終わりだ。潔く死ね」

 

 

物語をスキップするかの様に場面が変わり、玲香の前世らしき人物にその凶刃を振り下ろす寸前であった。

 

 

「まだ、まだ死ねない! お前みたいな悪魔に殺されたりしない! 私はー」

 

 

この空間に微かに、風が吹いた。頬を撫で目を見開く。

長剣を握るその腕が消失し、赤黒い血を撒き散らした。

 

 

「……昔から狂人奇人かと思ってはいたが、よもや人間の女に拐かれたかッ! ◼️◼️◼️!」


「……◼️◼️◼️」


「◼️◼️◼️、◼️◼️◼️◼️。◼️◼️◼️▪︎◼️◼️。◼️◼️◼️◼️◼️」

 

 

常に能面の様に無表情だった女の顔が初めて怒りで顔を歪め、叫ぶ。


彼が来てくれて、守ってくれているのに、姿が、声が、名前が、ノイズが走り、黒い亀裂で分からない。

 

心が苦しくて苦しくて堪らない。見たいのに彼を見ていたいのに見たくない

 

 

玲香は涙が溢れ視界がぼやけるがその雫を拭うことができず、ただただ傍観することしか出来なかった。

 

 

「……まぁ、良い。私の仕事は終わった。そこの人間の雌は余命幾ばくもない。僅かな時間共に過ごせば良い。……私はいつ迄も待っているぞ」

 

切り落とされたはずの腕が瞬時に再生し踵を返した後、姿を消した。 

その後、世界は黒に染まっていく。

 

 

「多分もう無理、うん、治らない。感覚殆どないし! でも、きっとまた逢えるから大丈夫だよ!」

 

「ーーーー」

 

「ごめ、ね。悔しいから、こんどこそ結婚しようね」

 

「ーーー」

 

「私はー最後まで、笑顔だよ◼️◼️◼️。バイバイ!」

 

 

彼の胸の中で笑顔で生き絶えた。

同時に世界がブラックアウトする。

 

 

「まあ、多少暇を潰せたわ。それとごめんなさいね」

 

朦朧として意識が途絶えかけているその最中、確かにノルンの悲しそうに涙を浮かべている姿が瞳に写った。


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