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2.婚約者との再会

 エレナは灰色の門の前で馬車を降りた。奥には白い校舎が見える。建物の上には金細工の風見鶏が朝陽を受けて光っていた。


 ここは、貴族子女が通う王立学院。ディロン王国の最高学府ではあるが、貴族であれば誰でも入学できる。アーチ状の正門には王家の紋章がきらめく。槍を持った二人の衛兵の間を通って、敷地に入る。


「エレナ様、おはようございます」


 後ろから声がした。鮮やかな色のドレス、微かにジャスミンの香りがする。子爵令嬢のルーシーだ。ジョンに婚約破棄され、ベネット伯爵家が落ちぶれていくと、エレナと距離を置いた。外面はいいけれど、信用ならない。


「ルーシー様、おはようございます。今日も素敵なお召し物ですわね」


 人間性はともかく、ルーシーは情報が早い。友人としての関係性は、維持しておいたほうがいいだろう。


「今日のエレナ様は、シンプルなお召し物ですね。心境の変化でも?」

「ええ、まあ」


 15歳のエレナはジョンに夢中だった。王立学院を卒業したらジョンと結婚する。それ以外は何も考えていなかった。真剣に学業に打ちこむべきだった。そうすれば、ベネット伯爵家の没落を防げたかもしれない。


 ジョンの気を引くために、派手なドレスを着て、濃いメイクをした。でも、効果がなかった。どうせ婚約破棄されるのだから、無理する必要はない。だから、自然な服装、自然なメイクにかえた。


「舞踏会まであと一月ですわね。エレナ様はジョン様と参加されるのでしょう?」


 エレナは口元に手を当てて黙り込む。思い出した。ジョンに婚約破棄されるのが舞踏会。エレナが会場の入口で待っていたら、ジョンはカーラと現れた。そして、「カーラと婚約することになった。君との婚約は解消する」と一方的に告げられた。


 前世ではジョンの気を引こうと必死だった。同じ過ちをするわけにいかないし、今さらジョンと結婚したいとは思わない。


「どうでしょうね。それに、婚約は親同士が決めたことなので、ジョン様と舞踏会に参加するかはわかりません」


 エレナの返答が予想外だったのか、ルーシーは愛想笑いを浮かべた。


「そういえば、ルーシー様はファリオ王国に行かれたことはありますか?」

「ファリオ王国ですか? 父は何度か行ったことがあるようですが、私はありません。何か知りたいことでもあるのですか?」

「いえ……そういうわけでは」


 感謝祭で会った男の子の情報をどこから入手すればいいのか。エレナがぼんやりと前を見ていたら「そうだ」とルーシーが手を叩いた。


「1学年下にスミス子爵令嬢がいるのはご存知ですか?」

「ええ。お会いしたことはありませんが」

「スミス子爵家はファリオ王国の情報に詳しいはずです。エレナ様がお会いしたいなら、いつでも紹介します」

「ありがとうございます」


 スミス子爵家は国内外の諜報活動をしている。うまくいけば、男の子に辿り着けるかもしれない。


 廊下を歩いていると、「あの女性は誰?」「ベネット嬢ではないですか」「あんなに清楚な女性だったとは」と男子生徒の声が聞こえた。服装とメイクをかえただけなのに。笑顔が自然にこぼれた。


 カフェテリアに入ったら、カーラと談笑するジョンが見えた。二人と離れた席に座ろうとしたら、ジョンはエレナに手招きした。


「遅かったじゃないか。待ちくたびれた」


 エレナは耳を疑う。ジョンと王立学院ないで約束したことはない。


「約束などしておりませんが」

「俺たちはもう行くから、支払いをしておけ」

「あなたたちの支払いですか?」

「口答えするな」


 ジョンは見下すような目つきで吐き捨てた。エレナに伝票を渡すと、ジョンはカーラとカフェテリアを出ていった。


 二人を視線で追いながら、拳を握りしめる。思い返せば、ジョンは軽薄な男だった。前世ではそれに気付かなかった。


 たくましい体つき、爽やかな笑顔、ジョンの周りにはいつも女子生徒がいた。婚約者のエレナには見向きもせず、公爵令嬢のカーラを口説くのに必死だった。

 なんて器の小さい人間なのだろう。ジョンとの婚約を解消して、二度目の人生をやり直す。エレナは心に誓った。


 舞踏会まであと1カ月。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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